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うまい店は息をひそめる

 僕が求めている店とは、これだ。

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 今週は大学の先輩がハノイを訪れており、彼の友人の韓国人の方もいっしょに行動していた。
 深夜まで飲んだあと、韓国人の方がつれていってくれたベトナム料理屋は遅い時間の平日だというのににぎわっていた。路上に面した席に座って、雨あがりの涼しい夜風に3人で当たる。
 出てきたのは、春雨の炒め物、牛肉とウリのチャーハン、そしてフォー。なにげなく食べてみると、そのすべてがとんでもなくうまかった。ほかのふたりを差し置いて、僕のはしばかりが進んでしまう。
 酔っぱらっていたのとふたりにおごってもらってしまったために、具体的な金額は覚えていないが、大学の先輩がレシートを見て「安いな」とつぶやいていたのを覚えている。
 そう、僕が求めていた店は、これだ。


◆ ◆ ◆
 先々週は、ひょんなことで知り合った日本人のおやっさんとともに夕飯を食べにいった。
 1件目はおやっさんも初めて行くという中華料理屋でもちもち面のラーメンのような料理を食べて、2件目はシンガポールのチキン料理屋へ。
 1件目もおいしかったが、2件目がべらぼうにおいしかった。
 ゆで鶏と焼いた鳥。どちらも身がとてもやわらかくて、味つけも甘からくておいしい。腹もふくれている2件目だが、はしが止まらなかった。
 値段もふたりで分けると考えれば、かなり安かった。
 そう、僕が求めていた店は、これだ。

◆ ◆ ◆
 自身の行動量が圧倒的に少ないなと思うのは、だれかに安くてうまい店を紹介してもらったときだ。それも、ネットに掲載されていないような店である。
 僕は、食べることがとにかく好きだ。食べることが、昔からの幸せだった。しかし、自分だけの力で見つけた、だれかに紹介できるような安くてうまい店は、正直まだない。
 これじゃあつまらないなあとは思っているのだが、今日だって夕飯は日本から持ってきたサトウのごはんとふりかけにインスタントみそ汁を添えて終わりだった。
 行動の一歩が踏み出せていない。

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