返事をしない子供との接し方

こんにちは、辰巳です。

先生方は、レッスンをされる中で、とても無口な生徒さんに困ってしまわれたことはないでしょうか。

例えば、小学生の生徒さんで、

「こんにちは」と挨拶しても、無表情でスルーされてしまう、

「発表会にどんな曲を弾きたいかな?」と聞いても、ずっと黙ったまま、

「ここはどんな風に弾いたら良いかな?」と聞いても、何も答えない、

レッスンは休まないし、練習はそれなりにはしているけれど、

だけど、演奏の表現はとぼしくて、、、

先生から見たら「この子はピアノが楽しいんだろうか?」「何を考えているのかサッパリ分からない」と疑問に思ってしまう。


時々そういうタイプの生徒さんがおられます。

リアクションが無さすぎると、先生はホトホト困ってしまうかもしれませんね。


こういう時は、どのように接するのが良いのでしょうか。



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音楽をされている方なら、「音符」にも「休符」にも同じだけ意味があるという事は実感出来ると思います。方法は違えど、どちらも表現です。

言葉が「音符」ならば、沈黙は「休符」。

演奏家なら、休符に込められた表現を想像しなければいけませんね(^^)


ちょっとトレーニングをしてみましょう。


大好きな人がいたとします。その人から仕事の帰りに「この後、夕飯でも一緒にどう?」と声をかけられました。こんな事は初めてです。親しくなれるチャンスです。しかし、そんな時に限ってあなたの財布には1,000円しか入っていません。そこで、あなたは返事につまって、束の間、沈黙してしまいました。

さて、あなたの「沈黙」の時、頭の中ではどんな言葉が巡っていますか?




「え!行きたいに決まってる!チャンス!え?もしかして私の事好きなの?それより、何で今日に限って財布の中身1,000円なのよ!誘われたんだから奢ってもらえるかもしれないけど、その前提で行くのはダメよね。でも、ATM行きたいなんて言ったら、奢ってって言ってるみたいで厚かましいし、、コッソリATMに行くチャンスあるかな?!嬉しいけどピンチー!」


こんなところでしょうか?!しかし、親しくない相手に対してコレを口に出す人はいないでしょう。

そう。

「沈黙」はおしゃべりなんです。

決して「無」ではありません。


もう1ついきましょう。

奥さんの方が立場が上の男性。仕事には真面目だが、仕事の大変さや愚痴は家では話さないように心がけている。ある時、後輩から仕事の事で相談があると言われ、仕事帰りにちょっと飲みに行き、後輩の仕事の悩みを聞くうちに、ウッカリ連絡無しに帰宅が遅くなってしまった。次の日、奥さんから、夕飯の段取りもあるから帰りが遅いならせめて連絡して欲しいと怒られた。男性はつい黙ってしまった。「どうして黙ってるの?」と奥さんは更に機嫌が悪くなったので、「分かったよ、ごめんな」と言った。

黙ってしまった男性。この沈黙にはどんな言葉が込められているのでしょう。


おそらく、言い返したい事も山ほどあるのでしょう。しかし、連絡をしなかった事は悪いし夕飯の段取りで迷惑をかけた事も認める。でも素直に謝りたくない。

「どうして黙ってるの?」

と詰め寄られたので、揉めてまで自分の主張を通さなくて良いか、、と面倒くささが勝った。

、、、というところでしょうか。

このように、沈黙の中には沢山の言葉があるのです。そして、それらには一貫性がなく、矛盾している思いも同居しているため言葉にするのがとても難しいのです。

さらに、先程の例のように、立場が上の相手に対しては、より一層自分の主張をしづらいものです。

レッスンに話を戻すと、やはり先生の方が立場が上になってしまいますよね。

先生がそうは思っていなくても、「先生はとっても立場が上の人」という概念を持っている子もいるわけで、そういう子は、より一層沈黙しやすくなるわけです。


大人であれば、一瞬沈黙したとしても、すぐに社会的な返答や、上辺だけの返答が出来ると思います。

しかし、子供はそうではありません。

頭の中に、葛藤や矛盾がたくさんたくさんあって、混乱している状態では、それをまとめて言葉に出来ない子も多いのです。

そのまま思考停止状態になる事も充分あり得ます。(大人でもなりますよね!)

