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中小企業のデジタル化は、なぜ遅れてしまうのか?を実体験から感じること。

こんにちは、Zen office岩瀬です。日本のデジタル化はなぜ遅れているのか?というテーマで書こうかと思いましたが、環境変数が多いため、今回は、より現場に即した視点で感じていることを書きたいと思います。

まず、日本のデジタル化が遅れているということに対して、起こっていることというのは、主に政府や大手企業に対してという文脈が大きいです。その一方で中小企業に対しては、大手企業と比較して、ほとんどデジタル化のリソースが供給されていないということが現実です。

いくつかの視点から理由を書いてみたいと思います。


まず、自社に人材がいない

これはほとんどの中小企業において、人材がいないということがあります。

人材とは?というと、デジタル化に長けており、目標となる期日に目指す成果を上げられる人材という意味で、定義します。

なぜいないのか?というととてもシンプルで、大手企業やSIerなどの支援企業などに多くの人材が集中してしまっており、採用したくても採用できない、育成したくても育成方法がわからず育成できないということがあります。

人材がいない多くの場合は、「自社の30前後の若手社員か、総務スタッフに兼務でデジタル化に関する業務を任せる」というスタイルを取られていることをよく見ます。

このケースでいうと、担当している方々は多くはデジタル知見が無い状態からスタートするということと、メイン業務と兼務している状態になります。

もちろんデジタル知見が無い場合は、ゼロから勉強する必要があり、メイン業務と兼務している場合は、メイン業務が忙しくなると、兼務であるデジタル化の業務が後回しになりがちです。

そういった結果から、半年前、一年前と同じ課題を今も抱えてしまっており、デジタル化が遅れているという状態が生まれてしまいます。

次に、パートナーがいない

大手企業にリソースが集中していると書きましたが、中小企業においては、ほとんどリソースが回ってこない現状があります。大手SIer企業などあれば、ターゲット企業は売上1,000億円以上など明確にターゲット企業の売上高を決めています。

中小企業向けのSaaSベンダーであれば、専門の営業部隊、カスタマーサクセス部隊を配置していますが、肝心の顧客課題に寄り添って課題解決を推進するプレイヤーがあまり存在しないということがあります。

こうなってくると、自社の人材が上手に成果を生み出すレベルまで持っていけるかどうかが鍵となってきますが、ほとんどの場合そうすることが難しいことが現状です。

何かのSaaSを導入するなどといった、定常的に起こるわけではなく、単発的に実施することについては、知見が蓄積されているパートナー企業に依頼することが、投資時間効率は良いですが、不得意分野を自社で頑張ってやるということもよく見受けられます。

パートナー企業がいなければ、副業人材などを活用して、推進力を高めることもオススメの方法のひとつです。

プロジェクトマネジメントできる人材がいない

パートナーがいた場合、いない場合、双方に共通して言えることが、自社にプロジェクトマネジメントができる人材がいないということも失敗する大きな要因のひとつです。

最悪なパターンは、自社にもパートナー企業にもプロジェクトマネジメント人材がいないケースです。これは、形式的にプロジェクトが進行している状態ですが、意思決定スピードも考慮事項もゆるくなってしまい、時間とコストが無駄になってしまうことが多いです。

自社にプロジェクトマネジメント人材がいない場合でも、パートナー企業にプロジェクトマネジメント人材がおり、自社に深く入ってきてもらえる場合は、デジタル化の成功に近づきやすくなります。

ただ、パートナー企業のスタンスが、あくまで支援会社であり、ビジネスライクであった場合は、支援会社に都合のいいように言われて、結果、後からコントロールが効かず苦難するケースもあります。これは大手企業でも良く起こってしまう事象です。

プロジェクトマネジメントができる人材というのは、感覚的には、支援会社でも20-30人に1人という割合だと思うため、ある程度仕事の全体像を理解しながら、プロジェクトを推進できる役職者クラスなどをプロジェクトの担当に立てるということも必要な検討事項だと思います。

