消滅世界 読書感想文

消滅世界 村田沙耶香


夫婦の性行為が近親相姦だと言われ、子供は人工授精で生まれて、夫婦以外に恋人がいるのが普通。むしろ夫婦に恋愛感情を抱くのがおかしい。
という世界の話。


この設定を知って絶対面白いと思って、読んでみた。以下ネタバレあります。



愛とか性欲とか家族とか命とか。何が当たり前で何が異常なのか何が正しいのか何が本能なのかを突きつけられた。




海外のどこかの国では一夫多妻制が当たり前だったり、日本でも地域によっては祭りのあとに乱交するというのがつい数十年前ではあった。
そう考えると、私たちがふだん当たり前に思っている「不倫したらダメ」とか「色んな人と性行為したらダメ」みたいな感覚は果たして正しいのか?という気持ちに感じる。

この本を読んでいると、その気持ちをさらに強くさせたという感じ。兄弟や親子で性行為をするのは気持ち悪い、近親相姦だという感覚があるなら、夫婦のそれも近親相姦という考えもなんとなくわからなくもない。セックスという行為が必要ない、相手を自慰のためにりようする行為だと考えるのが当たり前の世界。当たり前って何なのか、人間の本能って何なのか、性欲って何なのかと思った。



小説の中に出てくる楽園は、子どもを社会みんなで育てるというシステム。きっと非行に走る子が少なかったり、貧困で大変な思いをする家庭もないとても幸せそうな世界。だけど、とてもシステマチックで作られた人工的な世界で、そこには一人一人の意見とか個性とかない。生まれたての子はまるで畑に並ぶキャベツのよう。どの子が誰から生まれた子という感覚がないし、畑で死んでも新しい子が畑にやってくる。社会をうまく回すために、人口が増えすぎたり減りすぎたりしないように、適切に人を管理していく世界で、ゾッとしてこわいなと思った。
とはいえ、現代のように自由に出産できるということは、貧困の中や親からの暴行に耐えながら生きていくしかない子も存在するということ。
うまくまとめられないけど、結婚とは愛とは不倫とは、まだ頭の中で考えている。

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