そんな時に、

「どうして黙ってるの?」

と詰め寄られると、辛いでしょう。


また、いつも話をしない人には「緘黙」の可能性もあります。「かんもく」と読みます。

「緘黙」とは、リラックスしている時は普通に話せるのに緊張している場面では言葉が出て来ない症状です。

特定の場面で毎回言葉が出てこない事を「選択性緘黙」と言います。家ではおしゃべりなのに、学校では一言も喋らない子どもなどがそうです。

緘黙の人たちも、やはり先述の例のように、心の中には色々な思いや言葉がグルグル回っていて、でもそれを言葉に出来ず沈黙してしまうのです。

そして、沈黙してしまう自分に落ち込み、周りの雰囲気を悪くしている事にも萎縮し、ますます喋れなくなるのです。

でも、喋れないのです。

「喋らない」のではなく「喋れない」のです。

緘黙の診断名が付いている生徒さんと接する場合は、ご家族や、場合によっては専門のクリニックと相談しながら対応する必要があるかもしれません。

しかし、緘黙とまではいかなくとも、反応が無く、黙りがちな生徒さんであれば、接し方は同じです。

突然ダンマリしてしまう生徒さん。何秒も沈黙が続きます。おそらく先生が口火を切るまで続く沈黙です。

そんな時に、

「ちゃんと答えなさい」とせかしたり、

「どうして黙ってるの?」と詰め寄ると、

パニックにさせてしまいます。

言葉でうまく言えなくて、泣いてしまう子もいるでしょう。

「え?叱った訳でもないのに、どうして急に泣くの?勘弁してよ、、」

と困ってしまう先生もおられるでしょう。

しかし、1番困っているのは生徒本人です。

これを絶対に忘れてはいけません。


繰り返しますが、

1番困っているのは本人です。



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先生という職業は、頭の回転が早くて説明が上手なタイプが多いと思います。でも、自分がそうでもみんながそうではありませんね。

また、先生が出来る位ですから、皆さん自分の得意な事をしているわけですよね。

もし、「どうして何も答えないの。せめて、ハイ•いいえ、位なら言えるでしょうに」とイライラしてしまったら、

ご自分が1番苦手な事を思い出してください。

まわりにとっては出来て当たり前の事でも、自分にとってとても難しい事、心当たりはありませんか?

とても苦手な事にチャレンジしている時に、

こんな簡単な事、どうして出来ないの?

と言われてしまったら悲しいですよね。

その気持ちを想像すると、イライラもスゥーっと収まるのではないでしょうか。


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レッスンでの具体的な接し方の例としては、

リラックスして話せるように接する、

先生が聞いた事を、先生に答える代わりにおうちでお母さんに答えてもらう。先生はお母さんと連携する、

生徒とお手紙でやり取りをする、

などです。

いずれにしても、急いではいけません。

先生は、待つ事が仕事です。

このような事を根気強く続けていて、何年か経った頃に、その生徒さんが、レッスンの場でリラックスして話してくれるようになってくれたなら、

それは、先生としてとても嬉しい瞬間なのではないでしょうか(^^)


私の経験談ですが、

いつも表情がなく、沈黙の多い生徒さんと根気強く何年か接していました。生徒さんはいつもムスっとしているので、「私の事、あんまり好きじゃないのかな?親に言われて嫌々レッスンに来てるのかなぁ」と思った事もあります。

しかし、レッスンは休まないし、教室のイベントも全部参加します。なので、あれれ?表情はアレだけど、案外楽しんでる?なんて思ったりもしていました。

3年くらい経ったある時、その子がお友達とリラックスして喋っている時に居合わせました。すると、その子は「先生はホントに、いーっつでも優しいんだよ!」とニコニコしながら私の事をお友達に話してくれていたんです。

さしがに、うっかり、ウルウルしてしまいました。

どれ程嬉しかったのは、言うまでもありません。

同じようなタイプの生徒さんで困っておられる先生のご参考になれば嬉しいです。


お読みくださってありがとうございました♪


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