投資余力が少ない

言わずもがなですが、投資余力が少ないとデジタル化の成功確率が下がってしまいます。

また、想定する投資対効果に対して、思ったよりコストがかかってしまうケースも同様です。

一般的に、想定していた期日や予算を超過してしまうということは大規模開発でも頻繁に起こることではありますが、小規模なSaaS導入などでも起こることだと思っていた方が良いでしょう。

社内人件費、社外への委託費、ツール費用、リリース後のコスト、将来的なスイッチングコストなど、様々な面において、考慮しておくことが、失敗確率を下げる方法です。

投資対効果を想定しながら、想定外のバッファを考慮した上で、プロジェクトをスタートさせることが、デジタル化を成功させる大事なファクターのひとつとなります。

的確な比較選定ができない

投資余力と共通するところもありますが、SaaSなどの選定時の比較選定も大きなポイントです。

これを失敗してしまうと、コストだけがかかり、成果を生まないまま、2-3年後に再度検討をし直すという、時間とコストを丸々無駄にしてしまう事態に陥ります。

感覚的には、20-40%程度のプロジェクトがこの落とし穴にハマってしまっていると感じます。要因のひとつは、SaaSベンダーの営業トークを鵜呑みにしてしまうこと。もうひとつは、複数ある選択肢を比較せず(知らず)にプロジェクトスタートしてしまうことです。

後者をカバーできれば、前者も一定量カバーできるため、複数の選択肢を比較するにはどうすれば良いかの考えていきます。

まず、複数の選択肢を比較するためにすることとすれば、SaaSベンダーからの直接提案、比較サイトからの一括比較、デジタル知見に長けたプロのアドバイス、知人からの紹介やセカンドオピニオンなどがあります。

まず大切なこととしては、ニュートラルなスタンスを取っている方からの情報の方が信頼性が高いということがあります。これは当然ではありますが、何かしらのツールに肩入れをしている場合は、そのツールを強く推してしまいます。

次に、選択肢の中から自社に最適なものは何か?の判断をすることです。判断するにあたっては、必要とする機能、予算、ユーザーインターフェース、将来性、拡張性など様々な要因を決められた時間内に総合的に判断する必要があります。"ニュートラルな立場で"デジタル知見に長けたプロのアドバイスが最も有効で、次に実際に利用している知人のセカンドオピニオンなどではないでしょうか。

自社の要望、機能として満たしているかどうかなどをトータル的に満たすことが重要です。

また、当社でもよくご相談いただくことのひとつとして、「様々なツールを自社に部分最適で導入したが、本当にこれで良いのかという判断ができない」というものがあります。

ファイナンシャルプランナーや保険の窓口と同様に、その人の収入やライフプラン、理想とすることなどに合わせて最適な状態が決まってきます。

最後に、デジタルだけ視点になってしまう

これは、最も起こってしまうことのひとつでありますが、「デジタルだけ視点」は様々な落とし穴が潜んでいます。

あたりまえではありますが、この視点に陥ると、実際に活用する「人」の視点が抜け落ちてしまいます。「人」の視点が抜け落ちたままデジタル化が進行すると、全く使い物にならない、戦略なし、組織なし、システムあり、という状態になり、コストだけがかかってしまう状態になります。

よく主語として、「◯◯というツールってどうなの?」といったツール主語での会話がされることがありますが、本来は主語としては、「自分たちの組織課題に◯◯ってツール合うと思う?」といった主語は自社になるべきだと思います。

あくまで主語は組織の人たちが行うことであり、ツールは人が行うことを拡張させたり、代替したりする手段のひとつとなります。

当社のコアバリューにも「テクノロジーの主導権を握る」という価値観がありますが、すべては人が主導し、人に焦点を当てることが最重要です。

当社ミッションである「人とデジタル技術が最適化された社会の創造」を実現していくべく、人の視点を大切にし、邁進していきたいと思います。

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