お喋りな旦那が黙るのは寝ている時か恵方巻きを食べてる時。という話。
※こちらでは公開が遅くなりましたが、節分の翌日に他サイトに投稿したエッセイです。
2/3は節分。
今では、対象の方角に体を向けて恵方巻きを食べることが当たり前のようになっている。が、私は一度もやったことがない。恵方巻きを買って来て食べることはあったが、切って食べていた。もはやただの太巻きである。
広島県出身の旦那曰く「恵方巻きを食べる風習は西日本では昔から盛んだった」とのこと。私は神奈川県出身なので馴染みがないのは当たり前かもしれない。
そんな旦那が仕事帰りにスーパーに寄り、恵方巻きを買ってきた。自分の分は一本。私の分はハーフ。1本など食べ切れないのでハーフサイズでありがたいと思った。中身は私の大好きなサーモンとアボカドだ。
近所のスーパーは駅から離れているということもあり、いつも夜間は空いている。が、この日は恵方巻きを求める買い物客でごった返していたらしい。
「寿司コーナーでみんな椅子取りゲームしてた!」
旦那の言う「椅子取りゲーム」とは、値引きされる商品を求めて惣菜・寿司コーナーの周りをグルグルと回る客のことである。スーパーの売り場で「椅子取りゲーム」とは一体どういうことだろう、と初めて聞いた時は思ったが、旦那の解説を聞いて「なるほど」と思ったものだ。
確かに夜になればなるほど、スーパーの惣菜コーナーにはグルグルと回る客が増えていくもの。それを「椅子取りゲーム」に例えるとは、さすが若い時にお笑い芸人を目指していただけのことはあるなと思ったのだった。(芸人志望だった話はまた後日書く予定)
話が脱線したので戻す。
恵方巻きを食べる習慣がなかったので、私は普通に白米を炊いてしまった。
「恵方巻き食べるのにご飯も食うの?!」
と驚かれたので、残してもいいよと言ったのだが、旦那は夕飯を全て平らげた。恵方巻き以外には、昨日の残りの肉じゃがとサラダがあった。おまけにデザートにチョコレートのアイスまで食べていた。因みに旦那はいつも白飯をお茶碗ではなく丼で食べる。このメニューを完食する旦那を見ると、やはり男は女とは体の作りが違うのだなぁと思ってしまう。(大食いタレントの方々は例外だが)
しかし、私が一番興味を引かれたのは、恵方巻きを食べる旦那の姿だった。
わざわざ方位磁石で調べた北北西の方角に体を向け、立ったまま腰に手を当て、仕事帰りの作業着姿のまま1本の太巻きを大口開けてモグモグと頬張る旦那の姿は、とてもシュールだった。恵方巻きを食べる習慣がない私にとってはそんな旦那の姿は新鮮にも感じられた。
何より、いつもはお喋りな旦那が黙り込み、真剣な顔をして恵方巻きを口いっぱいに頬張っている姿が何ともシュールで面白く、私は終始笑いを堪えるのに必死だった。旦那は誰かが近くにいると常に喋るタイプだ。だから、家にいる時も私が例え何かの作業に没頭していてもおかまいなしに話しかけてくる。たまにそれをウザいと思う時もあるが、大抵はきちんと応じるようにしている。
そんな旦那が黙っている時はというと、寝ている時か恵方巻きを食べている時、ということが、今回初めて分かった。
あまりに面白いので写真を撮ろうと笑いを堪えながらスマホを構えたのだが、撮るんじゃないと言われ、本気で怒られそうだったので慌てて引っ込めた。
因みに私はハーフサイズの恵方巻きを、いつもと同じく食卓の上で箸で食べた。ただの太巻きである。
2/3を過ぎたら1本のただの太巻き。しかし、それを全力で真剣に食べる旦那。
彼にとっては、たかが恵方巻き。されど恵方巻きなのである。
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