すれ違いって、なかなか戻せない。
むかし、むかし。
私がまだ、20代で訪問介護員をやってた頃の事。
その時の責任者であったHさんは、若いのにも関わらず、かなり経営能力は高いが、基本的に人を駒のように扱う人だった。
この手のタイプの人は、大抵そうなのだが、本人に自覚はない。本人としては、一応労いの言葉をかけたりして、フォローしているつもり。
しかし、実際には隣の隣の田舎町まで移動時間なし、次に事業所近くまで戻る訪問先も移動時間なし、1日8件くらいの訪問で、休憩なんてものは、運転しながらお茶を飲むしかないくらいの感覚。
訪問先には、10分前後遅れたりするかもです、と伝えておき、可能な範囲で急ぐので、自動車事故のリスクも高まるだろう。
私自身はそれこそ過酷な勤務だろうが何だろうが、それはそれとして仕事をしていたが、非常勤職員のAさんは、これを良しとしなかった。
そりゃそうだ、休憩1時間がきっちり時給から引かれているのだから。。。
ましてや、今ほど労働基準法について色々言われていなかった時代。
嫌なら辞めなさい。が、定例だった。
Aさんは、何とかこのおかしい事を正してもらいたい、と、事業所長に何度も何度も話をしていたようだった。
人間ウォッチャーの私は、Aさんが何かを話し合おうとしている事は察しがついてしまっていた。
H責任者は、私にはなるべく休憩を取れるようなシフトを組んだり、休憩時間についてやたらとアピールをしてきていた。
いつしか、H責任者とAさん、それぞれの言い分は直接話し合う訳ではなく、私に愚痴を言うような形で露呈されてきた。
こういうのが、一番ややこしい。
Aさんの主張
私は入社してこの方、昼休憩を一度も取った事がない。業務が終わって、伝票を置きに事務所へ寄り、伝えておきたい事をメモしていたら、頭ごなしに「何時まで残る気?!早く帰りなさい!」と叱られた。意味がわからない。
H責任者の主張
彼女は日報報告をパソコンでする立場でもなく、メモも肝心な事が抜けていて余計な事ばかり。あれで居残られても困る。
休憩くれと言われても、固定された訪問先しか行けず、ようは使いにくい。
…完全に、すれ違っている。
コミュニケーション不足以外の何物でもない。
☆改善点
*事情はともかく、6時間以上の勤務であれば、
休憩は必ず取ってもらわなければならない。
訪問先を増やすが、休憩の枠を作る。訪問先はなるべくランダムにならないようにして、都度本人と相談する。
*どのような内容の報告が必要なのか、都度言い続けていくしかない。Aさんは何故、違う観点の報告をしているのか、何故その報告を優先しているのかを本人に聞くべきである。
これについて、事業所長にそれとなく話をして
2人の立場それぞれに話をしてもらいたい、と伝えた。
あとは、コミュニケーションの問題だろう。
上司だからといって、非常勤職員をどのようにも使える訳では勿論なく、連絡事項の優先順位についての指導も、本人が理解できていないのであれば、これは間違いなく責任者がきちんと指導し続けるしかないのである。
何も、責任者が全て一から十までやる事でもない。優先順位を伝える事くらいであれば、当時常勤の私が伝えたっていいのだ。
H責任者は、少し責任者としての自覚を履き間違えているとまで、Aさんは批判をした。
勿論正論だが、Aさん自身にも改善すべき点が多々ある。
人の事を言うという事は、当たり前だがそれ以上に自分自身が問われるのだ。
そこについて、言われても気がついていないのか
頭に血が上り、見えなくなっているのか。
結局、Aさんは自分ばかり批判をされると、納得いかないと辞めてしまった。
もう少し、ここまですれ違う前に何とかできたら良かったが、平社員の非力な私ができた事はこれが精一杯だった。
人と人は難しい。
でも、お互いの立場を思いやれば
素晴らしいものが作れるはず。
そう感じた、22年前の話。