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音楽のルーツ、名盤のご紹介-03 / 80〜90年代のUKロック、シューゲイザー
80〜90年代のUKロック、シューゲイザーの魅力
この年代辺りからアナログレコードからCDを買うようになる。特に好きなバンドが多く、今の自分を形成するベースになっているかもしれない。
The Smiths / "The Queen Is Dead"
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1986年3rd.アルバム。80年代のUKロックシーンに大きな爪痕を残した彼ら。私的にはほぼSmithsが音楽生活のベースを占めていたと言っても過言でないけれど活動期間は意外に5年、4枚のアルバムをリリースしただけだった。
ジョニー・マーの美しくポップな曲にモリッシーの独自のメロディと歌詞が乗ることで彼ら独自の世界観を作り上げ、ライブで花束を振り回しながらのクネクネダンスが彼のスタイルとキャラを確固たるものにし、そして信者と呼ばれるファンがステージに登ってハグをしたくなる気持ちにさせられるのだ。
モリッシーのボーカル(メロディ)は独特で他者が真似出来ない様なオリジナリティ性があり、だからこそオケ(作曲者)がマーから以降変わっていってもモリッシーがメロを乗せている以上、やっぱり彼の独自性は貫かれ今も変わらず健在なのだ。
そして私が何より影響を受けて他のはモリッシーの歌詞である。
アルバムのタイトル「The Queen Is Dead」もそうだし、イギリス労働者階級の視点で、究極に拗らせながらも文学的な表現が私の心を鷲掴みした。The Jamもだけど労働者階級の叫びは自分の生い立ちに起因しているからか、私にとってパンクバンドであり、どうしても惹かれてしまう。
The Smithはフロントマン2人の不仲で解散したが、こうした素晴らしい音楽を作っているバンドって、それが故に関係性を壊してしまうボーダーラインギリギリのところで作品を作ってもいて、そのコップにヒタヒタに注がれている水が溢れてしまう瞬間がある。そういう意味ではバンドやるって刹那的で奇跡的でもあるなぁと今も思う。最初にマーがモリッシーに声をかけ生まれたスミスというバンドのこのアルバムが聴ける事に感謝。
因みにマーの解散後に入ったTHE THEも聴いたが、そこまで心にハマる感じもなく結果1枚のみのリリースに留まり、後述のモリッシーの方を自分は聴き続ける事になる事も面白いなと思ったりする。
やっぱりThe Smithは色々語り尽くせない。
他にも大好きな曲がある。
それはまた別の機会に紹介しようと思う。
Morrissey / "Bona Drag"
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1990年リリースのコンピレーションアルバム。
"Interesting Drug"、"Everyday Is Like Sunday"は今でも私にとって名曲。
The Smiths時代も好きだったし、解散後マーのギターがなくなって淋しい気持ちの中ソロの音源を聴いたが、モリッシースタイルは健在で今でもこんなに好きなボーカリストはモリッシー位だとも言える。彼にしか作れない特有のメロディとウェットな感情表現だったり、鋭い社会批判を交えた歌詞も今の自分を作っていると思う。
観客がステージに上がってハグするのが名物であったりするのだが、それをすると警備員に阻止される。かなり前に彼のライブを見に行った時、知り合いがそれをやって別日にまた会場に入ろうとすると向こうから警備員がやってきてそのままその彼は連行されコンサート終わるまで監禁?されてライブを見れなかったという話がある。
それほど厳しい中、モリッシーは歌いながらステージへ上がってこようとする観客を押さえ込もうとする警備員をマイクでボコボコと殴ってハグを迎え入れてたシーンが印象的だった。そういうアゲインストな姿勢は魅力的にも見えたのだ。
彼の魅力は上述のThe Smithで語ってしまっているので、これ位にしておく。
一つ、ソロになってからのバックメンバーにFairground Attractionのマーク・E・ネヴィンや、THE POLECATSのボズ・ブーラーなども起用していたりする辺りも個人的には唆られる。
The Stone Roses / "Second Coming"
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1994年にリリースした2ndアルバム。
評価の高かった1stに比べ失敗作とさえ言われ、その後解散してしまう末路を迎えてしまう事となる本アルバムだし、UKパンクやUKロックの流れから言うと1stは傑作と言われるのも頷けるが、私的には断然コッチが好き。重厚感あるグルーブが痺れるし、"driving south"、"Begging You"は今でも聴くとガチでアガる。ジョン・スクワイアのギター弾きまくりもたまらない。ボーカルが下手だとも言われていたが、シューゲイザーと同じく私はあえてその拙い感じがいいバランスで成り立っていて、個人的にはツェッペリンとかのボーカルスタイルが苦手なので、ここが自分にとっての音楽人生の別れ道だったのかもしれないとも思ったりする。
そして更に"Tightrope"は私のバンドPresence of Soulの2ndアルバム最後の曲も同タイトルにしている。もちろん曲のアプローチは違うけれど、こういう影響のしかたもある。そして私はロックが好きなのだなと改めて感じたりする。
