153. 選手が絶対に知っておくべき「ファン目線」とは
皆さんこんにちは!三浦優希です。
今日のnoteでは「ファンの方々が一体どのような思いで選手を応援しているのか」について、選手である僕の解釈で書いていきたいと思います。
スポーツを観戦する方、特定の応援している選手がいる方や、アスリートの方々にも読んで頂き、色々とご意見もいただけたら幸いです。
それでは始めましょう!
よろしくお願いいたします。
ファンの方と試合を見に行った時のこと
さて、そもそもなぜこのようなトピックを書こうと僕は思ったのでしょうか。
それは、実際にファンの方とアイスホッケーの試合を見る機会があったからです。
僕は、FiNANCiEというサービス上でトークン(電子上の応援の証)を発行しています。トークンホルダーの方々へのリターンの一つとして、「オフシーズンの日本帰国中、アイスホッケーのプロチームに試合に同行し、真横で僕がプレイの解説をする」というイベントを行いました。
今年の9月、こちらのイベントに応募してくださった方と、実際に1on1で新横浜で行われた試合を見に行ったのですが、これが僕にとっては大発見の嵐でした。
そもそもこれは、普段応援してくださっている方への恩返し企画として実施したものだったのですが、気づいたら僕がたくさんの学びを得る機会となっていました。
そして、そこで僕が教えてもらったことは、応援してもらう立場にいる全てのアスリートが絶対に知っておくべきことだと思ったので、こちらでシェアさせていただきます。
ちなみに、このイベントで僕が一緒にアイスホッケーを見に行った方は、
・アイスホッケーの試合は過去にもよく見たことがある
・推し選手がいるわけではなく、あるチームの全体を応援している(いわゆる箱推し)
といったスタンスでした。
あくまで「一人のファンの思い」ではありますが、似たような思いを持つファンの方やサポーターの方々は他にも多くいると思います。少しでも参考になれば幸いです。
①とにかく怪我しないでくれ!!
まず第一に僕が驚かされたこと。それは、ファンの方は本当に本当に、選手に絶対に怪我をしてほしくないと、心から思っているという事でした。
選手からすると「スポーツに怪我は付き物」だし、打撲や擦り傷、時には捻挫や骨折なども、「正直あんまり大したことではない」と考える人が多いのではないかと思います。
ただ、これが応援している人の目線からはどうなるか。
そう、一大事です。
もし仮にそれが軽いけがであったとしても、応援している本人が体を痛めている姿、担架で運ばれる姿、練習や試合に出れていない姿に、本人以上に心にダメージを受けている人がいてもおかしくありません。
イメージとしては、自分の大切な子どもや孫、恋人が同じけがをしたと想像するのが良いでしょうか。いてもたってもいられなくなるような焦りを、ファンの方々は感じていることが多い、ということです。
僕自身も、怪我をして試合に出ない経験はこれまで何度もしたことがありますが、そのたびに多くのファンの方々から「早く良くなることを祈っているよ」と言って頂きました。
僕が去年内臓の怪我をしたとき、僕としては「ちょっと痛めちゃったな、長く離脱することになるかもな」くらいにしか考えていませんでした。実際、その後の日常生活は全く問題なく送ることが出来ていました。
ただ、本当に応援してくれている人からしたら心配で心配でたまらない時間だったかもしれないことを、もっと想像するべきだったと思います。
だからこそ、選手側は、怪我をしてしまった後のファンの方々への説明・対応はチームのコンプライアンスが許される範囲で行うと良いと思いました。
怪我の詳細や復帰時期は伝えなくとも、「僕は元気です。僕は大丈夫です。」といったメッセージをSNS上で発信するだけでも、安心する方々は多くいるのではないでしょうか。
そして、それ以降、「怪我してもいいや」と簡単に思うことを僕はやめるようになりました。
これまでは本当に、「痛い思いをしてでも試合に出る」とか「怪我してでも目の前で結果を出す」というマインドでいることが多かったのですが(それくらいの覚悟が必要になるときはもちろんありますが)、最近は、自分が怪我をすることで自分以上に悲しい思いをする人たちがいることに気付き、出来る限りそのリスクを減らさなければならないと常に考えています。
また、選手が痛い思いをすることに悲しむというだけではなく、単純に「その選手のプレイを見ることが出来なくなる=試合を見に行くモチベーションが減る」というエンタメとしてのスポーツの要因も大きいと思います。
こちらに関しては、怪我ではなく、反則による退場なども同じです。サッカーにおけるレッドカードのように、アイスホッケーでも一発退場のペナルティが存在します。そこまでいかないまでも、10分間、5分間の退場などもあり、その時間、選手はペナルティボックスと呼ばれる牢屋のような場所に入っていなければいけません。
その選手のプレイが楽しみで試合を見に来ている人にとっては、選手が試合に出れていない状況ではワクワク度はぐっと半減します。
良い選手の一つの定義として「怪我や反則での離脱がなく、出来る限りピッチに立ち続ける」というのはあるかもしれないですね。
②もっと顔見せてくれ!!
