この時代にFTMが何故水商売に集まるのか?そこから見えてくる本当のLGBT容認とは何か?
僕は女から男に性別を変えたFTMトランスジェンダーの鈴木優希。1980年名古屋市生まれ。
仕事は地元名古屋の繁華街錦三丁目で同じ性別違和LGBTQのFTMを主に雇用したBAR VenusビーナスとFTMゲイを公言している店長に任せた系列店JIRO‘Sジローズの2店舗を経営している。
今力を入れている事
それは「発信」すること。
今はTikTokに力を入れている。
今まではどちらかというと繁華街の中でも「ニューハーフ」さんに押され気味のFTMBARいわゆるオナベバーと呼ばれる僕たちの世界。
もちろん女から男に変わっているとはいえ、派手さがないことが原因だろうか。
店を構えて16年。やっとこの街錦三丁目では「オナベバーといえばどこ?」と聞いたら「Venus」と名前を出していただけるようになった。
商売的にはそれだけで十分なこと。
TikTokで発信しても、TikTokを見ている層はお酒も飲めない若い世代、店に来れない他県、海外の方に対しては的外れなのではないか?始めた時はそんな声もあった。
「知ってもらいたい」ただそれだけ。
2022年の今、LGBTQと言う言葉が溢れる時代となった。
決して珍しい存在ではない時代になったし、比較的オープンにカミングアウトしている人も多くなった。
でも、やはり今の時代でも悩んでいる人は多い。
何故僕がそう思うか?
それは水商売に流れてくる人の数だ。
僕がこの水商売という世界に興味を持ったのは「ここしかなかった」から。
自分らしく働ける場所を選ぶことが出来なかった。
今は昔と違い選択肢が広がっているのになぜこんなに多くの人が水商売に辿り着くのだろう。
LGBTQを積極採用。受け入れてくれる企業様も多い。
その中でなぜ僕の店Venusに辿り着いたのか?
実際に面接で聞いて見ると…
「出会いが欲しい」「お酒が好き」「彼女が欲しい」などのハッピーでシンプルな理由の子も稀にいるが(笑)
一番多いのが「自分らしく働きたい」という理由だ。
驚くことに昭和、平成、令和と時代や背景は変わっても求めているものはなにひとつとして変わっていない。
それだけ、LGBT容認といわれるこの時代にもまだ多くの人が生きづらさを感じているということ。
この理由でVenusや系列店JIRO'Sに面接を受けに来る子は年々増えている。
・「LGBT」とわかった上で採用してもらい昼職で働いていたが、自分らしくいられず居場所をなくした。
・受け入れてもらって働いているが、逆に気を遣われすぎて腫れ物に触るようにされて居心地が悪い。
・最初に「女」として雇用されたので、受け入れはある会社だけれども自分自身が今さら職場の人にカミングアウトすることが出来なくて会社を辞めた。
など、セクシャリティを受け入れては貰っているが「自分らしさ」や「思っていた環境」とは違う事が多いようだ。
次に多い理由は
治療のお金を貯めたいという理由。
FTM女から男の場合
胸オペ
大きさによるが60万~100万 1度で思い通りにならない場合は修正費用もその都度かかる。
性別適合手術の費用は、国内、タイによっても違う。内摘のみで100万~150万。
陰茎形成 リスクが大きいのと陰茎形成をしなくても「男」に戸籍変更は出来る。
僕は陰茎形成をしていないのでサイトで調べて見たら300万という記載があった。
ホルモン注射
戸籍を男に変更すると保険がきく場合もあるが、通常は1回の投与で2000円から3000円程度が相場だろうか。それを個人差はあるが僕の場合は3週間おきに行っている。
これは生理を止めることを目的に行っている人も多いが、戸籍を変えた僕たちはどちらのホルモンも出ない為、このホルモン治療は生きている間、一生必要な治療だと言われている。
それに併せて定期的に血液検査も必要となる。
※費用は病院によっても保険適用か否かでも変わってくると思うのであくまで参考程度に。
それにしてもやはり何百万円単位のお金はかかってくることは確かである。
仕事も術前術後は長期休まなくてはならない。
お金と時間を考えると昼間の仕事では先が遠いと夜の仕事に可能性をかけたと飛び込んでくるようだ。
この治療費目的の理由の子は圧倒的に20代が多い。
早く戸籍を変えたい!という思いが一番強い年代であるからだ。
しかしこれも、そんなに甘くはない。
夜の商売。水商売をしたからといってみんなが稼げるわけではない。もちろん短期間で稼いだ子も、継続的に月に50万以上稼いでいる子もいるがこれは「売れた」からだ。
水商売でも、どんな仕事でも同じ。
努力をして結果を残さないと対価は得られない。
「オナベという存在だけでは稼げない。」
性別を変えて自分らしく働きたい!男として人生を生きたい!
それは僕たちFTM、
性同一性障害を抱えていきている人たち全ての当然の願い。
もちろん治療には慎重さが必要だが、人生は有限であるから「スピード」も大切だと僕は考える。
お金や時間に余裕が出来る40代、50代に戸籍を変えるのも良いが、やはり体力的にリスクも大きくなる。そして何より若さの可能性には敵わない。
男として就職、家庭を持つ、子供を持つこと。
やってみたい事は僕たちLGBTQ・FTMだってみんなと同じようにあるからこそ、心と体の性別を早く一致させて「自分の人生」を生きたい。後悔のないような生き方をしたい。
今の時代。これからの時代に求めること。
それは、LGBTQを受け入れたから終わりではなく。
その後のサポート体制を作っていただきたいと思う。
職場でのカミングアウト。その後の人間関係。
稼げるようになるためにどうすればいいか?治療に向けての休みの取り方。
もちろん一方的ではなく、こちらLGBT側にも覚悟と労働力がいることを当事者も忘れてはいけない。
ギブアンドテイクの精神が大切。
水商売に「ここしかないから」の消去法ではなく、「この仕事がしたい!」と面接に来てくれる子が増える世の中になることが本当のLGBTに対しての理解と容認。
時代が変わった!と胸を張って言えることなのではないだろうか。
2022.7.19(火)LGBT社会人交流会「BRUSH UP」第10回無事終了。沢山のご参加ありがとうございました!