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これぞ能の醍醐味!?夢うつつ体験し申して候

注:個人的な備忘録として今回は ”能トレ” 初心者目線の素直な感想を書くことにする
とくに面白ネタというよりは、これを読んでそれがしのような初心者にも、ぜひ能楽堂での “能トレ” を実践してみてほしいというだけの話なりけり


さてもさても
待ちに待った能楽堂での能鑑賞の日
雨の降る中、東京・千駄ヶ谷の国立能楽堂へ行ってきた

門構えや外観はどこか大きなお寺の社務所みたいな感じ
中へ入るとちょっとしたお土産物が買えたり食事処があったり
来場者には着物姿のご婦人もちらほらいたりと
さながら和風の結婚式場みたいな雰囲気である

開演時間まで少々あったため施設内をうろつき
いよいよ能楽堂の中へと入り申す

正面席の前から2列目
地謡側寄りだが中ほどの通路脇の席であったため
事前の算段どおり揚幕から舞台の中央まで全体的に見渡せる

『道成寺』でしか使わないという奥の柱と天井の金具もバッチリ見える
目の前にはきれいな白い石が敷き詰められた白洲

心の準備は万端である(=能トレやる気まんまん状態)


まずは「仕舞」から
これは初めて見る番組であったが
能と同様静か~に舞が始まる

トップバッターは10代と思しき女児
舞はお稽古の発表会といった感じではあるが地謡がベテランという
どう見てよいやら・・・とにかくよくできましたといったところ

お次は打って変わっておじいちゃん登場
と言っては失礼なお方であることは百も承知
しかしおいくつなのか舞より手や体の震えのほうが気になって仕方ない
こちらもどう見てよいやら・・・とにかく無事に終わってよかった

そして最後にとうとうこれぞシテ方という迫力の男性
面をかけない演者は残念ながら今のそれがしにはあまり感動を覚えない
ここはこれから徐々に心得ていきたい

そして次に「狂言」
実は今回この公演を選んだ一つの理由がこの狂言にある
というか野村万作さんの演技を観たかったのだ
なにせ御年93歳の重要無形文化財保持者(通称「人間国宝」)だ
そもそも能の前に狂言に興味を持ったというところもあったため
やはり早いうちに拝見しておかなければと思っていた

さてその演技とは・・・

なるほど、大名役にはうってつけの風貌
しかしやはり年齢のせいか声の出が他の演者と比べて小さく聞こえる
むろんこれもキャラクターと思えばアリなのだが
なんだかハラハラする
ただ90歳を過ぎてもなお舞台に立てるその活力
かつて観た『大笑い健康法』なるインド人のDVDを思い出す
腹から笑うということが健康によいということを目の当たりにし、
やはり恐るべしインド人と痛感しつつ
とにかく今後もできる限りたくさんこの方の出演する公演を観ておきたいと思った次第である

そして休憩を挟みいよいよ能の世界へ

本日は『三井寺』という曲
とその前に、予備知識を教示してくれる方が登場ししばし講座のようなものが入る
それがしは初心者ゆえ、特にこのような解説のある公演を選ぶようにしている
今回は登壇者の方の『風姿花伝』を現代訳し解説した書籍を読んでいたことで期待していたところはあったが、ちょっと想像していた感じではなかった
アイ狂言が鐘の音を真似することころがあるという情報だけ気になったので記憶しておく

さてここからがアノ “ゾーン” 体験だ
それがしにとってはここが今日のメインイベント

と、出てきた作り物にさっそくロックオンされてしまった

高さ2mくらいの白いやぐら?のてっぺんに、中型の植木鉢をひっくり返したようなサイズの「鐘」がちょこねんとぶら下がっているではないか!?
これはなんともかわいらしい・・・というかなんというか
『道成寺』の鐘の百分の一ほど?
冗談でしょ?と正直あぜんとしたが、
橋がかりにいた母が鐘の音をきいてこちらを振り向く姿を見たとき、このサイズが遠近感をうまく演出していることに気がつく

