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僕はLGBT。女から男に戸籍を変えたFTMトランスジェンダー。鈴木優希41歳。

LGBT社会人交流会「BRUSH UP」の代表としてセミナー活動をしているが、本業は地元名古屋の錦三丁目で同じFTMの子を主に雇用したBAR Venusの経営をしている。

その店Venusは今年の3月で15周年を迎えた。

下を育てる苦悩

26歳で始めた自分の店。
若い頃は自分が居れば大丈夫。絶対的な自信と勢いがあった。

スタッフも同年代だったこともあって
「なんで出来ないの?」
と実にイヤーな経営者だったと自分を振り返る。

圧倒的に経験不足の僕だったが、お客様に恵まれ、何とか軌道に乗ったVenus。
調子に乗った僕はオープンして3年後、欲を出して多角経営に乗り出した。

オナベホストクラブの大失敗


当時のホストブームに目をつけて、大箱を借りて「東海地区最大級のオナベホストクラブ」と謳い同じ錦3エリアにド派手に開店。

その矢先のリーマンショック到来、営業の規制が厳しくなったという運のなさもあったが、
トドメはスタッフの激減。

15人居たスタッフがたったの3人になった。
元々のVenusも合わせて2店舗合計の3人。

一組お客様がみえたら、もう次は入れられない。。 

(どんな店ー((((;゚Д゚)))))))笑)


テレビ取材も虚しく、半年も持たずにあっけなく閉店。
20代の僕には大きすぎる借金と支払いだけが残った。

見事な大失敗だった。

そこからまたスタート地点のVenusでリスタート。

忘れていたハングリー精神を取り戻し、しゃかりきで借金を完済し、15年前と同じ今の場所で無事に15周年を迎えることが出来た。

この経験から学んだことは、

自分1人じゃできないことがあるということ。

当たり前のことが、自意識過剰で自分ばっかりだった僕にはわからなかった。

1人は1人分の仕事しかできない。

どれだけお客様を呼んでも身体はひとつ。

店を開けてくれる人がいて、準備してくれる人がいて、接客をヘルプしてくれる人がいて、お酒を飲んでくれる人がいて、片付けをしてくれる人がいて、たくさんの力を合わせてやっと、お客様に満足して頂ける「卓」になる。

「僕の店だ!」なんて裸の王様でやっていた僕。

当時のお客様にもスタッフにも申し訳ない気持ちでいる。

人の大切さ

今Venusに居てくれてるスタッフは、若い。

今の代表は、Venusがオープンした15年前は小学生だった。

その他のスタッフも20代が多い。

一回り以上離れたスタッフたちと今も一緒に現場に立っている。

経営者と言えば格好がいいけど、人に任せてお金の計算だけ出来るなんてことは遠い夢の世界。

自分が居ないと成り立たない店にしたのは自分自身だった。

歳を取ったからと言って誰かに稼いでもらうなんてことは都合のいい話でしかないんだと日々痛感。

働いてくれるスタッフ達の気持ちを、年が離れているからこそ理解出来た。
僕が未熟がゆえの時差。

若い頃は、体育会系の部活の上下関係のような。
僕もやってきたんだからやってよ。という思いでいた。しかし、それは通用しなかった。

沢山の子が色んな形で僕の前から去って行った。
裏切りと思って散々傷ついたけど、今ならわかる。
スタッフにとって、いくら性別違和を理解した職場で「自分らしく生きる場所」と言っても、所詮自分の店ではない。
熱量は違ってあたりまえ。
そして、「辞める」という選択肢がスタッフにはある。それは当然の権利である。

僕だってそうだった。

独立前、どんなに良い役職を任されてもどこかで「人の店」だった。
自分なりに当時も責任感を持って仕事をしていたつもりだったけど、
「Venus」という自分の城を持って、これまでがどれだけ甘い考えでいたかがわかった。

そんなもの。

人生は順番だ。

昔の自分はすぐに自分の考えをわかって欲しかった。押し付け。強制。

なんでやれない? 給料分稼げ。それが仕事。

やれよ。

でも今は違う。

貴重な人生の今この瞬間を
僕の店Venusに居てくれることに感謝している。

もちろん綺麗ごとだけではない。

労働力として店にマイナスを与える人材には有無を言わさず去ってもらう。
来るもの拒まず去る者追わず。
いろんな経験をして、なんだかドライになってしまった。

でもそれでいい。

ひとつひとつを信念を持って接していれば、いつかわかってくれる時が来る。

それが自分の店を持った時なのか、歳を重ねた時なのか、家族を持った時なのか。

もしかしたら、わかってくれないまま死んじゃうかもしれないけど。。

でもそれでも良い。

僕も誰かに許されて今がある。

昔の雇い主やお客様に言われたことが今わかる。

(遅いけど...)

その人たちにはもう返せない関係になってしまったけど、その思いを今自分がしている。

今度は僕の番。

子育てというものをした事がないから偉そうなことは言えないけど、それに近いのかなとこの頃考える。

親の小言が効いてきたときには親はいない。

でもそれをまた自分が「親」という立場になってわかる。そして自分がしてきたことを子供にされる。じゅんぐり。

順番なんだ。

人生はリレー。

繋げてもらったものを次の世代に繋ぐことが使命。そう思っている。
与え続けること。ダメな事はダメだと教え続けること。

諦めかけることもあるけど、僕は諦めない。

育てるんじゃない。どれだけ期待せずに愛せるか。

※2021.3.12(土)LGBT社会人交流会「BRUSH UP」第6回無事終了。沢山のご参加ありがとうございました!

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