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【映画】ミッシング

主演:石原さとみ
脚本・監督:𠮷田恵輔

とある街で起きた幼女の失踪事件。
あらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。

娘・美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里は、夫・豊との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々だった。

そんな中、娘の失踪時に沙織里が推しのアイドルのライブに足を運んでいたことが知られると、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となってしまう。

世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じてしまうほど、心を失くしていく。

一方、砂田には局上層部の意向で視聴率獲得の為に、沙織里や、沙織里の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材の指示が下ってしまう。

それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。
その先にある、光に—

公式サイトhttps://wwws.warnerbros.co.jp/missing/

(1621文字)

石原さとみの振り切った演技が話題になっていた。
娘の行方を探す母親らしく、ちゃんと”綺麗じゃない”。
これはもちろんメイク等、スタッフも気を使っているんだろうけど、化粧っ気もなく髪も整っていない。この状況の母親に見える。
そして苛立ち、喚き、泣いて鼻水まで垂らす。
子供を持つ母親なら、感情移入できてしまうと思う。
母親なら。

青木崇高演じる夫の豊は、妻の沙織里のように感情的にならず、チラシを配り、テレビの取材を受け、淡々と日々を過ごす。
ボクは、この夫に感情移入しながら観てしまった。
分かるんですよね。
近くにいる人が感情的にになっていたら、自分は冷静になってしまう。
冷静にならなくてはと考えているわけじゃないんだけど、冷静になってしまう。
そして、沙織里は夫と自分との温度差に苛立ち、それをぶつけてくるので、時々少しだけ声を荒げるが、すぐに冷静に戻って妻を宥める。

ボクの妻が言うには、
「沙織里は自分に苛立っていて、(失踪の原因を作った)自分を責めてくれないことで余計に罪悪感が強まっての苛立ちで、それをぶつけても大丈夫だっていう信頼はある」
とのこと。
なるほど、確かに。
甘えられる相手だと信じているからぶつけられるんでしょうね。
妻は完全に沙織里に感情移入して観たらしく、かなり泣いたらしい。
妻の言うことが頭では分かるけど、感情的にスッと落ちてこないのは、やっぱりボクが夫の立場で観ていたからだと思う。

いや、見方が違うと面白くないというわけじゃないんです。
このあまりにも大きな出来事に、おそらく観る方はそれぞれの立場や考え方に立つでしょう。
そうやって、いろんな面から観ることができるというのは素晴らしいと思う。

ラスト近くで、夫婦に少し嬉しいことがあった時、夫が声を押し殺すようにして泣くんですよね。
そこまでずっと耐えてきた。
もしかしたら、妻のように怒りや悲しみを外に出せれば楽だったかもしれない。
でも耐えてきた。
自分まで壊れるわけにはいかないと感情を押し殺してきた。
その壁が、過ぎゆく時間と、思いがけない優しさと少しの希望に、崩れるんですよね。
これは、夫の立場で観ないと分からないかも。

月日が流れて、止まった時間が少しずつ動き出す。
ゆっくりと夜が明けていくように。
それを認めてしまうのは、辛く悲しいけれど、進んでいくしかないということを悟る。
その時の石原さとみの表情がとても良い。

もうひとつ、報道や世間の反応に翻弄される夫婦の姿も、ひとつの軸になっている。
それはローカルテレビ局の記者・砂田を演じた中村倫也がうまく表現している。
世間の反応やイタズラを見ていると怒りが湧くけど、そこに集中しないほうが良いかも。
あくまでも、夫婦二人の物語だ。

これは辛い物語だけど、ぜひ夫婦で観て、感想を話し合ってもらいたい映画だなぁ。

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