閏時間
本日、2月29日。
4年に一度だけ訪れるちょっとばかし特別な日だ。
閏年は4年に一度の周期であるため、当たり前だが次に2月29日を迎えるのは、2028年ということになる。
私は現在26歳であるため、次に2月29日を過ごす頃はちょうど30歳になっていることになる。
30歳。
正直まだピンと来ていない。
20代ももう折り返しているが、ここまでの20代の5年間とちょっと、この間あまりに内容が濃かったせいか、20代という期間が終わることに現実感がない。
まあ、実際まだ4年あるのだけれど。
◇◇◇
今朝はなんとなく、本当になんとなくの思いつきで、出勤前に最寄り駅の近くの喫茶店に立ち寄った。
仕事でやらなければならないことは当然あって、本来のんびり茶しばきなどしている余裕があるわけではない。
それでも、「今日くらいはいいだろう」とそう思ったのだ。不思議にも。
家からほど近い茶店であるにも関わらず、この地に根付いて3年、まだ一度も訪れたことがなかった。
もったいないことをしたな
入店してすぐに思った。
お店の雰囲気はドストライクで、照明の感じや客席の意匠も好みだったのだ。
もっと早くこの空間を知りたかった、と。
店内を見渡して、奥の方の席に座った。
私は入り口からなるべく遠くの席を選んで座ることが多い。そういう性格なのだ。
コロンビアのストレートをいただいた。
ソーサーの上には、何も言わずにコーヒーフレッシュが2つ、添えられていた。
(この点なぜわざわざ報告したのかと疑問に思われるだろう。詳しくは先日ラジオで語っているので、よろしければぜひ。)
コーヒーが美味しい。
雰囲気の良い茶店で平日の朝っぱらから飲むコーヒーが、美味しいのだ。
◇◇◇
しばらくして、あることに気がついた。
というか、勝手に解釈した。
わたしお得意の、世界の再解釈である。
それは、私が今日このお店に立ち寄った理由について。
そんなのは本当にただ、都合の良い思い込みでしかないのだが、私なりに勝手に意味づけをしてみたので試しに聞いて欲しい。
今日は、いわゆる閏日ってやつだ。
それは暦の周期の調整によって生まれた、4年に一度だけ訪れる日。
「閏」とは「余った」という意味だろう。
つまるところ今日2月29日というのは、4年に一度の"余った日"ということだ。
コーヒーをいただきながらこの事実に気がついた時、勝手に「なるほど」と思った。
余った日だからこそ、私はいつもの平日にはない行動に出たのかもしれない。そんなことを思ったのだ。
そしてもう一つ、発見があった。
このお店は建物の2階にあり、客席に座ると、窓から駅のホームがはっきり見える。
数分おきに忙しなく行き交う電車。
カラフルとは程遠い装いの人々の流れ。
ふと、自分もいつもその中に紛れているのだと思い出す。
閏日のおかげでいま、外側から覗くことができているが、私もいつもモノクロで忙しない景色に加担している張本人なのだ。
反射して自分を映しているわけではないが、この窓はまるで鏡だと、そう思った。
そして1秒1秒、そっちに戻るべき時間が近づいているのを感じる。
閏日の朝、たまたまいつもと別の世界から、いつもの世界を眺めた。
余った朝に。
では、また。