【エッセイ】素数ゼミの夏
七月のおわり。
梅雨も明けて 夏も本番
朝の涼しい時間にする 散歩も
歩いてるうちに
どんどんモワッとした空気に包まれてくる。
行き交う人々。
小型の扇風機を片手に横断歩道 待ちにぼーっとする 高校生
首に最新の 携帯型のクーラーをつけている サラリーマン
全身にファン付きジャンバーをまとう 鳶職人たち
僕はというと
Tシャツに短パン、お気に入りのキャップで気持ち良く汗をかきながらいつもの散歩道を歩いている。
セミたちの声に耳を傾ける。
朝日が昇り日の光に導かれて
大人になったセミたちは
命の鼓動を歌声に変え子孫を存続させる。
北米には、ちょうど17年ごとと13年ごとに大量発生するセミがいて、「素数ゼミ」とよばれているらしい。
そのセミたちは 命の営みの99%を土の中で過ごす。
生命体に知恵が備わっているのだとすると
地球レベルの気候変動に立ち向かうためには
環境を破壊して豊かになることではなく
自然と一体となり 循環共生することが
生命体として何より大切な 知恵 なのだということに気づかされる。
日本は四季折々の豊かな文化の歴史がある素晴らしい島国だと思う。
しかし、今月9日までの1週間、地球は観測史上最も暑い週となったとか、海外のスポーツ選手が日本に来たときに「日本の暑さは異常」といっているとか、そんな話を聞くと、かけがえのないものが失われていっているように感じる。
僕たちも素数ゼミのような生き方になっていくんだろうか。
そんなことを考えながら
暑さ防止のドライ型ミストのある緑道を歩いていると、白い帽子の忘れ物がベンチにあった。
僕は家に戻り、クーラーの聞いた部屋でWeb会議に入り込む。
もう既に素数ゼミみたいに生きているのかも知れない。
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