【アート編10冊】山口周氏(コーン・フェリー・ヘイグループ シニアクライアントパートナー)
美術感度を高めてくれる初心者向けガイド。
経歴
1970年東京都生まれ。
慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニー等を経て2011年より組織開発を専門とするヘイグループに参画。
専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成、キャリア開発。著書に『グーグルに勝つ広告モデル――マスメディアは必要か』『天職は寝て待て――新しい転職・就活・キャリア論』(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術――図解表現23のテクニック』(東洋経済新報社)など。
「絵画鑑賞のヒントを得る」
①美の旅人
ゴヤの「砂に埋もれる人」や「我が子を食らうサトゥルヌス」といった作品は、美術に親しみのない人にとっては奇妙に映ります。著者も同様です。著者の心の動きを疑似体験することで、自身が作品に向き合う心の準備ができます。
②フェルメール 光の王国
生物学者である著者が、世界各地のフェルメール作品を鑑賞した美術紀行です。移ろいゆく一瞬の光に作品にとどめたフェルメールに、著者は科学者に通じる心を感じたと述懐しています。
③いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画
著者はニューヨーク近代美術館での勤務経験もある作家です。自身の人生や作品に影響を与えた絵画や美術史を変えた絵画などを収録しています。作品の来歴を頭で理解していなくても、心に自由に湧き上がる感覚を掴んでいけばいいと実感できます。
④小林秀雄全作品全21集 美を求める心
「黙って1分間眺めてみれば、どれほどたくさんなものが見えてくるかに驚く」など、純粋に「見る」ことの心構えやその難しさを、これほどシャープに書き切った人は他にいません。
⑤鑑賞のための西洋美術史入門
いきなり美術館を訪れても、多くの作品の中から自分が惹かれるものを見つけるのは難しいです。まず本書のような入門書で美術史の流れを知ると、自身が惹かれる時代や作家などが分かってきます。
⑥近代絵画史
高階秀爾氏の著書はどれも面白いが、あえて選べば本書でしょう。本書を読むと、美の基準=ルールは極めて相対的なもので、ルールを規定した権威への反抗という形で、常に移り変わっていることが理解できます。
⑦美術の物語
初版は1950年、今なお版を重ねて読み継がれる古典的名著です。原始時代の洞窟壁画に始まり現代のアートまで、1万年以上にわたる壮大な美術の流れが、各時代に沿って学べる書です。ぜひ大判の本書で作品を鑑賞して欲しいです。
⑧現代アートとは何か
多くのビジネス、特にBtoCの産業は遅かれ早かれ、機能では売れなくなり、アート的なビジネスへの転換を迫られるでしょう。そのとき、現代アートが成り立つ産業構造を理解しておけば多くのヒントが得られます。
⑨楽園への道
フランスの画家、ポール・ゴーギャンと祖母の生涯をノーベル賞作家が描いた作品です。裕福な生活を捨てたゴーギャンの生涯の悲惨さは相当なもので、アーティストというものがいかに破綻しているかを感じ取れます。
⑩超芸術トマソン
「トマソン」とは、建築物に付随している無用の長物であるものの、感興をそそるシュールな物体です。多くの人が見過ごしているものを切り取り、意味を与えた赤瀬川氏は天才としか言いようがないです。
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