鬱の娘と、私の歪んだ愛情
私は、死ぬまでずっと応援しようと心に決めていた………………………………
娘が鬱になり、10年以上もひたすら頑張り続けていたバイオリンをやめてしまった……
将来は『バイオリンニスト』と、娘も私も周りの誰もが疑わず生きてきた……
娘は、自分の腕が少しでも上達するために何もかも削ってきた……
友達との時間……
家族との時間……
楽しい時間……
そして、私達はお金もたくさんかけてきた……
障害を持つ娘には人と違った事がひとつでも出来ればいいのではないか、と旦那は考えていたが、
金持ちでもない我が家にとってはかなりの負担になっており、短気な旦那は時おり娘の事を「金喰い虫」と呼んだ……
だけど、結果を出せばお父さんも認めてくれると思い、娘も頑張った……
私も必死に応援した……
娘が良い環境でバイオリンに打ち込めるように、たくさんの事をしてきた……
騒音の苦情を避ける為、マンションから一戸建てに引っ越し、バイオリン講師もレッスン料3倍以上も違う有名な先生に変えた……
毎週休日は短気なお父さんと一緒にいるのを嫌がる下の息子達を放ったらかしにして遠い場所まで娘とレッスンに通った……
コロナ禍の中、娘はウイルスの強迫性障害がひどくなり、外出するのに恐怖を感じ、人前で演奏する度に演奏以外の事が気になって、段々と自分の思うような演奏が出来なくなっていった……
舞台に立てなくなった……
それでもバイオリンを諦めず、SNSの世界でバイオリン演奏を頑張っていた……
そんな娘の姿がとても誇らしくて、眩しくて、彼女を誇りに思っていた…………………………
…………………………………………………………………………………………突然……………………………
娘は、バイオリンをやめてしまった………
娘にとっては、突然思い立ったのではないのかもしれない……良く良く考えての事かも知れない……
今となっては、鬱状態の彼女に、本当の気持ちはどうなのかは分からない……
今一番、自分の下した決断に辛いはず……
なのに、私は、
どうして……?
どうしてバイオリンやめちゃうの………?
あんなに一生懸命やって来たのに……
周りに何と言われようと、バイオリンに命かけてきたのに……
どうして……?
どうして……?
娘が下した決断に、こんな気持ちになる自分が許せなくて、毎晩泣いている……
バイオリンを弾かない娘に「練習しなきゃ!」って注意しそうになる自分がいて、
「将来バイオリンニストの道はもうない!」と断言する娘の言葉が受け入れられなくて………
今の娘の気持ちに寄り添えない、こんな自分が心底嫌……………
どんな娘でも受け入れられると思っていたのに……
どんな娘でも心から愛することが出来ると確信していたのに……
ナニ?この感情…………?
娘=バイオリン
いつの間にか、こんな風になっていて、
バイオリンを弾かない娘を受け入れられないでいる……
何度も何度も、気持ちをチェンジしようと試みた……
そして、今書きながら気付いた事……………
それは、
私が愛していたのは、バイオリンを頑張っている娘で、ありのままの娘を愛してはいなかったのではないだろうか………?
私が将来の夢も希望も持てなかったから、夢を実現して欲しいと、未来を娘に、私の分まで背負わせてしまったのではないだろうか………………………?
重かっただろうな………
か細い身体で……
私の分まで背負わせてしまった……
正直ここまで赤裸々に書くつもりはなかった……だけど、
書いてみて、自分の気持ちに正直になれた……
整理がついたように思う……
私の歪んだ愛情を注がれて、娘は傷ついているに違いない……
人一倍敏感な娘で、母親の心は何でも見透かしてしまう娘……
きっと以前から気付いていたのかもしれない……
娘は「そんな愛情やめて!」と言いたかったのかもしれない……
娘の鬱は私が原因なのではないだろうか……?
こんな私なのに、鬱の娘は私のそばから離れない……
側にいると安心できると言ってくれる……
これから先、娘は長く暗いトンネルが続く……
私も一緒に手を繋いで一歩一歩進もうと思う……
どんな結末かは関係ない、今は必要ない……
今はただ、その歪んだ愛情を与えてしまった罪滅ぼしをしたい…………
どうしたら良いかは分からないが、
長く暗いトンネルを一緒に歩く事……
今はそれしか思い付かない………………………………