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病気のこと

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20代は闘病に費やした。うつにまつわるあれこれ。
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2020年12月の記事一覧

呪いをかけられたことがある

「頑張れ」は呪いかどうか、という作文を書いた。呪いの言葉だと思っていたけど、状況が変わったら違う意味があったよという話。 今日のは違うよ。呪いの言葉でしかないやつ。 言われたのは、母の葬儀の間。言ったのは誰か知らないおばちゃん。親戚か、近所の人か、とにかく私は知らない人。 母を亡くした4人姉妹の長女の私に、そのおばちゃんはこう言った。 「これからは娘であり姉であるだけでなく、妻であり母でありなさい」と。 そうか、母が亡くなるということはそういうことなのか!よし、お母

ビッグかつと静かな冬

ストーブの前に陣取り、食パンの乗った皿を床に置く。 袋を開けて、中からそれを取り出す。 いつものキツネ色。甘じょっぱくて濃い、スパイスの効いた香り。 パンの上にそれを乗せたら、上からマヨネーズを。斜め格子にかけたらなんだかオシャレな気がしてくる。でも、レタスもアボガドも要らない。トーストの上にそれとマヨネーズのジャンクな組み合わせがベスト。 小さくしたままのテレビの音を聞きながら食べる。外を救急車が通り過ぎた。でもいつもより音がしないのは、雪が積もっているから。 ア

生きて幸せになって欲しかった

知人が亡くなった。 特別に親しかった訳ではないが、同じ職場の同僚として、たくさんの仕事のことと少しの仕事以外のことを話し、一緒に笑ったり考えたりした間柄だ。 死因は自殺だった。 昔、何度も自殺をはかった者として、なぜ私は未遂で済み、なぜ知人は死に至ったか、考えずにはいられなかった。 自死を考えるのは、自分に、世間に、未来に絶望している時だ。自死だけがこの苦しみから救ってくれる唯一の方法で、甘い特効薬のようにさえ感じられ、頑ななまでに脳裏から離れなくなる。 治療をすれ

体育会系的闘病記

1回目のゴールは決まらなかった。 準備が足りなかった。ずさん過ぎた。 2回目も衝動的だったけれど、少しは計画的に実行に移した。 でも邪魔が入り、失敗に終わった。 4回目のゴールが決まらなかった後、自分から望んで合宿入りした。 合宿中は面会も禁止、差し入れも禁止。ひたすら練習に集中。 でも、時々ふてくされて練習をサボり、ゴールを決めたがるもんで、さらなる強化練習のため専用ルームに缶詰にされる。 そこは専用なので、いるのは私ひとり。練習に必要なもの以外は何も置かれず