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AI×音声データ革命:すべての会話が資産になる時代

こんにちは、Zen office岩瀬です。皆さんは気づいていますか?私たちの周りで、音声データを巡る静かな革命が起きています。音声データは、従来はコールセンター業界など、音声がビジネスの中心となる業界でのみ活用されてきました。しかし現在では、営業商談、採用面接、インタビュー、社内MTG、業務改善など、あらゆる「会話」がデジタルの資産として蓄積されつつあります。

なぜ今、音声データがビジネス成長へのポテンシャルを秘めているのか。そして、この革命は私たちの働き方をどう変えていくのか。これらについて考えてみたいと思います。


なぜ今、音声データが活用され始めているのか?

①コロナがもたらした「オンライン商談」の日常化

2020年以降、コミュニケーションが対面からオンラインへと急激にシフトしたことは、記憶に新しいと思います。主なコミュニケーション手段は対面・電話・オンラインですが、オンラインの比率が年々高まり続けていることは間違いありません。これは、「会話」が自然にデジタル化される環境が整っているということを意味します。

②AI技術の低コスト化

音声データ×AIをビジネスに活用しようとすると、一昔前ではAIコストが非常に高く、投資対効果が見合わない時代でした。2022年11月にChatGPT3が登場してから約2年が経つ現在では、生成AIのAPIコストは1000分の1にまで低下したと言われています(※LLMモデルにより減少幅は異なります)。

③クラウドストレージの大容量・低価格化

商談をレコーディングすると、動画と音声で大容量のデータとなります。定期的にレコーディングデータを削除しなければならない環境では、音声データの活用は限定的なものとなってしまいます。現在では、セキュアな環境で大量データの保管が容易になったことで、この課題が解消されています。

④Conversation Intelligence市場の急成長

日本ではあまり馴染みがありませんが、米国ではConversation Intelligence(会話分析)という市場が確立されています。Zoom、Gong、Chorus.aiといった企業が台頭し、市場規模は2025年までに30億ドル規模に達すると予測されています。

どのように音声データをビジネスに活用するのか?

①究極の業務効率化:書類自動生成

会議議事録などは多くの企業でAI活用が進んでいますが、今後はあらゆる書類を自動生成できるようになると考えています。

書類作成のプロセスは、インプット(情報)→プロセッシング(加工)→アウトプット(書類)となります。インプット量が多く、プロセッシング力が高いほど、質の高いアウトプットが作成できます。

このプロセスに音声データ×AIを組み合わせると、以下の2つの効果が期待できます。

1つ目は質の効果です:
・インプット:人と比べて音声は100%情報を保持できます。人は質問など情報の引き出し方に集中できます。
・プロセッシング:AI活用により加工のバリエーションが豊富になります。人は経験値や提出先への書き方など、最終加工に注力できます。
・アウトプット:インプットとプロセッシングが、人だけから「人×音声×AI」に変わることで、クオリティが向上します。

2つ目は量の効果で、書類作成時間が劇的に削減されます。

業務改善は効果や投資対効果が分かりやすいデジタライゼーションであるため、この領域はほぼすべての企業でビジネス変革が可能です。

②売上向上:マーケティング・営業DXへの転用

マーケティング・営業で成果を上げるには、「顧客理解」が最も重要な要素となります。次に重要なのが顧客に対する「コミュニケーション」です。誰に(WHO)、何を(WHAT)伝えるかという根本的な部分が重要なポイントとなります。

音声データを活用することで、以下のことが可能となります:

「顧客理解」に関しては、顧客の細かなニーズや購買意向度などを、勘と経験だけでなく、定量評価・定性評価することができます。つまり、属性データだけでなく、具体的なニーズデータを取得できるようになります。

「コミュニケーション」に関しては、自社側のコミュニケーションの質を向上させることができます。言語パターン分析・会話分析・成約につながるキーフレーズ分析など、成功要因を分析し、再現可能な「型」を作り出すことができます。

