150. アイスホッケー選手が何よりも先にスケーティングを学ぶべき理由
みなさんこんにちは。三浦優希です!
ていうか…お久しぶりです!笑 元気にしてた?
いやー、なぜかわからないのですが、noteを書こうとする時だけ急にインターネットが止められてしまうようで…おっ、ちなみに今日はなんだかネットの調子が良さそうです。
という冗談はさておき。どうやら僕の頭の中の辞書には「続ける: 期間がどれだけ空いたとしても、何事もなかったかのようにしれっと再開すること」とあるようです。
これからもマイペースにnote続けていきますね。
さて今回のテーマは、「アイスホッケー選手が何よりも先にスケーティングを学ぶべき理由」です。
一見アイスホッケーに限った内容に聞こえるかもしれませんが、この話はアイスホッケーやスポーツ以外にも色々と転用できる部分が多いのではと思います。ぜひ、最後まで読んで頂けたら幸いです。
それではよろしくお願いします。
スケーティングは、早く滑るためではなく「周りを見えるようにするため」のもの
結論からお話します。アイスホッケー選手が何よりも先にスケーティングを学ぶべき理由は、「周りを見えるようにするため」です。
一体これはどういうことでしょうか。順番に解説していきます。
実はここ数日間、僕は盛岡にいました。毎年行われているアイスホッケーキャンプに参加するためです。
こちらは、6.7年前に始まったもので、主に海外でプレイする若手選手たちが、オフシーズンに氷上に乗る機会を確保したり、海外挑戦をしている他の選手たちとの繋がりを持つことなどを目的として行われているものです。
毎年15-20名ほどが参加し、すでに海外に出ている者、これから海外に行く者、海外で過去にプレイしていた者、国内で単純に上達を目指す者など、参加者の年代やバックグラウンドは多岐にわたります。
さて、こちらの盛岡キャンプですが、大きな特徴が一つあります。
それは「キャンプ中はゴールとパックをほぼ使わない、スケーティングオンリーな合宿」であることです。
これ冷静に凄くない?簡単なイメージとしては、サッカーの合宿でずっとボールとゴールを全く使わないようなものです。
僕らの合宿は毎年1週間ほどで、基本的には1日2回の氷上練習があるのですが、パックやゴールを選手たちが使用することは、ほとんどありません。
今年も、使用回数は0回でした。
そうです。
このキャンプは、スケーティング力向上に特化したプログラムだということです。
このスケーティングキャンプで、コーチとして指導してくださるのが、青森県八戸市出身の金入清孝(かねいり きよたか)さんという方です。
この方は御年81歳でありながら、氷上に一緒に乗って僕らのスケーティングを見てくれています。
過去にも何度かソーシャルメディア上で話したことがありますが、僕のスケーティングを小学生の頃から見てくださっている方であり、もっというと、僕の父も子どもの頃に金入さんにスケーティングを教わっていました。
僕のアイスホッケー人生において、スケーティング分野で師匠と呼べる方は2人いるのですが、そのうちの1人がこの金入さんです。(もうお一方はフィギュアスケートコーチの道上留美子先生)
僕が、今世界で戦うことができているのも、スケーティングを自分の武器にできているのも、この方々からの教えがあったからです。
では、この盛岡キャンプでは具体的にどのようなスケーティング練習を行なっているのでしょうか。
「姿勢」がよくなることで得られるもの
金入さんによるスケーティング練習で主に行うことは、
・スネーキング(両足をつけたまま氷を押して滑る方法)
・クロスオーバー(足をクロスさせて滑る)
・バックスケーティング(後ろ向き)
などです。細かくいえばもっと色々あるのですが、ポイントはこの3点だと僕は思っています。
アイスホッケー選手が「スケーティング」と聞くと、リンク往復ダッシュなどの走り込みをイメージされる方がいるかもしれませんが、僕らがやることは、じっくり氷に乗ったり、氷を押す感覚を覚えたり、ダイナミックに滑ることで推進力を得て楽に滑る方法を覚える練習です。
もちろん、これらの練習を行うことでスケートが速くなったり、足が強くなったりすることはあるのですが、それらはあくまで副産物です。このスケーティング練習の本質はそこではありません。
これらのスケーティング練習を行う最大の理由は、「スケーティング時の姿勢が良くなることで、周りが楽に見えるようになり、アイスホッケーをもっと楽しめるようになる」という点にあります。
これは綺麗事を言っているわけでもなんでもありません。金入さん自身も「みんなにスケートを教えるのは、もっとアイスホッケーを楽にプレイしてもらうため」と何度も言います。
実際、スケーティングキャンプに参加している選手たちは、日が経つにつれてどんどんスケートが速くなると同時に、滑る時の顔の角度が変わったり、上半身の脱力感が増していきます。
一番わかりやすいのは、ミニゲームを行ったときです。僕らはよく、パックの代わりにリングを使った3対3を行うのですが、パスの練習などは一度もしていないのに、スケーティング練習を積んでいくと、一人一人のパスやスペースを見つける動きの精度が格段に上がっていきます。スケーティング以外の練習は全くしていないのに、です。
これは、効率的なスケーティングを行うことで姿勢が良くなることで顔が自然と上がり、みんな楽に周りを見れるようになっているからです。
