Dimension -ショウ-
飽きもせずに次から次へと、奴らはゾロゾロと現れた。別にさして大変だったわけじゃないけど、ここまでくるとさすがにうんざりしてくる。そろそろ諦めて姫を差し出してくれないかなぁ。そんなことがぼんやり頭に浮かんでいた。
「たった三人でよくここまで攻め入って来れたな。敵ながらあっぱれ、褒めてやろう。しかし、ここからはそうはいかんぞ。」
大将かな?相手の一団の中で、先頭にいる奴が不敵に笑いながらそう言った。防衛線を二段も突破されて、本丸の手前まで進攻されておいて、どこからそんな自信がやってくるんだろう?
「皆そう言うんだよ。あのさ、たった三人に城の目の前まで攻め込まれて、結果見えてるじゃん。もう諦めて、大人しく姫様差し出した方がいいんじゃない?無駄な犠牲者増やす必要ないし、こっちも一々倒していくの、結構めんどくさいしさぁ。」
「ほらほら、だから言っただろ、ショウ。あんまり目立った暴れ方をするからこうなるんだよ。」
「いや、あれはリュウちゃんの暴れ方の所為だって!」
「俺はちゃんと手加減していたぞ!」
「「どこがだよ!!!」」
「心配するな。そんなに貴様らに手間は取らせんよ。」
そういうと大将は、馬を動かして脇に移動した。すると大将の後ろにいた兵士の姿が見えた。小柄な男で、顔にはいくつかの刀傷が付いている。その面と小柄ながらも引き締まった体からいくつかの修羅場を潜り抜けて来たんだということは簡単に想像がついた。奴は、恐らく大将が目の前にいた時からそうだったんだろう。ずっと俺達の方を微動だにせず凝視していた。俺が奴の風貌を観察し終え、しっかりと目線を合わせた時だった。完全な間合い外なのに、凄まじい殺気伝わってきた。俺以外、セイもリュウも同じくその殺気を感じ取っている。
「ショウ、あいつ・・・」
セイが言葉を発するのと同時に俺は馬を蹴り、波のように伝わってくる殺気から距離を取ろうとした。だが、奴はそれよりも早く馬を駆り、伝わる殺気と同じくらいの勢いで突っ込んできた。奴は俺達に到達する寸前で、馬から飛び、刀を抜いて、その勢いのまま俺に突っ込んできた。寸でのところで俺は奴の刀を止めることができた。だけど、突進してきた勢いに押され、俺は奴共々落馬した。
「ショウ!!」
咄嗟にセイが上げた声が言い終わる間もなく、既に奴はこちらに仕掛けてきていた。落馬の衝撃を感じないのだろうか。奴は初手からトップスピードで刀を打ち込んでくる。袈裟懸け、斬り上げ、胴斬りと、まさに縦横無尽の打ち込みに、俺はただ防ぐので精一杯だった。なんとか奴の刀を弾くことができたとしても、奴はその反動を利用して、さらに攻撃に転じてくる。
奴が反動を利用して右回りに回転しながら、体勢を落とし、俺の右足に斬り込む。俺は上に飛び上がって躱すと、大上段から奴に真っ向を打ち込む。しかし、奴は刀を真横にして俺の刀を受けると、柄の方を引き、俺の刀を擦り流して、さらに袈裟懸けに斬りかかってくる。俺がその刀を躱すとすぐに、奴はさらに俺の喉元めがけて刀を打ち込んで来る。間一髪で俺は刀を止める。明らかに今までの兵士達とは桁が違う。奴はより強くなった殺気の籠った目で睨みつけている。そしてその口元がニヤリと歪む。
「なぁ?今日お前は、どんな奴を斬った?」
「・・・はぁ!?」
咄嗟に何を言われたのか脳が理解できないままでいると、リュウとセイが奴に斬りかかる。
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