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Back to the future 背中から未来へと

四方をマンションに囲われた公園の一角に、とてつもなく大きな倉庫がある。

祭で引き回される山車の格納庫だ。
私の暮らす市では、毎年1回、市内全体を巻き込む大きな祭りが開催されていた。
町内毎に代々受け継がれた山車を引き回し、屋台囃子を響き渡らせるのだ。

高層マンションで無機質になった街に
山車が派手に動き回る。

ドラえもんの近未来都市のような場所に、
タイムスリップしたような山車を見つめる人々の瞳は
キラキラひかる。

最後に山車を見たのは2年前。
コロナがない世界で、
人だかりの中、来年も当たり前のように訪れるであろう風景を思い入れもなく眺めていた。

あれから、
山車は日の目をみていない。

祭の写真を眺めると、
迫力ある「人だかり」にびっくりする。
同じ風景を取り戻すことは出来ないと直感で感じる。

過去を振り返るなと人は言うかもしれないが、見つめていたい風景がそこにはある。

私が残しておきたい風景は、未来に残せなかったのだろうか。

いや、それは少し違う。

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Back to the future

大ヒット映画のタイトルの”Back”には背中の意味も込められていると信じている。

背中から未来へと。

過去を見ながらゆっくり慎重に後ろ歩きで未来に進んでいく。

過去は未来へ繋がる通過点。
未来を楽しくするヒントはきっと過去にある。

過去を見て見て見尽くした先に拡がる世界がきっとある。
祭が開催されるヒントもきっとみつかる。
山車をみつめるキラキラひかる瞳にも出会える。

未来に残したい風景は「人だかり」じゃない。
屋台囃子をかき鳴らしながら引き回される山車に魅せられたキラキラした瞳。

私が未来に残したいのは風景は、キラキラした瞳の先にある。
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毎月はじめの土曜日、午後5時。
格納庫のシャッターがひっそり開く。

山車をメンテナスするおじさんと屋台囃子のおじさん達が集まるのだ。

虎視眈々と祭の再開を目指すおじさん達がいる限り、
キラキラひかる瞳が見つめる先はなくならない。
一歩踏み出せば、過去に行ける。

心の中で
おじさん達に感謝を込めて全力で叫ぶ。
「ワッショイ!」

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