エッセイ ♯12|「お金は降って湧いてくるもの!?」
両親が離婚した16歳の時に私は「今日から私が母親を守ってあげなくちゃ」と決意したことをよく覚えている。
16歳からの私は、母親を笑顔にすることを最優先事項にし、いつもミッションを遂行するために必死だった。
だけど、皮肉なことに、私が母親を笑顔にしたくて頑張れば頑張るほど、母親はどんどん元気がなくなり、愚痴や文句が増え、頼りない存在になっていった。
挙句の果てには「子どもに迷惑をかけたくないからできるだけ早く死にたい」とまで言うようになった。
その言葉を聞く度に、自分の無力さを痛感させられているような気になり、時には遠回しに母から嫌味を言われているような気にもなり、
私はいつもカッとなって「子どもにそんなこと言うな!親として最低だ!」と、母に感情むき出しで伝えるようになった。
でも母のこのネガティブ極まりない言葉も、子どもへの精一杯の愛情だったということは、最近気付けたことだ。
そんな、いつだって”母親一色”だった私が、自分の人生に集中せざるを得なくなってしまった時期があった。
この時ばかりは「ごめん、私はまず自分の人生を立て直さなくちゃいけない!だからちょっと待ってて!」と心の中で母親に謝り、自分と向き合うことを徹底的に頑張った。
「自分と向き合う=本当はどうしたいのかを自覚すること。」
そして、私が自分の人生を生き始めた時、ふと母親を見ると楽しそうに自分の世界で生きていた。
会社では昇進&昇給し、毎月必ず、大好きな美容(美容院やネイルやまつ毛エクステ)に投資するようになっていた。
そして、最近母と会った時には「お金は降って湧いてくるものだから大丈夫!お金は好きなことに使ったら増えていくものだよ〜!」と笑顔で言われて、腰が抜けそうになった。
なぜなら、私が知っている母は、以前ならいつだって「私は世界一不幸です」と言わんばかりの顔をし、
口を開けば、愚痴や人の噂話、かと思えば正論を振りかざして「ベキ・ネバ論!」を言う、いわゆる「ウザイ貧乏なおばさん」だったのだ。
そんな、世界一不幸で貧乏だと思っていた母が、「お金は降って湧いてくる!だからお金は好きなことに使いなさい!」と言っていることに心底驚いた。
よくよく話を聞いていると、母は、「孫に恥じない人生を送れる自分になりたい」と強く思った時があったそう。
そのキッカケはなんと私だそうで、母が職場の人間関係でストレスを溜めていて、我慢の限界からやや感情的かつ自暴自棄になっていた時に私に意見を求めたところ、
「孫に恥じない選択をしたら?孫の前で堂々と胸を張れる選択肢を正解にしてみたら?」と言ったらしい。(全く覚えていなかった!笑)
そこから、ずっと夢なき子で、「お金さえあったら幸せになれる!」と信じきっていた母に、久しぶりに夢ができたそうです。
そこからの母は「孫に恥じない人生を送る」つまり、「いつどこで誰から見られても、自分のことを誇りに思えるような生き方をする」ために、
人間関係でもグッと引くところは引くし(我慢するし)、口いっぱいに物を言わない、家はいつだって綺麗にする、体に良い食事をして、見た目にも気を遣う。稼いだお金は気持ち良く使い、日々感謝をする。
一見、幸せになるために当たり前のこと、人として当たり前のことだけど、
「自分の本当の望み(夢)」が自分で分かっているかどうかで、その後の行動が今後の人生の糧になるのか、上滑りの作業になってしまうのか、明暗がクッキリと分かれる。
自分の本当の望み(夢)を自覚していなかった頃の母は、いつだって被害者だった。
「離婚した元夫のせいでこんな生活をさせられている」
「悠々自適の主婦だったのに40歳を過ぎて社会に出るハメになった」
「お給料がなかなか上がらない」
「どうして私がこんな目に・・・」
「どうせすぐ死ぬから、もうなんでもいいの!」
ドロドロ系の漫画でしかお目にかかれないような笑、こんなセリフを10年以上毎日言い続けた母が、自分の本当の望みを自覚し、夢を思い出した瞬間、ガラリと変わった。
日常にまつわる全てが「なりたい自分になるためのプロセス」と早変わりしたのだ。
プロセスに感謝ができて、楽しめるようになると、人間は幸福度が増す生き物だ。
そこからの母は更に、昇進&昇給を成し遂げて、孫からは「ばぁばと一緒に寝たいよぉ〜(涙)」と、泣かれるほど懐かれている。
下心から「好きなことをすればお金って増えるんでしょ?」と行動をしても特に意味はない。
自分がどうしたいのか?を自覚したうえで、気持ちよくお金を使うと、お金は降って湧いてくることを母から教えてもらった。
母、強し!母、侮るべからず!
P.S 写真は先日の私の誕生日会を実家でやってもらった時に、甥っ子が待ちきれずにプレートを触ってしまったケーキ。笑