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第48回 日本人は、「予算を切り詰めることを正解としてしまう」ことの弊害について、きちんと考えるべき

『お金の使い方を知らない』日本人に大きな仕事は任せられない

僕を含む多くの日本人は「お金を貯めなさい」と育てられて、「こういう風にお金を使いなさい」とは育てられなかったと思います。

今現在お父さんお母さんをやっている方も、お子さんに対して、「貯金しなさい」と言っている方が多く、「節約も、貯金も大事だけど、一方で、お金はこういう風に使うといいよ」と言えている方は少ないかもしれません。

どうですか?

今日はそういう人達に届けたい話なのですが…以前、海外で活動している知り合いのクリエイターさんが面白いことを言っていたんです。

彼曰く「日本人はメチャクチャ優秀だ」と。
「手先が器用だし、勤勉だし、素晴らしい」と絶賛していたんです。

「その上で、一つだけ勿体ないことがある」と言っていて、それが何かというとですね…
「日本人に大きな仕事は任せられません。理由は、『お金の使い方を知らないから』です」
と。

「20億円の予算を渡しても、20億円の正しい使い方を知らないから、20億円を無駄に使ってしまう」と彼は言ったんです。

これは本当に示唆に富んだ指摘で、僕自身、心当たりがありまくりなんです。

「予算を切り詰めること」を正解としてしまうことの弊害って、具体的に、どういうところで起きているかというと、たとえば『イベント制作』です。
100万円で作るイベントと、1億円で作るイベントって、全然ゲームが違っていて、100万円のイベントしか作ったことがない技術スタッフさんは、300万円の機材の使い方も知らなければ、「300万円の機材がどういう効果をもたらすか?」も知らないんです。
言い方を変えると…「知識」が無いんです。
才能と呼ばれるものを伸ばしてくれるのは、「知識」と「反復訓練」なので、「知識」がないと、才能は活かされないんです。
「設備投資」という言い方をしたりしますが、商売道具にこだわって、必要なものにはキチンとお金をかける人と、そんなことはせずに、とにもかくにも節約してしまう人とでは、仕事のパフォーマンスが大きく違ってきます。

僕、いろんな業界を渡り歩いているタイプの人間なのですが、少し厳しい空気が流れている業界は総じて「なるべくお金をかけない」が正義になっていて、その業界の技術さん(つまり「本職」の人)に、「Aという機材を使って、こういうことをしたいんですけど…」と提案したら、「…すみません。Aって、何ですか?」と言われることがあったりします。

これ、技術さんには罪はないんです。
予算内でやりくりしなきゃいけないのが技術さんなので。
この時の罪はどこにあるかというと、予算を管理する人…つまり、節約を正義としてしまっているプロデューサーです。

「予算の開発」からキチンと向き合って、キチンと予算を作って、使うべきポイントではキチンとお金を使う。
そして、「それにお金を使えば、どういう効果があるのか?」をキチンと検証する。
そうすることで、はじめて「お金の使い方」が分かって、無駄遣いが減り、選択肢が増えて、コストパフォーマンスが上がるんです。

行き着く先は「知識」と「選択肢」のない人生

当然、これはエンタメの世界に限った話じゃありません。

何も考えずに、節約を是として、貯金を是としてしまうと、行き着く先は「知識」と「選択肢」のない人生です。

お父さんお母さんがお子さんとやらなきゃいけないのは、「300円」が入った時に一言目に「貯金しなさい」と言うことではなく、「300円の正しい使い方は何だろう?」と一緒に考えることで、300円の正しい使い方が分かったら、今度は500円の正しい使い方を学び、それが分かったら、今度は700円の正しい使い方を学ぶことだと思います。
その勉強をせずに、何も考えずに「300円」を100回貯金して、ようやく「3万円」を作ったところで、3万円の正しい使い方を知らないので、3万円を秒で溶かして終わりです。

例外もありますが、「数億円の宝クジを当てた人」がそこそこ厳しい末路を辿っているのは、まさにそれで、お金を正しく使えない人って、一瞬でお金を無くすんです。

話をまとめると、「お金を正しく使う」とか、あるいは、「節約や貯金によって生まれている弊害が何か?」みたいな議論は、もっともっとしていった方がいいと思います。
そして、この議論は、なるべく若いうちにした方がいいと思います。
ウチの母ちゃんなんて「定期預金」が絶対正義なんですが、1980年じゃあるまいし、まぁまぁ考えもんだと思います。

西野亮廣

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