『三井寺』は「謡の三井寺」と言うらしく、本来その謡の内容が秀逸のようなのだが、もちろん私にはそこまで理解する “能のキャパ” はない
しかしそんな初心者でもその音だけで楽しめるほど心地よい響きがある
そしてとうとう ”その時” はおとずれた

終盤の地謡のコーラスでうつらうつら・・・

おおお~っと、やばい!
せっかくかぶりつきの席で観ているのに
しかしこれがアノ私が体験したかった ”ゆめうつつ体験” の始まりではなかろうか
・・・・
気がつけばさっきまでジーっと隅で座っていた子方がじゃべり始めていた

そして最後に母が子の両肩に手を置き二人で空を見あげて決めポーズ
ゆめうつつの世界をさまよったそれがしには
鐘とその後ろでかがやく月を見上げる母子の風景が見えた

めでたしめでたし

最後には「完」の文字さえ目に浮かんだ
(昔の映画みたいなやつ)

総評:
・今回の席について
さすが正面席の前のほうの列は演者の声が大きく聞こえ、迫力があってよい
しかし見所(客席)が映画館や音楽ホール並みの傾斜がないうえ座席は小さく、前後左右の間隔もないため、自分の前の席に男性が座ると(失礼ながら)邪魔になる
今回は2列目とはいえ、それがしの前にはご夫婦のうちの旦那さんのほうがお座りになってしまった
実はこの日を待てずに観世能楽堂へ1度観に行ったのだが、そのときも正面席とはいえ9列目で、しかも前には若い男性
すべてをじっくり観て没入したいが、これではなかなかきびしい
ただでさえ ”ちっちゃいもの倶楽部” の類であるそれがしには、これが今後も能楽堂での鑑賞においての頭痛のタネとなるだろう

・曲目の解説について
まだまだそれがし能の鑑賞においてよちよち歩きを始めたばかりであるため、あらすじと見どころの事前確認は欠かせない
今回はYouTubeにて割りと丁寧に解説してくれている動画があり、おかげで当日の開演前の解説コーナーは内容が中・上級者向きのようでイマイチだったためおおいに助かった
能関連のYoutubeチャンネルは再生回数が非常に少ないようだが、このような解説動画は再生回数とは関係なくアップしておいていただけるとありがたいなあと思う

・次回の演目は?
太鼓が出てくる曲がいい
ここまでいくつかYoutubeなども含め何曲かみてみたが、人間以外が登場する曲のほうが好みであることに気づいた
今は太鼓の「キィヨォ~っ!」みたいな囃子に妙にツボっている
これは人によって特徴がありそうなので
今後は太鼓方のチェックをしていきたい

友人数名に能にハマっていることを話すと興味を示してくれた
今度行くときは誘ってほしいと言われているので
それも加味して次の演目を選ぶことにする
それにしても(競馬のときもそうであったが)能に興味がある人がそれがしの周りにまあまあいたことに驚いている

能トレ仲間がいれば三日坊主にはならずに済みそうだ


約650年も続いている伝統芸能がここで絶えるとは思わないので、今後も能楽の関係者の方々にはマイペースで普及活動をしていかれるとよいとは思っているが、時代にある程度寄り添った工夫をしていってくださるとありがたい(とりあえずは座席の傾斜問題)
頭が邪魔じゃなければもっと能楽堂で鑑賞したいというのが今の本音

能はアートと同じで受け取り側のレベルによってそれなりの楽しみ方がある
和歌を嗜んでいれば今回のように謡の秀逸さや「幽玄」なるものを味わえるのだろうが、
それがしは暫しこのまま何も知らない子どものように
五感(もしくは六感)をつかった楽しみ方を続けてみたい

子ども時代の感覚は一度なくすと二度と戻らないゆえ
まだまだ大人になんてなりたくな~い、と思いけり












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