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アランニット制作日記2019-20

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ヴィンテージ素材に箔と染めを施すことで、古着を新しく生まれ変わらせる「NEW VINTAGE(ニュー ヴィンテージ)」。 白い無垢なアランニットがどのように変化していくか、ライタ…
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#サステナブル

わたしにとって、ひかりってこれです/アランニット制作日記 最終回 3月後編 その2

 「これ、おんなじ靴」。公園を歩きながら、青柳さんが口にする。ゆきさんが「おぼえてますか?」と僕に言う。それは去年の1月の終わり、沖縄を訪れたときに、ふたりが偶然お揃いで履いていた靴だった。  その日は沖縄で撮影が行われていた。青柳いづみさんと今日マチ子さんによる共著『いづみさん』が刊行されるにあたり、沖縄でグラビア撮影が行われた。撮影に向けて、青柳さんが協力を依頼したのがゆきさんだった。 青柳 ゆきさんと一緒にごはん食べに行ったりするようになったのは、『いづみさん』を作

女優・青柳いづみさんとの出会い/アランニット制作日記 3月後編 その1

 今月で最終回を迎える、「アランニット制作日記」。その締めくくりに、「記憶の中のセーター」を実際に着てきた人に話を聞かせてもらうことにする。ふたりめにして、最後に登場してもらうのは、女優の青柳いづみさん(左)だ。 藤澤 最終回はニットがいいかなと思って、今日はアラン諸島で買ったニットを着てきました。 青柳 アラン諸島って、外国の? 藤澤 そう。アラン諸島に行ったときに買ったやつ。 青柳 これは箔押ししないの? 藤澤 しないの。資料として買ったのでほとんど着てないんで

10年前のことと、今のこと/アランニット制作日記 3月前編 その2

 和平さんと出会った頃、ゆきさんは古着や小物に箔を施す「NEW VINTAGE」というシリーズを始めたばかりだった。一方の和平さんも、写真を撮り始めたばかりだったという。 藤澤 最初に会ったときから、私の中では「服が好きな、写真を撮ってる、かずへりんくん」みたいなイメージだったかも。 木村 じゃあもうカメラは触ってたのかな。 藤澤 カメラはね、提げてた気がする。その姿がすごく記憶にある。おしゃれで、カメラを持ってて、背が高い。 木村 写真の入りは、作品制作とかじゃなく

写真家・木村和平さんとの出会い/アランニット制作日記 3月前編 その1

 昨年7月から始まった「アランニット制作日記」は、今月で最終回を迎える。その締めくくりに、「記憶の中のセーター」を実際に着てきた人に話を聞かせてもらうことにする。ひとりめは、写真家の木村和平さん。春の日、吉祥寺で待ち合わせて、話を伺った。  2019-2020の「記憶の中のセーター」のビジュアル撮影をしてくれた木村和平さんは、ゆきさんと古い付き合いだ。ゆきさんは和平さんのことを「かずへりん」と呼ぶ。和平さんが最初にゆきさんの作品に触れたのは、2012年にデザインフェスタギャ

シーズンを終えるその前に/アランニット制作日記 2月後編

 寒い冬を凌ぐためには、ニットは手放せないアイテムだ。でも、セーターやカーディガンは、肌に直接触れないこともあり、「洗濯する」を意識せずに済ませてしまいがちだ。 「全く洗わずに着てる方もいると思うのですが…こまめにお手入れした方が長持ちすると思いますよ。秋冬物は色も濃いし汚れが目立たないのですが、花粉やホコリが溜まったり襟や袖に皮脂が付着したままにすると、生地の劣化の原因になるので、定期的なお手入れをおすすめします」 ニットの洗い方についてはこちらの前編もぜひお読みくださ

ニットのお洗濯のこと/アランニット制作日記 2月前編

 今年は閏年で、2月がいつもより1日長くなる。2月が終わりを迎える日、ニットのお手入れについて教わるべく、ゆきさんの自宅を訪ねた。 「ニットをどう洗っていいか、悩んでる人は多いんじゃないかと思うんです」。出迎えてくれたゆきさんは、お茶をグラスに注ぎながらそう話してくれた。「でも、全然お伝えできるタイミングがなかったから、この機会に、ニットの洗い方をお知らせできたらと思います」  クローゼットから取り出したのは、2014-15年に制作した“記憶の中のセーター”だ。前回の日記