つまり、下半身の強化のためと思われがちなスケーティングは、上半身(というか全身)、ひいてはアイスホッケーパフォーマンスの全てを向上させる基盤になるということです。
まぁこれは当たり前の話ですが、アイスホッケーは氷の上で行うスポーツなので、自分の思い通りに滑れるかどうかは、アイスホッケーのパフォーマンス発揮を考える上では絶対に避けては通れないものです。
ちなみに金入さんは、練習中に「顔をあげなさい」とは言いません。その代わりに「スティックを氷につけて、大きく動かしなさい」とよく言います。
練習の多くは、パックを持って敵をかわしていったり、パスをもらう時の状況を想定しながら行います。
不思議なもので、スティックの使い方(置く位置や動かし方)を意識するだけで自然とみんな上半身の力が抜けて、姿勢が良くなり、顔が上がります。
アイスホッケーでよくある悩みに、パックを持った時にスピードがガクンと落ちてしまう、といったものがありますが、これは「パックを持って滑る」という行為に対して体が違和感を感じてしまうからだと僕は思います。
これも、「体の前でパックをキープしている状態での楽なスケーティング」を体得できればある程度は解決できると思います。
僕らの場合だと、
①スティックだけでスケーティング
②ブレードがないスティック(棒)を持ってリングを使ってスケーティング
といったように少しずつパックを持っている時の感覚に近づけた練習をしていきます。
最初からパックを持って、どれだけ早く滑れるようになるかを狙うのではなく、「体の前に何かがある状態でも当たり前に滑れる準備」を進めていくことで、自然にできるようになるということです。
また、他のよくある質問に、「プレイ中の視野を広げるにはどうしたら良いですか」というものがあります。こちらの質問、とってもよく聞かれます。
これも、視野を広げるトレーニングを行うとか、首を振る練習などはきっと効果的ですが、それらはあくまで小手先の手段に過ぎないと思います。スケーティングの時の姿勢を正しくすれば、勝手に上半身は脱力するし、その結果、勝手に周りが見えやすくなります。あえて繰り返し言いますが、勝手に、というのがポイントです。
要は、無意識に首を振ることができる体勢を作り上げてしまう、という考え方です。
僕は人からよく「プレイ中周りめっちゃ見えてますね」と言われることがあります。これは僕自身の長所だと感じていますが、人よりも見えている視界の範囲が広いわけではなくて、単純に、スケーティングを心配する必要がないため周りの確認作業が楽に、かつ多くできているからではないかと思っています。
これは特にアイスホッケーを最近始めた初心者の方などにお伝えしたいことですが、アイスホッケーに必要とされるシュート、ハンドリング、パスなどの技術レベルは、スケーティングを鍛えることで勝手に上がっていきます。これは割とマジです。
これは僕の個人的意見になりますが、滑れない状態でシュートやハンドリングを行うよりも、とにかくまずはスムーズに滑れるようになることに一点集中すること(スティックは持ったままが理想)が、上達への近道ではないかと思っています。
目的や本質を理解した上で練習すること
長くなってしまいましたが、最後のまとめに入ります。
今回僕が一番伝えたかったことは、「目的を理解した上で練習する」ことの大切さです。
先程も言ったように、「スケーティング練習をする」「パックは使わないよ」と言うと、退屈に感じたり、やる気を削がれたり、その練習を最初から避ける選手が多くいるのではないかと思います。
ただ、この盛岡キャンプに参加する選手たちは、スケーティング練習をすることが、全てのアイスホッケー技術を上達させることに繋がることを理解しています。
だからこそ、みんな積極的に練習に取り組みます。この意味を選手たちにわかりやすくしっかり伝える金入さんのコーチングは、本当に素晴らしいと思います。
体力をつけるためのダッシュを氷上でやることはよくありますが、普段試合で使うスケーティング技術を見直す機会は実は少ないのではないでしょうか。
もちろん体力をつけることは大切ですが、せっかくなら1試合を通して省エネで効率よく滑る方法を身につけた方がお得ですよね。
最初にも述べましたが、大事なことなので繰り返し書きます。
スケーティングを練習する理由は、周りが見えるようになるため、そして、アイスホッケーを楽しくプレイするためです。
これが最大の目的です。ここを意識すれば、地道な練習の後ろ側にある本来の意味を発見できると思います。
…足はパンパンになるけどね?めっちゃ疲れるけどね?でも、それ以上に得られるものがあると分かれば、きっと頑張れます!
ちなみにこれは、アイスホッケーやスポーツに限った話ではありません。
一見関係ないと思えることでも、実は成長や上達に直結している出来事はよくあるはずです。一番大切なことは、その内容に問わず、「これを学ぶことで得られるものは何か」、「なぜこれを学ぶ必要が自分にはあるのか」、「学んだ先に何があるのか」を常に意識しながら目の前のやるべきことに取り組むことだと思います。
同時に、「今取り組んでいることは本当に自分のこの先のゴールに結びついているのか」と常に現状を疑い、自問自答を繰り返すことが大切だと思います。
今回の記事が、少しでもどなたかの参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
三浦優希
サムネイル写真提供: 飯塚さきさん
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