音声データには「顧客」と「自社」の双方の会話が含まれているため、両面のデータを効果的に活用できるポテンシャルがあります。現状では片面のデータのみしか活用していないケースが多く、そこにはまだ大きな改善の余地があります。

③採用改善:面接官の育成と質の標準化

採用プロセスにおける音声データ活用には、「面接キャパシティの増加」「面接官の育成」「リードタイム短縮」という3つの効果があります。

「面接キャパシティ」は、前述の業務改善により対応件数を増加できます。「面接官の育成」は、コミュニケーション強化のトレーニングにより可能となります。これらの効果が相まって「リードタイム短縮」につながり、採用競合との比較において内定承諾率を高めることができます。

これらが音声データのビジネス活用における主要な領域ですが、さらに詳しく検討すれば、その他にも様々なポテンシャルが眠っているでしょう。

「人」の介在価値をどこに置くのか?


様々なビジネスプロセスに音声×AIを活用していくことで、量・質ともに改善が可能となります。その時に、「人」としてはどのような介在価値を持つべきか、という点が重要なテーマとなります。

個人的な見解では、まずEQ(心の知能指数)が挙げられます。EQが感情だとすると、IQは知能です。IQはAIに勝つことが非常に難しい時代になってきています。最近では、OpenAIのo1モデルは考える機能も備えています。

一方、EQに関してはAIが代替することは非常に難しいと考えられます。信頼関係の構築、コミュニケーション、非言語コミュニケーション、リーダーシップ、共感、共鳴、喜び、嬉しさ、達成感、刺激、感謝などは、人でなければもたらすことができないものです。

こういった能力を高めることが今後ますます重要となってきますが、ビジネスにおいて人の介在価値をどこに置くべきでしょうか。

シンプルに考えれば、人がやる必要のないこと、人がやるより効率的にAIができることはすべてAIに任せ、生まれた時間をコミュニケーションなど人にしかできないことに使うことが、個人としても組織としても成長の礎になるでしょう。また、様々な情報やリソースを的確に判断し、ビジョンや戦略の構築、意思決定を行うことも、人にしかできない重要な役割です。

ドラッカーの言葉を借りれば、自分(自社)の時間が何に使われているかを知り、他者(やAI)には難しいが自分には容易にできることは何かを常に問い続けることが、AI時代におけるすべての組織・個人にとって重要となります。

AI×音声データ活用の未来

現在は音声データを資産として蓄積していく段階です。音声データが十分に蓄積された後の未来では、CRMなどの構造化データが不要になっていくと考えられます。構造化データは、人が情報をシステムに入力する必要がありますが、人の入力は音声と比べて記憶性が低く、また入力自体を怠るという問題により不完全になりがちです。さらに、入力にコストがかかるという課題もあります。

ビジネスにおける様々な会話が音声データとして残り、メールやチャットのコミュニケーションがテキスト情報として保存されている状態であれば、プロンプトベースで膨大な非構造化データから必要な情報だけを抽出することが可能となります。

インプットされているデータ量自体が5倍、10倍と異なるため、アウトプットされる情報の精度も格段に向上すると考えられます。

今後さらにAIのAPIコストが低減されていくことが予想される中、このような未来は遠くない将来にデフォルトとなることでしょう。

まとめ:皆様の組織は準備できていますか?

AI×音声データ革命は、すでに始まっています。問題は「始めるか、始めないか」ではなく、「どのように始めるか」です。先進企業はすでに動き始めています。あなたの組織は、この波に乗り遅れていませんか?

明日からできる準備3つ:

  1. 音声データの収集の仕組みを作る

  2. わかりやすい業務改善から取り組む

  3. 蓄積されたデータを売上向上へと活用

これらの準備を整えることで、音声データを活用している企業としていない企業との間には、大きな競争優位が生まれていくことでしょう。

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