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創作全般の覚え書き

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自分の、あるいは社会の創作の話題で反応してしまったことの覚え書き
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2018年12月の記事一覧

汎用性のあるものは強い個性を持っている

私の制作する着物や帯、その他染色品は、一見、個性的で使いにくい、他のものと合わせにくいのではないか?と思われることが多いようです。 なので「気になるけども、購入に踏み出せない」という方もいらっしゃいます。 しかし、ユーザになられた方々の多くは「これほど汎用性のある着物や帯は無い」とおっしゃって下さいます。 「個性的だけども、いろいろなものと合わせて引き立て合うもの」 というのは一見矛盾することですが、実際には「それが当たり前」なのです。 着物や帯は、基本的にそれ単体

工房で制作する染色品の色彩について

フォリア(当工房)で制作している染色品の色味は、非常に渋い色調から、草木染のようなナチュラル系の色調、西洋系ハイファッション系の色から、ケミカルな色まで幅広く使いこなしますので、業界の詳しい方々は「色に困るとフォリアへ」ということでご注文をいただくことが多いです。(他所では断られるような変わった素材なども良くご相談いただきます) 染料も、化学染料、天然染料どちらも使いますし、顔料や墨も使います。 フォリアでは、いろいろな色を使いますが、私が常に気をつけていることは「その色

全開のちょっと手前

いわゆる創作品で、青少年期の溢れんばかりの過剰なエネルギーに溢れた「自然なやりすぎ感のある作品」は良いものです。 その過剰なエネルギーの拙速感、不備、歪み、しかしヘンなところに老成感があったり、それが神経にゾクゾクするような刺激を与えてくれます。 しかし、もう少しキャリアを重ねると、それだけではダメなんですね。 例えば「カッコいい」「クール」「シュッとした感じ」という文脈のものを制作した場合に「モロにそれ」なのは、いただけません。 あるいは「やり過ぎ」なのはいただけま

絶対的に正しい色は存在しない

何かを制作するにあたって、そこに使う色はあらゆる選択肢がありますが、私は色というのは、最終的には「コミュニケーションの手段である」と思っています。 色は、その場の光によってまるで違うように見えます。 青が緑になってしまうぐらいに、光で変わります。 それと「眼の個体差」の問題も大きなものです。 人の眼は、それぞれの特性を持っていて、同じ色を同時に見ていても同じように色が見えていないのです。意外なほど個体差があります。 色に関わる仕事をしていると「いかに人によって眼その

プロの仕事に偶然などないですよ

上の写真の布は、イラクサの布に、ロウを使った染色技法で独特のニュアンスを出したものです。 生成りの部分は、何も染めていない布のままで、金茶色のところは、ロウによって文様を染めた部分です。 まるで、硬い樹皮のような味わいが出ていますが、もちろん布ですから柔らかいです。 この仕事では、あえて何も染めていない布の部分を残し、染めることによって、まるで硬い樹皮のような味わいの部分と同時に観ていただくことによって「布の魅力の振り幅を味わっていただく」のを意図しました。布の染まって