The Sundays / "READING, WRITING AND ARITHMETIC"
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1990年リリース、1st.アルバム。
ネオアコやギターポップ、ドリームポップなどにカテゴライズされる彼らのアルバム。The Sundaysはモリッシーに続き文句なしに大好きなバンド。どんなに好きでもアルバムによっては良い悪いがあったりするけれど彼らの作品は全部好きだ。
ずっと泥臭いロックや男性ボーカルバンドを聴いたり歌っていた自分にとって彼らは衝撃的に路線を変更するキッカケにもなった。ないものねだりだったけどハリエットの透明感あるボーカルに憧れた。
このアルバムには収録されていないが、彼らのカバー曲でストーンズの"Wild Horses"は本当に素晴らしい。彼らなりのサウンドでこんなカバーが出来るってスゴイなぁといつ聴いても感じる。後に私達がアネクドテン来日公演で彼らの曲をカバーした時にも役立っていたと思う。
Slowdive / "Just for a Day"
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1991年リリース、1st.アルバム。
ポスト・コクトー・ツインズと評されデビューしたSlowdive。
このアルバムがリリースされた2ヶ月後にマイブラの「ラブレス」がシューゲイザーシーンを象徴する作品として認められてしまった事もあってか、彼らの評価は少し薄れてしまったとも言える。
シューゲイザーの特徴でもあるフィードバックノイズと深いリバーブ、ディレイと歪み音に浮遊感あるボーカルを乗せたスタイルはまさに私の中でピッタリとハマり、あまりにも自然に自分の中へ入っていった。当時はシューゲイザーだという意識もなく聴いていた気もする。そしてその中でも群を抜いて好きだったのがSlowdiveだった。
ドリームポップやブリットポップなどメジャーコードでキラキラ感が多めもしくはホワイトノイズのウォールオブサウンドの中、このSlowdiveの陰鬱なリバーヴィなサウンドは私の心を鷲掴みにした。とにかくマイナーコードの響きと切な過ぎて全世界の悲しみを背負った様な気になり涙が出てくるメロディ、ギターワーク全てが心の悲しみに埋もれていく感覚になり堪らない。
この哀愁感は今の自分を作っていると思う。絶対に外せないバンドだ。
Lush / "Gala"
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1987年結成 ロンドン出身のロックバンド。
本作は1990年、1stアルバム"Spooky"以前の初期シングルやEPのコンパイル盤としてリリースされた。
シューゲイザー、ドリーム・ポップ、ブリット・ポップといった90年代を代表するべく、その透明感ある甘美なサウンドで、The Cocteau Twinsのロビン・ガスリー プロデュースと言う事だけあって1曲目の"Sweetness and Light"でアルバムの掴みには最上級だと思う。
個人的にはダークでウェットなもの好きなせいもあってドリーム・ポップ、ブリット・ポップ辺りは眩し過ぎてそれほど自分の作りたい物には直結しない。でもシューゲイズサウンドでもあるフィードバックノイズや深いリバーブ、ディレイギター音は大きく自分の肥やしになっていて曲を作る上では必要不可欠な要素となっているし、6/8拍子でシャラシャラとギターバッキングを掻き鳴らす感じが私のスタンダードにもなっていた。
コンパイル盤でもありアルバム全体の統一感には欠けてしまうのは仕方ないが、#11"Bitter"、#12"Second Sight"のアルバム後半が特に好き。
ボーカルのMikiの拙いとも言えるボーカルにスカスカギターがパンク的でもあり、あえての味となっている様で良い。結成メンバーだったVo/GのメリエルがPail Saintsに加入する為に脱退してなかったらどうなったかなぁと思う。
私は、自身のバンドの音楽転換期を迎えた時、歌モノでシッカリ歌ってきた自分のボーカルスタイルをLushの様に浮遊感たっぷりに歌うように変えるには少々時間を要した。振り返り聴きながら(まぁシューゲイザー全般そうだけれど)彼女達の轟音に掻き消されそうな隙間をたゆたう声が当時、懸命に辿って今の自分のスタイルの貢献となってくれた事は確かだ。
RIDE / "Smile"
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1990年、デビューEPと2nd EPをカップリング編集しリリース。
当時はそんなにシューゲイザーと言うジャンルで括られてはいなかったのではないかと思うが、それでもシューゲイザーバンドと言えば必ずRIDEが挙げられるだろう。
オリジナルアルバムの"NOWHERE"も方向性が決定的になっている感じも良いのだが、それ以上に若さと初期騒動溢れるフレッシュさ、デビュー曲の"Chelsea Girl"や"Like a Daydream"など今でも新鮮に聴けるキラーチューンがある事が決めてとなり、入門盤とも言えるだろう。
【予告】
次回は90年代後半〜2000年代、UKロック、ポストロックなど、現在の自分の音楽によりダイレクトに影響を受けている名盤のご紹介をする予定です。