Dimension -序章-
風の音しかしないだだっ広い荒野に、たった三人の戦士が歩いている。
スラリとした長身に、端正な顔立ち、色鮮やかな衣を纏い、各々刀一本を携えて進んでいく。
徐々に風の音に、重く深い地響きの音が混ざっていく。その音はどんどんと大きくなって、実態も明らかになっていく。地平線の向こうから、三人に向かってくるおよそ四万五千の軍勢。それを前にしても、三人の足取りは変わることはなく、落ち着いた様子で進んでいく。
「止まれぇ!!ここより先は我が国の領土である!入国に関わる手形、証 文のない場合は、即刻退避せよ!」
軍勢の先頭にいる騎馬兵士達の一人が、声を張り上げ、三人に向かって退避を促す。
「さてさて、相手さん、気合十分で向かってきたぞ。本当に向こうに姫様は捕まってるんだろうな?」
長い銀髪をなびかせながら、三人の内の一人、セイが冷静な口調で尋ねる。
「おうよ!俺がここんとこ連日方々呑み屋を回って手に入れた情報だ!間違いねぇよ!」
程よく引き締まった褐色の肉体に白い歯、リュウが屈託ない笑顔で答える。
「だから心配なんだ。」
「なんだとぅ!」
「まぁまぁ!とりあえずは、あいつら全員倒せばいいんじゃん?」
ショウが、まるで公園に遊びにでも行くように、無邪気に駆け出して大群に向かっていく。
「おい、ショウ!!ったく!」
ショウを追ってリュウも駆けて行く。
ぶつかり合う両者。“四万五千人VS三人”という圧倒的不利と思える状況にもかかわらず、三人はどんどんと斬り進めていく。戯れて遊んでいるかのように、余裕の様子で兵士達を次から次へと倒していく三人。
「ショウ!あんまり派手に暴れるなよ!逆上させたら、人数が増えて、無駄な労力が増えるだけなんだから!」
「そうだぞ!お前はもうちょっと加減っていうのを覚えた方がいい!」
「お前もだ、リュウ!」
四方八方から飛び掛かってくる兵士達に息つく間もなく対応していく。
「そうは言ってもさぁ、加減て案外難しいんだよなぁ。パパっと片付けちゃった方が楽じゃん!それこそ、リュウちゃんのやたらめったらぶん投げるやつ、やめた方がいいんじゃない?」
「なんだと!俺はちゃんと加減をしてだなぁ・・・」
と、リュウは左側にいた兵士を掴むと前に放る。するとその兵士は勢いよく飛んでいき、その先にいる兵士達が六人程巻き込まれて倒れる。
「それだよ、それ・・・。」
呆れ果てるセイ。
相手の軍勢にどれだけの騎馬隊が居ようが、どれだけの数の矢が飛んでこようが、そんなものは、この三人にとっては物の数ではなかった。四万五千の軍勢はあれよあれよという間に、倒されていった。ショウとリュウとセイの三人は、着々と歩みを進め、敵の根城に向かい、見事に囚われていた姫君を奪い返すことに成功したのだった。
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