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【詩集】夜は秋の風に揺れ

No.9

秋の空から降る粒子を
ススキは浴びて育ってゆく
月夜に染まった草木には
月夜の物思いに耽る日々の
邂逅をやわらかく語っていた
たとえば、秋の虫たちの声に
調和する、この蒼天を隠した
秋の夜長、すこしのいたずら心
ススキは語る、いとけない季節であると

【夜は秋の風に揺れ】


No.10

夕陽と同じ匂いのする花々
踏みしめて、
暮れてゆく今日、回想
夜風に消える花に触れる

夕陽と同じ匂いのする花々
踏みしめて、
もう戻らない今日、忘却
夜風がさらう花冠を載せる

【かえるところ】


No.11

四角の、淵が、視えるようになった
いつも、空の端に、白く光っている
僕は淵に、簡単に触れることもできるだろう
輪ゴムのように、指で伸ばすこともできるだろう
あの日から、ずっと、ためらいは、道なりに
情け無いのか、賢明なのか、わからずじまい
今日も、四角の、淵は、白く光っている
きれいな、直線が、秋晴れに、映えている

【秋日角形】


No.12

今年も瞳の中で花火を見送った
思うのだ、どうして、
わたしの指先の光は跳ねないのか
不思議に思えばじりじりと
熱だけを感じて夜はふける
跳ねて、跳ねて、月までゆけたのなら
アポロを追って、健気に跳ねたのなら
いつか兎のように数えられてみたい
一羽の熱望を天へと打ち上げてみて

【火花の兎】


No.13

命のはじまり、静寂のおわり
あの日から、血脈を飛ばす車の
エンジン音に、頭は揺らされ続け
時たまの、大事故で流したガソリン

静かになりたかった
暮らしが、ひたと、くっつくとき
それは、まぎれもない、愛と騒音

どちらかは無く、どちらもであり
はじまりは加速して、制御不能

【ICノスタルジー】


No.14

君の踏む花、一輪
夢に浮かんで、消えて
残り香の朝に、目覚め
何を想うことが一等か
無意味にも思考は巡る
庭に咲く花は
今日も守られている
あの、一輪を捧げてしまった
君に花は必要なかったのに
私には必要だった
花を踏む君が
必要だった

【咲いたものの定め】


No.15

熱源のある場所さえわかっていれば
猛獣の回る密林地帯に散歩に出られる
迷うことを勘定に入れて
傷つくことを予定に入れて
調子外れの歌をうたって
ある時のスコールを受け止めて
想定外の出来事に砕けたとして
失態より多い鼓動を数えて
熱源に手を伸ばして
唸り声を上げて

【フォレスト・シャウト】


No.16

君の踏む花、一輪
夢に浮かんで、消えて
残り香の朝に、目覚め
何を想うことが一等か
無意味にも思考は巡る
庭に咲く花は
今日も守られている
あの、一輪を捧げてしまった
君に花は必要なかったのに
私には必要だった
花を踏む君が
必要だった

【咲いたものの定め】

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