自分で考える事ができない人間を作ってるのは、管理職だ。
むかし。
ぬるま湯な有料老人ホームでのお話。
ここのマネジメントエピソードは事欠かない。
勿論、悪い意味で。
私が、夜勤も独り立ちして間もない頃。
他職種から転職してきた、Nさんという先輩職員が居た。
Nさんは、私より5つ年下なのだが、この職場の男性職員の中では上から二番目の年齢。
介護経験はこの職場でしかないが、フレンドリーなキャラクターで、兄貴的存在ではあった。
しかし、小狡い所があり、要領良く仕事の手を抜く、雑用はしない宣言をする。すぐに辞めてやると言う。でも辞めない。脅しのつもりなのだろうか。
なかなかの問題職員だ。
しかし、上がきちんと管理をして指導をし、信頼関係を築き、対価を払って役割の一つでも持ってもらえば、恐らくはどの人よりも発信力、行動力ともにいい仕事ができるタイプだろうと感じていた。
そのNさんの夜勤明け。
私が早出で出勤すると、電話口で何やらNさんが吠えている。
横目に気にしながら、仕事をする私。
起床介助もひと通り終わり、Nさんが私の所にやってきて、衝撃の言葉を放つ。
時間は朝の8時。今日は日曜日だ。
「いやー、まいったね。スタッフルームに貼ってある、タクシー会社の番号、使えなくてさ。
〇〇さんのご家族様に、タクシー呼んでって言われて。使えないから、管理者に電話して怒ってやったのよ。」
…はい?
何を言ってるんだろう、この人。
確かに、最新の情報を入れておかない管理者が悪いとは思うが、どんな場面も想定して夜勤は行うもの。だから夜勤手当も払われている。
ただの長時間ご苦労様手当ではない。
自分に依頼が来た仕事は、自分で工夫して処理しなければならない。仮に管理者に怒るとすれば、その後の話である。
何故、少しだけ時間を貰ってロッカーでスマホで調べるなり、番号案内ダイヤルを使うなりしないのか。
管理者に怒って、管理者に調べさせて、管理者に電話させて。
それを真に受けて、対応する管理者も管理者である。
時間だって、倍の倍かかるだけ。
当然、顧客を待たせる事になる。
顧客には、事業所の事情は関係ない。
とにかく、すぐにニーズに応える事。
時間がかかるなら、その説明をした上で一番迅速な方法を選んで動くべきだ。
呆れて物も言えない。
貴方は一体、何をしているの?
管理者も何なの?何でこんな輩に応えるの?
私の口から、その言葉が出そうになったが、管理者が対応した事であり、当時の私は、ただの介護経験が長い新入社員。
泥仕合になるのも目に見えていたので、飲み込むのも嫌だったが、仕方なしに飲み込んだ。
なんて事業所なんだろう。
個人情報の更新はしない、悪用されてる事実を知っていてもほったらかしな管理。
業者の電話番号が使えなくなっていたら、顧客を放っておいて批判する職員。
腐っているの他に言葉が見つからない。
管理者に後日、話を聞くと
何でそんな事でとは思ったが、色々言っても仕方ないのでとりあえず対応した。
後日、指導はしましたが、聞いてないでしょうね。
だ、そうだ…。
何でもかんでも、管理者のせい。
何でもかんでも、自分達が楽なように仕事をしようとする。入居者のニーズを知ろうとも、見ようともしない。文句を言えばいい。
自分には関係ない。というスタンス。
何でこんな理不尽なルールがまかり通るのか。
指導もしない、していても、してる「つもり」になっている。効力がなければ、指導をしていないのと同じである。
これは、組織ではない。
ただの集合体に、役職っぽい名前をつけているだけ。
マネジメントは、きちんと基本ができていて
はじめてどのように肉付けをしていくかを問う事ができる。
骨もボロボロな基礎に、何も付ける事はできない。
言い方が悪いが、小さい事業所によくある、トップダウンで面倒くさい組織の方がマシだ。
そこなりのルール引きができているからだ。
仕事をできる、率先してしようとする人間力を育てる事こそが、マネジメントの真の目的であり、人事のなせる技なのである。
事業所に対して、プラスのものを生み出さない人間を事実上、管理できない、改善できない時点で管理者としては失格である。
たかが管理者、されど管理者。
入居者のために、顧客のために職員一人ひとりが必死に動いてもらう力を生み出すヒントを与えたり、気づかせたりする事が大切だな、と感じ
少しだけ、またいつか管理者を志そうと感じた、数年前の話。