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禹王と水星と水銀

古代神話に、水星の影を垣間見る。
現代ではすっかり存在感を失ってしまった水星であるが
12000年前の空では、人々を導く大切な目印として崇拝されていたと確信している。

古代中国の伝説的帝の禹。
夏王朝の創始者であり大河の治水を成功させた人物とされる。
禹は半身不随で足を引きずり歩いたそうだ。
この歩行は禹歩と呼ばれ、片脚で跳ぶように歩く身体技法のことを言う。

禹に関する神話に啓母石神話がある。
治水工事の為に禹が熊に変身し、それを妊娠していた妻が見て石になった。
禹は妻に子供だけ渡して欲しいと懇願し、石が割れて子の啓が産まれた。

何故、禹と水星が関連すると思ったか。
エジプト神話の時の神トート(水星)の誕生を想起したからだ。
トート神は、ヘリオポリス神話において世界ができた時、自らの力で石から生まれたとされる説が有名である(この場合、早く生まれたために足が悪くなったとされる)

水星は太陽に近い惑星であるから、どんなに頑張っても地上から28度位の高度までしか昇らない。
日の出前や日没後の低空に出没する。
この様子が足を引きずる、足が悪いと言われる原因だと思う。

禹は治水神であり、洪水神であり、水と関わる。
水星も水を示す惑星である。
禹という漢字は、九形の雌の竜と虫形の雄の竜を上下に組み合わせた形。
竜という概念はBC7000年前の遼河文明に起源をもち、風水と関わっている。風と水。

漢字の竜は、頭に辛字形の冠飾を付けた蛇身の獣の形。
説文解字には「春分にして天に登り、秋分にして淵に潜む」とある。
日没の水星は春分の頃は黄道に対して立っているが、秋分の頃は寝ているため見にくい。
竜は、水星を象徴していると推測できる。

古代エジプトの暦は、3つの季節に分けられていた。
夏、洪水期(秋)、冬。
1ヶ月を30日とし、12ヶ月。
4ヶ月で1シーズン。
1ヶ月はさらに10日に分けられた。
(エジプトの場合は、さらに神の祭日が5日入る)
ナイル河の氾濫を知らせる有名なシリウス。
夜明け前の空に現れた時が、氾濫の合図であった。
BC5000年前の話である。
時代が下ると、その指標は機能しなくなる。
地球の歳差運動により季節の時間はズレていってしまったからだ。
農耕の時間を知る事が人類の目標になる前は、何を知りたかったのか。
やはり水の季節ではなかろうか。
水は生命の源である。

水星は1年間に3回地球と会合する。約116日の会合周期。
(外合3回、内合3回の三角形は六芒星を描く)
116日×3は348日だから、365日には17日も足りない。
だから水星は単独で使用されるのではなく、重要な補佐官である。

月にウサギや蛙が住むのは何故か?
これらの跳ねる生き物、空を跳ねる星。
古代アッシリアの星図には楔形文字で水星を跳ぶ星と記録している。
月のように満ち欠けする星でもある。
水星は月の属性を持ち、月の運行に関係する。
月は潮汐力に関与する訳だから、海水を司る。
水の歴史と水星が深く関わるようだ。

時の他に水星に冠せられる称号は、知恵、伝令、書記、商売。北、水、水銀。

蛙と月の物語には、不老不死の薬が関わる事から水銀は非常に重要な要素と考えられる。
妊娠した女性が水銀に飲み込んだ場合、発声障害を持った子供が生まれることがある。
蛙の鳴き声と水銀。水銀を扱う故に声に障害がでる。呼吸器がやられる。

水銀は金銀の精錬に使用されるが、元々は液体鏡式望遠鏡に用いられたのではないか。
水銀を入れた容器に星を写し、水星の軌道を観測していたのではないか。そこから様々な発見・発明が生まれた。知恵の神である。

水銀は自然界では辰砂(朱色硫化水銀)と呼ばれる赤い鉱石として存在する。
丹と言えば、辰砂のことである。
これを加熱すると水銀蒸気が発生し、冷却凝縮させることで水銀が精錬される。

石の神話は、この辰砂と関係していると推測する。

人類は水銀を発見し、水星を観測し、水の季節を知った。
西の空が辰砂の朱色のように染まり、水星が輝く時、水の時が訪れた。















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