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誰もが揺らぎの中を生きている。その事実と一緒に“よく揺らぐ”には。
こんにちは、ゆきちかです。児童養護施設で心理職をしながら、最近お出かけしたチェルノブイリツアーの感想文を書いています。
さて、このツアーの感想文もいよいよ大詰め。それにしても筆の進みがのんびり過ぎやしないか、というか筆を取るまでに何日かかってるのか、と自分ツッコミを入れています。もはや「最近お出かけした」とも言い難いw
何せ自分で書きたいと宣言したテーマが大きすぎたのです(爆)
えーと、何でしたっけ?
誰もが揺らぎの中を生きている。その事実と一緒に“良く揺らぐ”には。矛盾を抱えて生きる姿を使って、子どもと対峙する瞬間のアート。次に来る世界に対する「親」の態度を模索する。
いや、やっぱりなんだか壮大!どこからどう書いていいのやら。
とりあえずこれはゲンロン0の最後のページに書かれていた文章を意識して書いた項目だったはず。
“子として死ぬだけではなく、親としても生きろ。”
そう、この言葉。世界から与えられた通りの二項対立の軸線上に生まれ込んだ「子ども」として死にゆくだけでなく、新しい世界やそれを作り出す力を持った偶然の産物に対して「親」の態度を示し、生を全うする道を見出すこと。偶然がもたらした、良くも悪くもある結果を引き受け、更に先に起こる良いことと結びつけてしまうプロセス。可能性に対する態度形成について自覚的でいること。
んー、自分の中に落とし込んだ言葉として言えてる気が全くしない(笑)
けれど、この言葉を持ってゲンロン0を読み終えた時、ストンと腹落ちした感じがして、ジタバタしている自分の足が地面に接した感覚があったのを覚えています。
今回は、私がツアー内で最も揺らいだ瞬間を振り返り、自問自答に励みます。どうぞお付き合いください。
揺らぎを体験するツアープログラム、ここに極まる
ツアー5日目、チェルノブイリのゾーン内のプログラムが終わり、既に目的の大半を達成したかのような気分でスタートしたのですが、目的の周辺こそ観光がもたらす誤配の醍醐味。ツアーの中で最も揺らいだのはこの日であったと振り返ります。
午前中はソフィア大聖堂にて10世紀まで時を遡り(めっちゃいい天気!)、
午後は大祖国戦争博物館にて、第二次世界大戦の記憶の中に入り(ほんとにもういい天気!)、
出口では現在進行形で戦いが行われている東部戦線の話に着地し、
数日のツアー体験と、脳内の時間軸移動の結果なのか、「ここはいつのどこだ!?」という感覚に飲まれていきました。
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↑戦争中の国で、夏休み中の子どもたちが戦車に登って遊んでいる。
付き添いの大人たちなのか、ちょっと離れて見守っている。
(空がめちゃくちゃ青い!!)
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時空間の乱れを抱えた私にトドメを刺したのがマルシシェンコさんの写真学校。及びその学校が入っているビルディングの洗練された空間…!
ビル内のワンフロアが丸っとくり抜かれた空間があって、
おしゃれカフェスペースを抜け、奥の扉を一枚隔てて写真学校。
↑マルシシェンコさんの写真学校。
マルシシェンコさんはチェルノブイリの事故当時からジャーナリストとして写真を撮ってきた経緯を持つ方で、現在は専門家が少ないウクライナという国で写真を学びたい人向けに学校を開いています。
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マルシシェンコさんがチェルノブイリに関わった経緯があってツアーのプログラムに入っていたわけですが、上記の日程をこなしていた私はこの異空間っぷりにすっかり度肝を抜かれました。
学生さんによる作品発表、マルシシェンコさんの撮った写真を通して再度訪れるチェルノブイリ、あとは休憩時間に見たアラーキーの写真集、そして最後の一撃として働いたのは、自宅から送られてきた息子くん(1歳)の動画。
とてつもなく無邪気なダンスがもたらした何か。
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↑その動画のスクショ。この頃踊りを覚え始めた。かわゆい。
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ちなみにアラーキーの写真集は初めて見たのだけど、完全に油断していて、私の知らない東京の姿と時代背景、撮影者と被写体の関係(少し前話題になっていたようで、説明してもらいました)に勢いよく跳ね飛ばされた感じでした。動揺がそのまま反応に出てしまい、ちょっぴり恥ずかしい思いをしました(笑)
で、動揺を立て直しきれない状況に飛び込んできた我が子。