続いて僕が面白いと思ったこと。
それは、「ファンの方はいつでも選手の顔を見ていたい」という事でした。
これも当たり前と言えば当たり前なのですが、アイスホッケーに関して言うと、試合中は基本的にヘルメットをかぶっているからこそ、表情がわかりづらいです。アメフトやフェンシングなども、同じことが言えるでしょう。
だからこそ、出来る範囲で顔をなるべくファンの方々に見せる機会を作り出すことが大切だと感じました。
例えばの話ですが、私たちが見に行ったチームでは、試合終わりに選手全員がリンク中央に集まってヒーローインタビューのようなものを行う文化があるのですが、この時選手たちは円を作り、内側を向いて立っています。
この試合終わりの挨拶の時こそ、ファンの方々が選手の顔をしっかり見れる絶好のチャンスだからこそ、選手に外側向き(観客席向き)になってほしい、ということを一緒に見に行った方は言っていました。
これには僕も、「確かに!」と大きく頷いてしまいました。
選手からすると、そんなところに意識を向けることなんてないかもしれません。でも、せっかく試合を見に来てくれていて、かつファンの方々との貴重な交流の機会であるからこそ、「顔をファンの方々にたくさん向ける」という単純なしぐさを積極的に行う必要は多くあると感じました。
よくよく考えてみれば、僕もB'zのライブに行ったときに、もし稲葉さんや松本さんがずっと背中を向けていたら満足度が120%くらいになってしまうかと思います。(ライブに行けているだけで満足度はすでに120%なのである)
B'zのお二人は会場を動き回り、360度すべてのファンの方向に対してパフォーマンスをしてくれます。会場内カメラ、1階席、2階席、時には音漏れを聞きに来ている会場外のファンにまでサービスを行います。これによりファン(というか僕)の満足度が150%...200%...300%...!!!!!と上がっていきます。
まあ僕が初めてライブジムに参戦させてもらったのがPleasure 2018 HINOTORI だったわけですけど前日からすでに興奮しまくっててなかなか寝付けない状態で向かった日産スタジアムでいったいどんな形でライブが始まるのかと思ったら会場が暗転してそのあとには鳥の形のバカでかいモニュメントがかっこよく光ったと思ったら突然曲が始まってその時点で会場のボルテージはもう一瞬でマックスに到達してしかもその曲がultra soulでウソだろ一曲目からこれやっちゃうのまじかよありえねえだろって心臓バクバクしてたらステージ下から稲葉さんと松本さんがゆっくり登場してその瞬間にはもう僕も僕の横にいた友達も感情が抑えられなくなって普段そんなことしないのにバチンと腕組んで叫んで・・・
ってあれ、何の話してたっけ?
えー…まあということで、選手はもっとファンの方に顔を見せましょう。
あと、B'zを聴きましょう。
③試合中何話してるのか教えてくれ!!
続いてはこちら!ズバリ、「選手たちの会話が知りたい!」というものです。
こちらに関しては、確かに知りたい人は多いだろうなあと僕も感じます。
試合中、選手はよく会話をします。プレイ中の支持の声はもちろん、プレイの合間の会話や、ベンチに戻ってからのトークなど、気になる方は結構多いのではないでしょうか。
また、監督と選手がどのような会話をしているのかを知りたい。という声も聞きました。
実際に選手が試合中に話している内容としては、
・プレイ中の指示の声
“That’s you! “ (そいつはお前が見ろ!)
“I got him! “ (こいつは俺が見る!)
“You got time! (時間あるよ!落ち着いて!)
“Chip! Chip!” (ボード当ててパスくれ!)
“Heads up!” (敵が目の前にいる!前方注意!)
