日本人だもの、世界が羨む和牛を知って語ろうよ
しばらく前に出ていた『日本人の「和牛」離れ深刻…』の記事を読んでのなんとも言えない気持ちがまだ残っている。
(日本人の「和牛」離れ深刻…価格は鶏肉の3倍、霜降りの脂が嫌われる傾向/Business Journal編集部/2024.08.23)
なんてショッキングなタイトルなんでしょう。
霜降り至上主義な和牛ブランディングの局面
数年前からどっぷり浸かっている和牛の仕事。
和牛品種や銘柄のリブランディングや広報制作、和牛を提供する飲食店舗の広報サポートを担いながら、そのめくるめく世界にはまり、私自身がすっかりトリコに。
私はこの仕事に出会って、生産者さんや品種と出会って、人生における「お肉を食べる喜び」を何倍にもしてもらえたと思う。大げさでなく、本当に。だからこそこの仕事にやりがいを感じて、すっかり沼にはまっている。
それでも日々、巷のうまいもの文脈のなかでの「和牛」の認識はこれほどまでに「=霜降り肉」なのであることを感じる。冒頭の記事のなかでも「高級であることの証でもある霜降りの脂」と表現されていて、脂肪の少ない「赤身肉」については「輸入の赤身肉」とだけ触れられている。(もちろん執筆ご担当者は知識がありながらわかりやすくマス認識に合わせて書いていらっしゃるんだろうと思う)
記事中の論点のひとつとして、サシが多い特徴がゆえに国内消費者の高齢化が進むにつれて選ばれにくくなっているという点が挙げられている。これは完全同意。高齢っていうより本気の霜降りだと30代後半くらいからきつい人も多いのでは。
ワタクシ、A5ランク松坂牛ステーキは、2切れくらい、塩とわさびでいただきたい(40代・女・東京都)。
これは、長期にわたって霜降り至上主義に振り切り続けた和牛ブランディングの局面だと思う。
「和牛=霜降り」ではない
和牛には赤身自慢の品種が存在する
ちなみに私は、霜降りも好き(神戸育ちだし)。
ただ、基本的には、お肉は食べる人の味覚はもちろん、その日の気分やコンディションによって好みが変わると思っている。前述の年齢とともに好みが変わるというのもそのわかりやすい現象だと思う。
ここで私がなんとも言えない悔しさ混じる気持ちになるのは、我ら日本人が世界に誇る和牛に「赤身自慢の品種」が存在していることが、こんなにも知られていないのかと日々感じているから。
(そもそも、業界外の一般的会話のなかでは、和牛ってなんだ?品種ってなんだ?銘柄ってなんだ?問題を察して、もはや食育ってなんだ?問題に行き着いてしまいそうになる)
幾度と謳われた「赤身ブーム」的トレンドを経てもなお、まだここにいるという不思議。
「和牛に赤身自慢の品種が存在する」
そして、それがめちゃくちゃ美味しい。というとてもシンプルな事実を前に。
赤身品種の魅力はというと、脂質による脳の喜びが大きい黒毛和牛の魅力に対して、たっぷりの肉汁とかみごたえ、そして旨みからくる口内に広がる肉本来の美味しさをに満ちた喜び。それでいてヘルシー。
霜降りだけが喜びではないこと、霜降り等級と別視点での美味しさが存在することが、日本人にすら知られないまま「日本人の和牛離れ」が語られていくのか……と、生産の現場の人ではないけれど、広報制作担当のはしくれとして、心ぷるぷるとさせたまま過ごしている。
短角和種との出会い、無角和種との出会い
夏山冬里で育ついわて短角和牛との出会い
和牛との出会いの始まりは、観光業務を担当する地域でその魅力に引き込まれたのが短角和種。
北海道から長野あたりまで広く飼育されながらも、国内和牛の飼育のなかの0.2%とされている希少な品種。私が出会ったのは、岩手県の稲庭高原で育ついわて短角和牛。
現在は、新しい飼育に取り組む畜産家さんと実験的広報チャレンジをしている。
→いわて短角和牛/ほんものにっぽんにのへ(弊社制作サイト)
山口県のみで飼育される無角和種との出会い
さらに、地域の宝を磨く取り組みとして担当させていただいたのが、阿武町を主として山口県のみで飼育される無角和種の品種造成100年を迎えてのリブランディング。
無角和種は和牛として登録される4品種(黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種)のうち0.01%最も希少な飼育頭数となった品種。
→無角和牛(弊社制作サイト)
※和牛頭数の分布は黒毛和種が約98%の比率で圧倒的な主を占める。そんななかで、上記2種が希少種であることは広報上での影響は大きいけれど、味の勝負上ではその点出して気を引かずとも十分強いと思う。
短角も無角も、霜降り自慢の黒毛とは対照的に、ジューシーな肉本来の旨みが自慢な赤身品種だ。脂肪交雑(サシ)は少なく、脂は赤身の外側につく。そんなそれぞれのルーツや個性の違い、どちらも現地での取材活動中に地域の地形や風土の魅力、人の魅力が探究心を掻き立てる。「和牛=霜降り」ではない、必ずしも「うまい牛肉=霜降り等級の高い肉」ではない、和牛には品種それぞれの魅力、生産者それぞれのこだわりによる美味しさがある。
そんな体験をつくりたくて
実食型イベントをつくりました
「品種×血統×餌×飼育×環境×月齢」によって構成される牛の味。
それを知っていく体験にこそ、食べる楽しさや豊かさが詰まっている。
離れる以前に、私たちは和牛についてまだまだ知らない。
離れる以前に、もっと豊かな体験との出会いがあると思う。
日本人だもの、世界が羨む和牛を知って語ろうよって思う。
そのために、畜産家のみなさんやシェフや料理人のみなさんと一緒に、和牛の魅力との出会いを届ける実食型イベントとしてつくりました。
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⚫︎国産飼料100%で育てた「短角和牛」を食べる会
⚫︎無角和牛を食べる会
(東京・大泉学園「牛肉料理しもかわ」にて約月1開催。
ご参加希望はしもかわFacebookのコメントまたはメッセージから)
⚫︎見島牛を食べる会
(東京・大泉学園「牛肉料理しもかわ」にて約月1開催。
ご参加希望はしもかわFacebookのコメントまたはメッセージから)
今年もまた、編集者のわりに、デスクでの編集ワークそこそこになっておりますが、それもこれも全部編集。イベントだってメディアだもの。
牛の話とあっては抑えきれず長くなりすぎたので、ここらへんで。
イベントの中身は、次回以降で紹介したい。
(せっかちさんは、細切れな情報はXでも流しているのでそちらでどうぞ)
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