乳首がない。トランスジェンダーとなった
僕はLGBTセミナー講師、名古屋市中区錦3丁目でオナベバーVenusを経営するトランスジェンダー「女」から「男」のFTMの鈴木優希です。
性別変更をして戸籍上も「男」になっているので、身体は胸を取り子宮卵巣を取り、定期的に大学病院での男性ホルモン投与を行っている状態です。
そして、今回は題名にもあるように「胸オペ」の事について書いていこうと思います。
乳首どこ行った?
元々、Fカップで胸は大きかったので、胸オペの費用は90万。
院長を指名すると+10万円との説明も受けた。
※胸の大きさによって費用は変わります。小さいほうが安い。
ちなみに、オナベバーVenusのスタッフでCカップの子は70万、Aカップの子は50万前後でした。(病院によって差があるのであくまで参考程度に)
僕は最初に子宮卵巣全摘の手術、そしてホルモン治療、一番最後に胸を取るという人とは真逆の流れで行ってきた。これまで、美容外科、海外での手術は、視野に入れてなかった為、最後の胸オペだけが僕にとって「初美容外科」での手術となった。
ネットでの口コミや広告を見てGIDの世界で「有名な美容外科」に決めた。
過去に僕より5歳ほど年上のオナベの方の胸オペ済みの胸を見せてもらったことがありますが、その方の傷口は、胸にガッツリ真一文字の傷でした。
当時は、胸のふくらみが無くなれば見栄えは二の次。のような扱いだったようです。
今は真一文字の傷はなく、TATG法と呼ばれる経乳輪的乳房切除術が多く適用されています。僕もこの方法でした。
傷は乳輪の真ん中を横に切って、そこから乳腺を取るという方法で、傷は小さく、乳輪の色でわかりにくくなり、「傷どこ?」というレベルです。
これだけでもだいぶ「美容=見栄え」という部分も進化したと言えるでしょう。
僕の一番の心配は「麻酔」でした。子宮卵巣摘出手術の時はもちろん全身麻酔で、術後の痛みはあったものの、手術自体の怖さはなかったんですが、胸オペは局所麻酔。
意識がある中で行われます。これがビビりの僕にとっては一番の不安でした。
そして手術。。。
実際に手術中は、患部はグリグリ。痛みはないけど、変な感じが続く。
先生と看護師さんは冷や汗の僕は全く無視で、手術とは全く関係ない雑談が永遠に続いた。先生たちにとっては「毎日」の作業かもしれないけど、患者にとっては「非日常」の特別な事だという不安な気持ちに寄り添って欲しいと切に願う。
「大丈夫ですからね」の声かけだけで患者は「安心」するのに。
そんな感じで何とか手術が終わり、1泊入院して帰る流れなので、その日はそのまま美容外科に泊まった。痛みはどんどん増した。そんな中、何時間かに一度先生が胸を押しにくる。血を抜くため? 痛みで朦朧な状態だったので細かい時間の感覚は記憶にないが、深夜にそれに来た先生は「まさか、酔ってます?」のノリでとても不安と嫌悪感を抱いたことを覚えている。
それまで大阪医科大学付属病院、中部労災病院、犬山中央病院などの大きな病院での治療、手術だったので「美容外科」とはこんなことが「普通なの?」とそのギャップに驚いたと同時に胸オペという身体を変える大切な手術を軽視し、慎重にならず簡単に病院を決めた自分を悔いた。
そして肝心の胸の切除の結果は・・・
「失敗」Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
先生も病院側も非は認めなかったが、僕は左胸の感覚を失った。神経が切れたらしい。触られても自分の身体じゃない感じ。麻痺しているような。
術後の診察の度に感覚が一向に戻らないと先生に訴えたが、「ビタミン剤を飲めば2.3年後には戻る」と言われて毎回ビタミン剤を貰うだけと日々が続いた。
時間が経つにつれ、素人の僕にもわかった。「何年たってもきっと感覚は戻る事はないんだろう」と。だって、神経が切れているんだもの。実際に、いまだに感覚は戻っていない。
そして「乳首」は退院後、かさぶたとともに取れた(笑)
忘れもしない。その日は他店のオナベバーに飲みに行っていた。飲みながら、かゆいなと無意識に掻いていたんだろう。気付くと目の前の店員の子が僕の胸元を見て固まっていた。
僕が着ていた白いTシャツが血だらけだったのだ。そして、乳首は取れてベルトの上のお腹の所で止まっていた。
鈴木優希の左乳首はそのオナベバーの灰皿に置いてきた。
乳首が取れると聞くと、驚かれると思いますが、
血行不良のせいか、術後に乳首がとれるという話はFTM胸オペあるあるらしい。
僕は左胸の感覚は手術で無くなってしまったし、もはや乳首があっても、何も感じることはなく形だけのものだから、取れて落ち込む事はなかった。
それより、取り残しっぽい左右の脇の下の脂肪と起立をした時に乳輪の傷口が八の字(困り顔のような図)になる事が気になった。
高いお金を払って、痛い思いをして、胸がただ平らになったという事実だけで、決して人前で脱げる身体にはならなかった。新しいコンプレックスを背負うことになってしまったのだ。
(これについては後に別病院で修正手術をすることになるので、また別の機会に詳しく書くことにします。)
FTMにとって、胸オペは子宮卵巣全摘手術よりも通る人が多い道で珍しい事ではなくなっているが、体にメスを入れる事の、事の大きさを今一度考えて挑むべきだと考える。
無くしたものは、もう戻ってこない。
鈴木優希のセミナー活動、LGBTについてのコンテンツを掲載しているオフィシャルサイトも是非見て頂けたら幸いです。
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