チェルノブイリ、ウクライナ、ヨーロッパ、世界大戦、日本、東京、自宅、子ども。時間も空間も繋がった出来事で、その連続性の一端である自分の子ども。自分の子どもの拙くて無邪気なダンスが、ものすごくおぞましい拡がりを纏って見える。何とも不気味。価値観の転倒ってこういう体験なのかしら?すっごい目が回る!とプチパニック状態になりました。すっかり不気味な感覚に飲まれて、内心半べそ状態になりながらも、表面では楽しげな観光客を振る舞い、何とか平静を装っていたように思います。
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↑上記日程をこなした後のフェアウェルパーティ。
脳内の大混乱を余所に、旅を共にした仲間とワイワイするのは楽しかったし、終わりを迎える寂しさもありました。
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半べその私と再編集の余地ある世界
私が体験した内心半べそ状態をできるだけ言葉にしてみようと思います。
自分が動揺していることはわかっても、自分が今どこにいて、どんな状況にいるのか、安心できる方法はあるのか、何を頼れば不快を取り除けるのかが分からない。小さい子どもが愛着対象である親を求めるように、せめてこの感覚が恐れるべきものか否かの判断をしてほしい。言葉にはならないけど、それを読み取った上で、納得できる説明をしてほしい。
…と、まあ、とても「子ども」的な感覚です。
じゃあ「親」がいてくれるとしたら、どんな態度を取るでしょう。不安に取り乱す子どもを叱って律するか、不安に巻き込まれて同じ「子ども」になってしまうか、はたまた“穏やかで冷静でユーモアのある親”かのように「大丈夫だよ」とニッコリ笑って、頭を撫でてあげたりするものなのでしょうか。
ツアーからもう三ヶ月近く。内心半べそ状態の言語化もやっと最近できたのですが、これに対して自分で何をどうしているのかわからず、本を読んだり、仕事をしたり、子育てをしたりしながら、自己分析に励む生活をしていました。
とりあえず、物理的な親は目の前にはいないので(というかいたとしても頼らないなあ…)、“穏やかで冷静でユーモアのある親によって安心感を取り戻す子ども”かのように振る舞って、同時に「親」という態度形成の試行錯誤を行っています。
で、思ったのは、このような態度形成、あと調節のプロセスこそ「親」の正体だったりするのかな?ということ。
「子ども」が自身の内の一部を「親」化するプロセスがあるとして、おそらくは、あるポイントごとに自分が歩んできた文脈を再編集する作業が必要だと思います。自分なりに“親かのように”の用例集を編んでいる、みたいな。そしてその用例集を用いて「親」かのような態度を示し、偶然を取り込んでいくプロセスの中で結びついた出来事から“良いこと”を抽出して生きる糧にしていく。糧を別の「子ども」にも分け与えて、育つお手伝いをしていく。
意図も不図も混ぜこぜの世界の中で、矛盾を抱えながら、揺らぎ続けながら、自覚なく何かの芽を摘んでしまったり、育んでしまったりしながら、自覚的な態度形成に挑むプロセス。とてもクリエイティブな作業であると共に、「再編集の余地あり」とする世界観は多種多様な揺らぎの中にいる人を肯定する見方にもなりそうだ、と希望も感じます。
だから、自ら揺らぎに行ってしまおう。
自分を揺るがす何物かに出会ったら、
「キタコレ!」と言って揺らいでしまおう。
いやはや、長くなってきましたし、この記事での着地点はここにしようかと思います。「揺らぎ」に対する対処が「揺らげ」というのが面白いなあと思います。精神の免震構造、みたいなことを言ってる人がいたら勉強したいなあ。既に何かで見聞きしたような感じもするのだけど何だったか…。
ちなみにこの着地に至るまで、ここ一ヶ月ほど、孟子について勉強したり、デトロイトの実況動画見たり、「夜と霧」のオーディオブックを聞いたりしてました(これまでなかなか向き合えなかった「夜と霧」を耳で受け止める、真夏の通勤車内の暑さを忘れさせる体験になりました…)。
孟子は人の善性の成長を植物の成長になぞらえて説明していたらしいのだけど、「親」という漢字の作りが「立って木を見る」という形になっているのが何だか孟子っぽいなあと思いました(関連があるのかは調べてないけども)。
どうやら今回のツアーのような超詰め込み型のプログラムは次回では解消されてしまうとか(どうなるかわからないけど)。だとしたら、今回行っておいて本当に良かったと思います。悶々と思い悩む日々は、正直面白かった!
次の記事では、チェルノブイリツアー初見プレイで残した疑問、やりそこねたこと、次に行くならこうしたい!と思っていることをまとめようと思います。
最後までお読みいただいた方、本当にありがとうございました!
ゆきちかさん
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