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手探りで仕事をしたあとに#53

8月に声をかけていただいた楽曲制作が、今日でとりあえず終わった。

1回目の打ち合わせの時には7分くらいの長さで、ということだったがストーリーを丁寧に描く必要があったため映像と合わせながら完成品は10分になった。ショートフィルムで、まるで短編映画を見ているような出来栄えだ。

ここで白状するが、10分の曲を作ったことは一度もない。
組曲として10分の曲はあったが、1曲でそれほど長い曲は普段から作らないし作ろうと考えたこともなかった。

なので最初に7分と聞いたときには、「で、できるかな…」とかなり不安に思っていた。

とりあえず家に持ち帰って、子供の面倒は夫に協力してもらって1週間は書斎に引きこもって曲を作った。脚本もあったのでそれを電子ピアノの前に貼って、ナレーションに合わせてメインテーマや繋ぎの部分を考える。

そんなこんなでとりあえず7分の曲ができたので、監督にデモを送った。
それからやっぱりここは長さが足りない、というところやここは映像と音楽が合ってないかも、というシーンは変更して、音楽データのやりとりをした。

ある程度楽曲の構成も決まったら、ヴァイオリンのレコーディングを開始。こちらの都合で何度も録り直すわけにはいかないし、コロナで立ち会えそうになかったのでカウント入りの音源を送ってオンラインでやり取りをした。

これが意外とスムーズで、ぽんぽん出来上がった。まあ、ヴァイオリン奏者の方が相当優秀だということなのだが。

その後、何度か監督とやり取りして、クライマックスだけは全部やり直した。
ヴァイオリンの録音もしていたし、一度作ったものを全部消すというのはかなり勇気が必要だが、しっくりこないときには絶対にやり直したほうがいいとわたし自身は思っている。

最後の2分ほどは全部消して、いただいたイメージ映像を見ながら作曲。無事にその音楽が採用された。

今回は監督もオリジナル音源から制作して映像と合わせることが初めてだったはずだし、わたしももちろんこれほど長い曲も映像と合わせて作るのは初めてのことだったので、お互い手探りな状態ではあったがこれがなかなか面白かった。

というか、最初はみんな手探りなのだろうと思う。
それを何度も繰り返し、慣れて、作業スピードも上がるのだと思うが、この初めての体験を未来の自分を助けるべく、作業工程をメモしておくことにした。

初めての打ち合わせから、どう曲を作ったのか、7分から10分まで長さを変える工程などを、いつも使っている制作ノートに記した。

人の記憶ほど曖昧なものはないとわたし自身がよく理解しているつもりだし(すぐ忘れるから)、おそらく今後同じような仕事をいただいたときに、制作ノートのメモが心強いものになるだろうと。

未来のわたしを支えてくれるだろうという希望を込めて、手元にある制作ノートを閉じる。
この映像作品に関わることができてよかったと、その気持ちも忘れずにノートに閉じ込めておきたいと思う。



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