8年越しの初対面
ネットで知り合った人、というのは前よりずっと増え続けている。
まだ全く会ったことがないけれど、気が合って頻繁にやり取りをする方もいるし、仕事の依頼を受けたこともある。
まだ今ほどSNSが盛んでもなく、わたしも仕事が少ない頃、自作曲をフリーミュージックとして配信、誰でも使用してもらえるようにし、出会ったのがSさんという方だった。
Sさんはフリーミュージックを使用する側としてサイトにアクセスしていたらしく、丁寧に曲を自作の動画に使ったというメールをしてきてくれた。
そういうことが何度も続き、わたしが子育てでなかなか曲ができなくても、遠く長野から応援してくれる1人となってくださり、時には地元の特産物を送りあったり、ご夫婦の旅行の写真を送ってきてくれたり、ただネットで知り合っただけなのになんだか親戚のおじさん並みに親しくなった。
熊本と長野では会える機会はそうそうなく、仕事もあって、子供もいて、となると直接会うというのはなかなか実現できなかった。
前置きが長くなったが、それがようやく2024年に実際に会うことができた。
飛行機の手配や仕事の調整、友人と2泊3日で長野へ行く機会が持てた。
ネットで知り合って8年が過ぎていた。
8年越しの初対面である。
内心はドキドキしつつ、何を話そうと心配していた。
空港ではSさんが到着を待ってくれていて、会うとすぐにハグしてもらった。
話が盛り上がらなかったらどうしようという私の心配は杞憂に終わり、穏やかな時間も笑いすぎた時間もある素敵な旅になった。
全く仕事がなかった時期に、あなたの音楽が好きです、応援してます、と連絡をし続けてくれた人の存在はクリエイターにとって大きい。
正直なところ、わたしは教員免許を持ってるので中学でも高校でも臨時であればすぐにでも仕事に行ける状況にある。安定したお給料ももらえるとわかっていたので、心が揺れ動く日々もあった。
そんなときに、いや、もう少しがんばろうと思えたのは、応援してくれる人の存在があったからだ。
話を戻すが、次の日にはSさんの奥様にも会うことができ、初対面とは思えないほど話が盛り上がり、Sさんが運転する車の中から松本市や安曇野の風景を眺めながら、人生は本当に不思議で、面白いと思った。
わたしがフリーミュージックに投稿しなければ、Sさんが数あるフリーミュージックのサイトの中でもわたしが投稿したサイトにアクセスしなければ、連絡を取り合わなければ、こうして実際に会うなんてこともなかったはずだ。
それがひょんなところから縁ができて、こうして今、長野県にいるということが不思議で楽しくて、ありがたかった。
帰りの飛行機のなかから見えた小さな松本空港の展望所からいつまでもペンライトを振るSさん夫婦の姿を見て、
会いたい人には会いに行け
会えるうちに会いに行け
改めてそう心に強く思った2024年の秋だった。