見出し画像

舞台「ピサロ」、noteで感動再び……!

noteを旅するうち、昨年私が一番感銘を受けた舞台「ピサロ」の感想をたくさん読ませていただきました!嬉しい‼︎😂感動が再び…昨年Facebookに載せた感想を出しておきたくて載せさせてください🙏
おそらく欧米では上演不可能な戯曲、日本でも次はいつ拝見できるかわからない、貴重な舞台でした。上演を英断されたパルコさんに感謝🙏✨
〜☆〜。〜☆。〜☆。〜☆。〜☆。〜☆。〜☆

「ピサロ〜THE ROYAL HUNT OF THE SUN」by Peter Shaffer
2021.5/15(土)〜6/6(日)パルコ劇場

緊急事態宣言が繰り返されるなか、昨年(2020)は10回で幕を閉じたパルコ劇場オープニング・シリーズ第一弾の作品が、本日作者ピーター・シェーファー命日に千穐楽、全26公演完演おめでとうございます✨感動的な舞台の後、涙あり笑いありのカーテンコール、緊張が一気に解けました。

16世紀黄金を求め船出したスペイン大航海時代のインカ滅亡の物語、シェーファーはW.H.プレスコットの名高い歴史書「ペルー征服」に材を採ったと、いくつかのレビューにありますが…
まず上下二巻にわたる大作から、翻訳書の言葉を引用すれば「アタワルパに関する処置は明らかに徹頭徹尾、スペイン植民史における最も暗黒な章節の一をなす」ところに焦点をあてて作品を書き上げた作家の嗅覚、センスに感服です。(石田外繁一・いしだ ともいち、真木昌夫・まき まさお訳: 講談社学術文庫)
1964年の作、〔シェーファー作の「アマデウス」ロンドン上演が1979年(映画は1984年)〕、
山崎努が伊丹十三に翻訳を依頼し、パルコ劇場で主演されたのが1985年です。(その時のインカ王・アタワルパ役が、今回ピサロを勤められた渡辺謙さんということで2020年の劇場新装記念に繋がるわけです…)

背景のスクリーンに昇る燃えさかる太陽に、神々しいアタワルパ(宮沢氷魚さん)が向かっていく、
太陽とインカ王が一体となるような、印象的な
オープニングでした
☀️🔥

前年から新型ウィルスという見えない敵に共に闘いながらも確立した全ての個が、同じ方向を向き舞台上で素晴らしい絆を作っていたと感じます。

スペイン・ピサロ将軍の渡辺謙さんは俯瞰した演技で観客をぐーっと味方に惹きつけ続けながら、ラストに頂点を持ってくる技量がすごい!と思ったし、
アタワルパの凛とした、太陽神の王子の神々しさと、インカ王の強さ潔さが清々しくてよかったし、若いマルティンの純粋さ、語り手の長老マルティンはほぼ舞台上に、デ・ソト副隊長の任務に忠実なお姿には付いていきたくなったし…いっぱいいっぱいの感動です。(このカンパニーで違う作品も観たい!☺️)

長く応援させて頂いている長谷川初範さんは、キリスト教ドミニコ派の修道士Valverde司祭でご出演でした。
史実では「後にクスコの僧正になった」人物で、「遠征の全期間ピサロに付き添った」とプレスコットの歴史書にあります。そもそも黄金を本国スペインに持ち帰ることが目的で、そのための大義名分がキリスト教への改宗。

ここからは私見ですが、司祭はその不条理をわかっていたのではないかと…、とすれば聖職の裏を物語の鍵にしたシェーファーの大胆さには圧倒されるばかりです。

戯曲には各幕にタイトルが付いており
一幕にはインカ王を捕らえる"THE HUNT"、
二幕は"THE KILL"、
ご覧になった方はお気づきと思いますが、それぞれ行動にかかる号令をかけるのはValverde司祭なんですね…。ピサロ一行の影の司令塔の、聖職者という柔和な態度に隠された本性が徐々に表れてくる怖さを、何時も変わらぬ真摯な姿勢で役と向き合われ演じていらっしゃいました。上演後半につれて妖艶に感じたほどです。

シェーファーさん双子でいらっしゃるから…?
司祭も二人、マルティンもお二人、もちろんピサロとアタワルパも、一対がみられることも興味深いです😊

王の自由と引き換えに身代金として莫大な黄金がインカ各地から集まる間、ピサロとアタワルパの間に不思議な友情が芽生えます。それは歳の差からも親子の情にも似たものでしたが、インカ兵急襲の恐怖から征服者たちはピサロの葛藤をよそに急ごしらえの法廷で王を裁き、死を宣告する。

終幕直前、もう息のないアタワルパと亡骸を抱くピサロへ下手上方向から照明が当たり、魂の昇華のようでとても清らかでした。自然と熱いものが込み上げ、当時本国を支配した思想の恐ろしさが浮き彫りになるとともに、シェーファーの
「果たして神とは何か?」
との問いかけが刺さります。

そして長谷川さんも、ご活躍目覚ましい金子雅和監督も各々Facebookで語られている、伊丹十三翻訳版の"日出づる国"ならでは、の見方も一興です。
私も、アタワルパの側近の衣装がお二人とも袴だったり、昨年は三島由紀夫没後50年でメディアにさまざま取り上げられるなか、もし三島が存命であったなら今の日本をどうみるか、伊丹監督も同時代に活躍された方だな、と繋がったり。
この作品を語り合ったら、何日もかかる(!)くらい奥深いものがあります。

関係者の皆様方、お疲れさまでした。
感染症禍での上演のご決断、作者と同じ英国のウィル・タケット演出のもと、名舞台が生まれた素晴らしい瞬間に立ち合わせて頂き、感謝に堪えません。
未だ感染症禍の不安は拭いきれませんが、明日を生きる希望を頂きました✨

プロダクションに関わった皆様お一人お一人が観客含め感染しない、させない努力で不安を跳ね除けました。本当にご成功おめでとうございます❗️
そして、素晴らしいひとときをありがとうございました☺️


カハマルカとキリスト教の十字架
Cajamarca in Peru
photo:Nizam ErgilNizam Ergil

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?