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先生から叱られる

あなたは、写真教室に行ったことがありますか?

そこには、やさしい先生がいて、生徒一人ひとりの実力に合わせて、レンズの選び方やカメラの設定、構図のとり方や現像の仕方まで、手取り足取り丁寧に教えてくれるのです。

しかし残念ながら、わたしは、そういった教室に出入りしたことはなく、そのようなやさしさに触れたことがありません。

カメラオタクの知り合いに強引に教えてもらったり、たまに仕事で一緒になる職人気質のフォトグラファーさんと仲良くして、度々テクニックをご教授いただいたりして、ほぼ独学で写真を学んできました。

そもそもは、自分の作品をしっかりと撮影することが目的だったので、“物撮り”と呼ばれる、止まっているものを余すところなく写すことが目標でした。しかし、年齢とともにカメラの機材も相応にレベルアップしてくると、風景とか人物とかも撮りたくなるというのが当然の成り行きなのです。

そんなこんなで、散歩には、自然観察がてら必ずカメラ持参で行くというのが習慣になっているのです。制作の資料であれば、スマホでも充分かとも思うのですが、あとで観ると、細密さやグラデーションの美しさは、やはりカメラの方に軍配があがるのであります。



先日も、そろそろ“カジノキの実”が、撮り頃だろうということで、公園に向かいました。昨年よりも良く撮りたいという一心で木の下までやってきました。人の気配もなく静かな林に、オレンジ色の実が熟し始めており、なかなかいい感じなのであります。

早速、ピントを合わせてシャッターを切り出すと、


突然、後ろからポンとアタマを叩かれました。



「だれだ、いきなり失礼な!」

と後ろを振り返るもだれもいません…。



「おい!そこじゃねーだろ!」

と先生からハッパをかけられる感じだったのです。
そして、


「もう少し、後ろに下がれ!ポンコツ。 
ボーっと同じ場所から撮るんじゃなく、足を使え、足を!」

と指図され…。


そして、しぶしぶ指示どおりに後ろにさがって
ファインダーを観てみました。

たしかに、こちらの方が、奥行きが出るなー



「さすがです!先生。」

とシャッターを切ったのでありました。



そして、たしかにアタマを叩かれたのだが…と、
帽子をさすると、なんか水っぽい感触が…。

なんと“カジノキの実”がアタマを直撃したようなのでした。

しかし、あのポンという感触は、

小学生の頃、先生が紙を丸めてつくった
棒で叩かれる感覚にそっくりで、


昨今ではありえない
郷愁と愛を感じたのでありました。






自然の中を歩いていると、たまにこのような不思議な出来事があるのです。そして、その日の夕飯時に相方さんに


「〜というわけで、凄い導きを体験したのであります!」

と自慢げに報告しました。



「へーっ、凄いねー、」

と興味なさげな素っ気ない返事がきました。
そして、次の瞬間!

「ちょっと待って、その肩なに?
なんかピンク色の絵の具がついてんだけど…」

鏡をみてみると、
白いティーシャツにブランドもののような、
キレイに何かが炸裂したような飛沫柄が………。



「あっ、キレイな色だねー。」



と喜んでいると…
(実際にすごいキレイなピンク色だったのです…)







「洗濯で落ちるんでしょうね?その色………」





と静かに

叱られるのでありました…。





ここにも、先生がいました。

では。また。





2024年9月 カジノキ







アーティストYuki KATANO(ユキ・カタノ)
2024/09/05


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