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E・H・カー「歴史とは何か」を読む

イギリスの思想家/歴史家、E・H・カーの名著「歴史とは何か(1961)」、冒頭で「歴史とは解釈である」と述べている。いくら過去の出来事を集めてもそれだけでは歴史にはならず、また歴史とは、時系列の出来事の羅列でもなければ、英雄や偉人の伝記でも、史料の正確さや正統性でもない。

本書によれば、歴史家そのものが社会の一員であるからには、その時代からは切っても切り離せず、そしてその歴史家が史料に当たる際、主題やテーマや解釈など選択的にならざるを得ず、主観と客観が複雑に交錯していく。むしろその相互の関わりが動的な歴史のプロセスであり、この相互依存性(カーは dialogue = 対話としている)は、歴史家が生きるこの現代と、かつての事実 (歴史的facts) との交感に敷衍されていく。そのダイナミズムこそが進歩であり、未来をつくっていくとある。「歴史とは現在と過去との絶え間のない対話である」とする。

この歴史の動学プロセスについて、カーは最後の結びにガリレオの有名な言葉を記して締めている。

And yet -- it moves.

それでも地球は動いている。

過去は決して変えられぬ固定したものだとわたしたちは思っているが、しかし現在から振り返ると、ダイナミックで流動的なものであり、現在が未来を決定づけていくように、あるいは現在は過去に大きな影響を及ぼすのかもしれない。

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