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【詩集】酔いどれて降車

アルコール
いつぞの匂いか
ゆきずりのセンシティブと手を繋ぎ

雨の銀座に溶けてゆく
ひとつひとつの光に名前と意味があった

まざりあってしまったのは、
ノスタルジア、鮮烈な芽生え

振り返れば、キネマ
まばゆく、くらく、スクリーン

【銀座の傘】

ロンドンに降る雨を思いながら
無人駅に佇んでいる
パスポートの無いわたしの旅は
いつも鈍行に揺られている
そしてパリの夜は雨であろうか
遠く遠くをおもうとき、
アスファルトの冷たい鏡から
うつくしき紳士淑女の社交場
音と色彩と知識のサロンへ
雨に映れるのならば、
コウモリをたずさえて

【鏡】

旅にゆく、いつの情緒たるか
思念はここにない、いつもここにない
今日も旅にゆく、汽車にゆられながら
煙のいろをかぞえている
霞む新緑を、秋の心でながめている
思念はここにない、いつもここにない
病弱な神経を療養するように
脈々たる文字の素養を飲みながら
旅にゆく、いつの情緒たるか

【旅情】

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