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【幼稚園探し⑥】面接で再びドアに執着〜幼稚園選び完結編〜

前回のお話です↓

2022年10月、C幼稚園とD幼稚園の事前面接を受けることになりました。

C幼稚園の面接当日は土砂降りの雨が降っていました。
C幼稚園の面接で息子は緊張はしていたものの、前回のB幼稚園の面接時のように極端にドアに執着するといった行動は見られませんでした。
C幼稚園からは無事に入園の許可を貰えて胸を撫で下ろしましたが、当時なぜ息子がドアに執着する日としない日があるのかがわかりませんでした。

後にわかったのですが、息子が極端にドアに執着する条件は場所見知りや人見知りなどの極度の緊張下に加え、子供の声などの大きな音が聞こえるという状況が重なった時でした。
ドアの開け閉めは息子が心を落ち着かせるためのSOSだったようです。

C幼稚園の面接当日は土砂降りの雨が降っていて、園舎の中に響く園児の声や合唱の声は雨音で全てかき消されていました。
そのためパニックを起こすことなく過ごせたようです。

しかし、当時はどんな時にドアの開け閉めを繰り返す行動に出るのか私は理解できず、目に見えない時限爆弾を抱えているかのような気持ちでした。

【D幼稚園の面接で再びドアの開け閉めを始めた息子】


C幼稚園から無事に入園の許可は出ましたが、念のためD幼稚園の面接にも行くことにしました。
D幼稚園は1学年に2人程度は療育に通う子を受け入れている幼稚園です。

D幼稚園の面接当日は暑さの残る日でした。
面接時間はたまたま在園児達が園庭で運動会の練習をしていた時間帯で、園の外にまで園児達の賑やかな声が漏れ聞こえていました。

面接は私と息子と園長の三人で行われました。
D幼稚園の玄関から中へ入ると、園庭から聞こえる園児の賑やかな声に息子の身体が強張るのを感じました。

階段を登り、教室に入ろうとすると息子は教室に入ることを拒絶しました。
私が先に教室に入り中から声をかけると息子は目に涙を溜めて震えています。

その時園庭からマイクの音が聞こえると、息子は完全にパニックになり、再びドアの開け閉めを始めました。

あぁ、終わった。この幼稚園にも入園を断られる。

私はドアに執着する息子を見てそう思いました。

私は既に教室の奥に居た園長に「すみません」と頭を下げました。

園長は「いいえ」と言い、しばらく考えた後「息子くんは電車はお好きですか?」と聞きました。

突然の問いに戸惑いましたが、私が息子が電車が好きであるということを伝えると、園長は引き戸の開け閉めを続ける息子にそっと近づきました。

そして息子が引き戸を閉めるタイミングに合わせ、園長は


「ドアが閉まりまーす。ご注意ください」


と言いました。

その言葉に激しく引き戸を開け閉めしていた息子の手は一瞬止まりました。

再び息子がドアを開けるタイミングに合わせ、園長は
「ドア開きまーす」
と言います。
また息子がドアを閉めると
「ドアが閉まりまーす」
と園長が電車のアナウンスの真似事をします。

息子がドアの開け閉めする速度は段々と緩やかになり、緊張していた息子の顔が次第に綻んで行くのがわかりました。

そして、息子は満足したように扉から離れて自分から教室へ一歩だけ入りました。
しかし、息子の緊張は完全に解れたわけではないので園長には背を向け、外を眺めています。
園長は息子と適度に距離を取りながら息子の横へしゃがみ、息子の視線の先を観察しているようでした。
息子が青空の中を飛んでいる鳥を目で追っていることに気づいた園長はそっと「鳥が飛んでいるね」と声をかけます。
別の教室から園児達の歌が聞こえてきて息子の身体が反応すると、園長はすかさず「ピアノの音が聞こえるね。どんぐりコロコロの歌は知ってる?」と話しかけます。

今度は園長が「トンボが飛んでいるよ」と指差すと、息子もそちらの方向を見ます。
恐らくこれは共同注意がどの程度働くか見ているのかな?と感じました。

園長がそうやって少しずつ息子と距離を詰めていくと、やがて息子は園長とアイコンタクトが取れるようになりました。
短い時間の中で息子は拙いながらもある程度の受け応えも可能になり、笑顔も時折見られました。

園長は
「息子くんは目も合いますし、言葉も出てますから入園には問題ないですね」

と言い、入園の許可をいただきました。
そのあとは現在息子がどのような療育に行っているかということや、どんな困りごとがあるかの聞き取りが行われました。
この園長の事前面接は息子を試すための面接というよりは、息子のことを深く知るための面接といった印象を持ちました。

今まで訪ねた園では、大人が主導になっておもちゃや絵本で子供の注意を引く先生がほとんどでした。私はそれがプロのやり方なのだと思い込んでいました。
しかしこの園長は息子の興味のあることや注目していることを注意深く観察し、子供に合わせて距離を段々と縮めていきました。
息子に合う幼稚園を探していくつもの園を見てきましたが、息子に対してこのような働きかけをした先生に出会ったのはこの園長が初めてでした。
凄いなと漠然とした感想を抱きました。

私はそれまで息子の発達を知った上で入園を許可してくれる幼稚園ならどこでも良いと思っていました。
しかしこの時は息子をこの幼稚園に入れたいと強く思いました。

園長の凄腕エピソードは他にもあるのですが、実際に息子が4月からこのD園に入園してみたところ、保健所の訪問だけではなく、児童発達支援施設の訪問支援も積極的に受け入れている幼稚園でした。
園では園児達が快適に過ごせるように積極的に外部からの意見を取り入れています。
また現場の先生方も療育に関する知識の共有ができていて、この幼稚園を選んで良かったと思いました。


前回のお話↓幼稚園落ちた話

↓幼稚園選びの1話です


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