とか、
・プレイの合間の相談
「次のフェイスオフどうする?」
「あのフォーメーション(具体的な作戦名あり)で行こう」
「さっきシュート打ったけど、君にパス出せたかな?」
「そうだね、でもシュートで全然オッケー」
「ナイスバックチェック!」(自陣からダッシュで戻り守りに貢献すること)
「ハードにプレイするぞ!レッツゴー!」
といった感じです。
もちろんこれは本当にごくごく一部のものなのですが、基本的には試合中はプレイに関係することがメインの会話になります。
中には、自分自身、時にはチームメイトに対して、フラストレーションを思い切り爆発させる選手もいたりします。その時は、いわゆるFワードが飛び交ったりします。(まあ普段から飛び交いまくってるけど)
言い方はもちろん大事になりますが、しっかりと自分の意見を伝えること、そして相手の意見をしっかりと聞くことが次のプレイパフォーマンス向上のためには必須です。
先程のプレイで相手にどうして欲しかったのか、自分はどのようなプレイをしたかったのかを再確認した上で次のシフトに臨みます。
僕のこれまでの経験では、試合中は基本的には選手同士でポジティブな言葉が出てくることが多いです。お互いに励まし合うし、良いプレイを褒め合います。
ただ、負けている時やチームが良いプレイをできていない時は、監督、キャプテン、リーダーシップのある選手などが「目を覚ませ!」と喝を入れます。
ついでにおまけ話もしておきます。僕らのプレイするリーグでは、たいていジャンボトロン(巨大スクリーン)がリンクにあり、プレイの合間にはリプレイやお客さんを楽しませる映像が流れます。
有名なものでいうとkiss cam (映った二人がキスをする)とか、flex time (筋肉自慢タイム)、また最近では、有名な俳優やアニメキャラに似た人を観客席の中から映すなど、いろんなエンタメがあります。
選手は、ベンチに座りながらこの映像を見ていることが多いです。それに対してのリアクションの会話などをすることもあります。
そういう意味では、このような試合の合間のタイムアウトでは比較的リラックスしているといっても過言ではないと思います。
さて、少し余談が続いてしまいましたが、このような試合中の選手同士の会話をお客さんに楽しんでいただくには一体どのようにすれば良いでしょうか。
最近よくあるのは、Mic’d up といって、選手や監督、審判に小型マイクをつけ、試合中の音声を全て保存し、後ほど映像と合わせコンテンツとして出すというものです。
参考映像はこちら。
これはとっても面白いですよね!
アイスホッケーの場合は、防具を着ているからこそマイクをつけても問題ないのでしょうか。個人的には、サッカーやラグビー、野球などのMic’d up をたくさん見てみたいなぁと思います!(既にありそうだけど)
そのほかで言うと、リアルタイムでの会話は会場にいる人にしか聞いてもらえない(しかも一部だけ)ので、例えば試合終わりにVoicyなどの音声配信ツールなどを使って、「あの時こんな会話してました」みたいなものを選手同士で話したり、チームがそれを試合中の映像と組み合わせてコンテンツとして出す、なんかもありだなぁと思います。(休憩中のVoicy、もうすぐ復活します。笑)
また、「リアルな会話」とは別になりますが、選手へのインタビュー企画を積極的に行って、
・初ゴールはどんなものだった?
・チームの中で一番○○なのは誰?
などを答えてもらっているところを映像として出す、というのも面白いと思います。
これもNHLのメディアは積極的に行っていますね。チームの枠を超えて様々な選手に聞くことで、ファンの方々が喜ぶ内容を提供しています。
正直なことを言うと、どんなプロ選手であれ(というかどんなアスリートであれ)、普通の人間なので、ロッカールームでは結構しょうもない話をしていることが多いです。
どんな国でもどんなチームでも、本当に、みなさんが思っている数倍はしょうもない会話をしていることが多いのではと思います。笑
期待しすぎは注意です!
最後に
さて、気づいたらここまで長くおしゃべりしてきてしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
僕自身、「ファンの方と試合を見る」という経験を初めてしたことで、本当に多くの再発見をすることができました。
そして、「ファンの人が知りたいこと=アスリート側が実現してあげるべきこと」だと僕は考えています。それが新たな喜びを生み、ファンの方々のチームや選手に対するロイヤルティが高まるはずです。
今回教えてもらったこと以外にも、「スポーツを見る人たち」が「スポーツをする人たち」に対して抱いている思いなどはたくさんあると思います。
そしておそらくですが、大半の選手はそれを知りたがっているはずです。少なくとも僕はそうです。
試合に来てもらったり、応援してもらう以上、出来るだけたくさんの心を動かされる瞬間を作りたいし、満足した気持ちでお家に帰ってもらいたいです。それが僕らの仕事です。
きっと全てを叶えることは難しいとは思うし、ある程度の線引きは必要になるかとは思いますが、ファンの方々が普段思っていることは積極的に発信していただきたいし、選手側はそれをしっかりと受信するアンテナを張るべきだと、改めて感じました。
僕自身、ファンの方々とコミュニケーションを取ることはとっても大好きだし、やっぱり話しかけてもらえることは嬉しいです。
だからこそ、僕もオンアイスオフアイス限らず、その方々に対して感謝を表し、できる限りのサービスをさせていただくことを心がけています。
試合は、みんなで作り上げるものです。
スポーツはみんなで楽しむものです。
ほんのちょっとの、本当にささいな工夫や思いやりが、周りの誰かをハッピーにできます。
そして本当に幸運なことに、選手にはそんなチャンスが至る所にあります。
ファン目線に立つことのイメージがあまり湧かないときは、自分の憧れの人(ミュージシャンでもタレントでもアスリートでも)に会えた時のことを想像すると良いかもしれません。
今回のイベントを通して「プロ選手とはなにか」を再考するきっかけを与えてもらいました。
少しでも、この話がどなたかの参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
三浦優希
過去に書いた「応援」についての記事はこちら!もし良ければこちらも読んでみてくださいね。