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寒くなると思い出すこと#63

救急車に乗ったのは2回目で、妊娠3ヶ月の頃だった。

1度目は長男が生後1ヶ月の時に、夜中に突然咳き込み顔面蒼白になったため救急車を呼んだ。それから3日間一緒に入院して検査等をしたのだが、この時初めて救急車に乗った。

2度目に熊本駅構内で倒れたときは、次男がお腹の中にいる頃だ。まだコロナでもない時期で、10月頃だったと思う。
わたしは妊娠3ヶ月で、車で熊本駅に行った。その日はわたしの父が2歳の長男と先に熊本駅に遊びに行っており、お昼頃に合流することになっていた。

熊本駅に着いて「長男はミスドのオールドファッションが好きだから買っておこう」と思い、ミスドに行くとレジには5人ほど並んでいた。

どれどれ、ドーナッツを買おうかなとトングとプレートを手に取って並んだところ、意識が遠のくのがわかった。立ちくらみのような感じ。
このまま目を瞑ってやり過ごせば大丈夫、と思っていたが気づいた時には床に倒れており、ひんやりとした感触を頬に感じた。

「!!!倒れたんだ!」

と頭ではわかっているけれど、全く体は動きそうにない。
マタニティマークだけは見せておかないとと思い、バッグに付いていたマークを取り出すと近くにいた女性が気づいてくれた。

相当な勢いで倒れたらしく、後頭部は壁にぶつけていたし、すでに救急車を呼んでくれていた。
「父に知らせないとわたしとしばらく連絡がとれなくて困るかもしれない」と思い、声をかけてくれた方に携帯電話を渡して父へ電話してもらった。

真冬なのに冷や汗も出ており、うろ覚えではあるが特に女性の方々がスカートのところにタオルをかけてくれたり汗を拭ってくれたりと本当に優しかった。
父がなんとか到着する頃には救急隊員の方もそばにいるようで父をみて一言、

「ご主人ですか?!」

と聞いた。
いやいやいやいやいやいやいや。
まあ確かにね?歳の差婚は珍しくないけどさ。長男をベビーカーに乗せてきてたからパパにも見えるのかもしれないよ?
でも父はハゲてますし、明らかに50代以上に見えるよ、割と体型はスマートだから若く見えるのか?

父も父で、
「いやーはっはっはっは!この子の父親です、ありゃー倒れちゃったんですね」

とまんざらでもない返事をしながら、わたしが昔から貧血等で倒れたことがあることを説明したようだった。

恥ずかしすぎることの連続で、ぐったりとしたまま担架に乗せられ救急車に乗った。
1度目は長男のことが心配で気が動転していたが、意識もしっかりと戻っていたので救急車を見渡すといろんな装置が付いている。ちょっと寒く感じたのはわたしが倒れたからかもしれないが、思ったよりも揺れるなと思った。

こんな感じなのか、と思いながら質問に受け答えしてかかりつけの産婦人科に運んでいただいた。

この時に気づいたのは、わたしはどうも暑くなると気分が悪くなったり倒れたりするということ。コート等を着込んで寒い場所から屋内に入ると、その傾向が強い気がした。

血管迷走神経反射性失神かな、と言われたが、自律神経失調症はなりやすいとのことで、わたしはまさにこれだった。

あの時にわたしに差し出してくれた見知らぬ方々のタオルやハンカチは、後日駅員さんに説明してお返しした。そしてミスドにもお礼を言いに行き、大量のドーナッツを買って帰った。

寒い季節になるとこの出来事を思い出す。
悲しいニュースも多いが、優しい方々はまだまだたくさんいるのだなと心があたたかくなる。


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