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【詩】はじまりのまじない

ぬるくなってゆく夕日を見上げて
わたしはひとりで溶けてゆくことを決めた

今朝、割った、卵、
その、殻、から、酸、
煙、肌、奥、一人称、
穢れ、精錬、魔、
女、声

夕日は
凧上げの様相を
眺める為に生きていた

今朝までは、
人の形をしていた、
固体、気体、液体

幾つかの言葉は、
つまらない呪文、
聞こえるだけ、
嘘だらけ、
呵呵大笑、

太陽を操りたかった、
瀕死の人類の創る、
計算式、

窓、灯、燭台、
金貨、
十字キー、
尊厳、低俗、
理解、無為、風、
両手、徒花、群、

夢を生きて、夢を見て、
日は昇る、日は沈む、
その、メカニズム、
それは、願い、
祈り、信仰、

ぬるま湯の中、
夕日はのぼせている
わたしは、
言葉を濁しながら
わたしは、
眼前を誤魔化しながら
最終列車、
最終停車、
始発の来ない日
床に落ちた、
卵の黄身を、
潰している、

何も
起こらなかったのならば

わたしが
シャツに手を通すのならば

すべての
計算式がまちがっていたのならば

すべての
呪文から意味が失われていたのならば

【はじまりのまじない】

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