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黒い森ケーキ、トルテ、タルト、一知半解なる外来語の乱舞。

20250209 黒い森ケーキ、Forêt Noire は、ドイツ発祥のSchwarzwälder Kirschtorte 。トルテ、タルト、そして、ケーキ、一知半解なる外来語。

「黒い(の)森(Schwarzwald)」は南ドイツにあります。フライブルク・イム・ブライスガウ(Freiburg im Breisgau)は、「黒の森」への 西側の入り口の一つです。Schwarzwälder Kirschtorteは 文字通りに言えば、黒い森風のさくらんぼを乗せたトルテとなります。 但し、Schwarzwälder はSchwarzwaldが固有名詞なので、 一見複数形に見えるSchwarzwälder は、Torte が女性名詞であっても、 女性形の語尾は付けません。

少し脱線しました。このお菓子はフランスでも好まれており、一般的にはForêt Noire (フォレ・ヌワール)とだけ呼ばれます。 もし、フランス語で厳密にこの言葉を表すとすれば ”Tarte de la Forêt-Noire” かも知れませんが、人々は、軽くForêt Noire (フォレ・ヌワール)と呼び慣しているようです。 黒い森のイメージの醸し出す雰囲気を前面に出そうとしているのかも知れません。 英語ではBlack Forest cake と言い慣らわされている様です。

このお菓子は、ドイツが発祥で、フランスでも好まれた、と言うちょっと珍しい例ではないか、と 勝手に推察します。

因みに、このお菓子には、Kirschwasser と言う、さくらんぼを発酵させたアルコール度数の高い蒸留酒が香り付けに使われる事があります。飲用のリキュールではなく、主に製菓用の香り付けに使われる様で、ドイツ、フランス、イギリスでも使われる、との事。ドイツ語Kirschは、フランスでもイギリスでも使われる英仏に取っては外来語です。

ここで問題なのは、ケーキにあたる言葉が、この場合、トルテであるのか、タルトであるのか。 実は、ドイツ語のトルテ(Torte)と、フランス語のタルト(Tarte)、語源が同じでは無い、との説明がありました。しかし、「Torte」と英語の「torsion」は、語源は同じで生地の端を丸める、と言った意味が関係あるのでしょう。ラテン語の「torta」は「ねじられたもの」と言う意味がある様です。一方、タルトの原型は、古代ローマ時代に食べられていた「torta」(丸い皿状の焼き菓子)、との説明がありました。ラテン語の「torquere」(ねじる、巻く)に由来するのであれば、トルテと同じじゃないか、と思えて来ました。実際、ドイツ語のTorteとフランス語のTarteは、発音が変わっただけだ、との説明もありました。 実は、何が正解なのかよく解りません。

外見的・意味的なニュアンスの違いはある、と思われます。ドイツ語のTorteは、クリーム、フルーツ、ナッツ類をふんだんに使ったこってりとしたケーキと言う意味合いが感じられ、フランス語のtarteは、甘めの生地にフルーツやクリームを乗せたどちらかと言うと小さく軽く摘んで食べ易い物、と言うイメージでしょうか。 間違っているかも知れません。

しかし、現代のフランスでも、トルテとタルトは意味的に混り合って使われている、との説明もありました。で、この言葉が両方、日本にも入って来ており、専門のパティシエの方以外は、厳密な区別はないのではないでしょうか。どちらも外来語として、これまた外来語であるケーキの一種、となるのでしょう。

定義が曖昧な外来語は、日本語に取り入れられた後、どの様に語として、意味として変化して行くのか。千差万別とは言え、野放図に放って置くと、外来語としても、日本語化した語としても、混乱が増す、と思われます。旧国語審議会の様な機関が公式の診断を出すのか、それとも、AIが言葉と意味の範囲を定義し、そこから離れた度合いの激しい語を別の表現に置き換えるのか。語源を含めた元の意味に立ち返って、原語表示などすれば、AIは受け入れても、我々は混乱し日常生活の中で、言葉を気軽に使えなくなる、様な気がします。 我々の日常生活で使う言葉の整理・監視役は誰なのか。


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