自然とは神が作った第二の書物「自然という書物」展
4月29日(土)は町田市立国際版画美術館の「自然という書物」展へ。
この日は美術館のロビーでこの展示に関連するプロムナード・コンサートが開催されると知り、それも楽しみにしていました。
演奏はDuo Iris(デュオ・イリス)というヴァイオリンとビアノの女性デュオ。
展覧会にちなみ「音を楽しむ 自然と楽しむ」というテーマで演奏してくれたのは
エルガー「朝の歌」、
サン=サーンス「白鳥」、
コルサコフ「熊蜂の飛行」、
ドビュッシー「美しい夕暮れ」、
ジョプリン「ヴァイオリンのためのラグタイムより」、
サラサーテ「序奏とタランテラ」。
ピアニストの後藤さんがこちらのピアノを弾くのを楽しみにしていたとおっしゃっていたので、ピアノも知る人ぞ知る良いものだったのかもしれません。
吹き抜けのロビーに響く音楽が心地良いひとときでした。
最初の1曲の演奏中、奥の部屋から引き裂くような幼児の泣き声が聞こえていたのですが、その曲の後の挨拶でヴァイオリニストの真野さんが
「先ほどは娘が泣いてしまって」
とお詫びされるのを聞いて、泣いていたのは真野さんのお嬢さんとわかったのでした。
また、この日、真野さんはふんわりしたドレスをお召しだったのでわからなかったのですが、実はあと少しで妊娠10ヶ月目となるタイミングだったとのこと。
「今回のお話をいただいた時は心配しましたが、無事に当日を迎えられてよかった」
とおっしゃるのを聞いて驚きつつ、元気な赤ちゃんの誕生をお祈りしました。
今回の展覧会は、15-19世紀西洋において自然がどのように表現されているのか、西洋の人たちがどのように考えていたのか、がテーマ。
「自然という書物」という展示会タイトルも展覧会用に作られた言葉ではなく、キリスト教では一般的な考え方なのだそうです。
15-19世紀は西洋においてキリスト教が支配的で、「自然とは神が作った書物」という自然感が長い間支配的で、自然を読み解くことによって神に近づく、という考え方があったとのこと。
「自然とは神が作った第二の書物」(第一の書物は聖書)という言葉もあるそうです。
展覧会の最初の方には父なる神が天地、世界を作り上げている様子を
描いた作品があり、手だけが描かれた部分があるのですが、これがまさに神の手(ゴッドハンド)なのです。
これがこの展覧会の最初にあるということはまさに当時は自然も神が作り出したものであることを示している訳で、日本人の自然の考え方との違いを強く感じました。
そのような神の創造物だった自然が次第に主役として描かれるようになるのですが、最初はだんだん素朴な、単純な線で描かれていた絵が、次第に複雑なものになっていきます。
技術も銅版画になったり、多色刷りになったりしてどんどん精密になっていきます。
自然の姿も絵画の中で背景の意味を記すものだったり、その時代ならではの意味を持つものとして描かれ、主役ではなく、物語を彩る脇役として画面を彩っていたりするのです。
描かれているもの、表現の多彩さを堪能いたしました。
また、1859年のダーウィンの「種の起源」など、希少な本の原本も展示されています。
多くの本が開いた状態で展示されていますが、その角度が難しく、気をつけないと
ばきっと背表紙が割れてしまうので、設置業者さんが苦労して展示されているとか。
展覧会は様々な方の努力や苦労の上に成り立っているのですね。
同時開催の「日本の自然と多色摺木版」では日本の版画の優れたデザインや
美しい色合いに見とれました。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
*展示物の作品は全て写真撮影OKの作品です。