[漫画&ブログ] カワムラくん 第4話 ~ぬかづけくん~
この漫画を読んでくれている人の中には、私のようにうつや不眠のお薬を飲んでいる人もいると思います。そういう薬に対する「中毒」とか「依存」って結構ありますよね。覚せい剤とかの依存も、全然他人事じゃないのです。例えば、私は毎日睡眠薬を飲まないと眠れないのですが、「1カ月くらい毎日よく眠れているからそろそろ睡眠薬を止めようかな」と思って飲まないで眠ると、不眠症が復活するのです。これは、本当は不眠症は治っているのに、薬を抜くと無意識下で「またあの眠れない嫌~な日々が来たらどうしよう…」のマインドが現れて、そのプレッシャーで眠れなくなるという事なんです。そしてそれが何日も続き、本当に不眠症が再発してしまうのです。正常な人にとっては「えっなにそれ!?」だと思います。しかも私の不眠症は寝付けないタイプではなく中途覚醒(目が覚めてしまう)タイプなので、ひつじを数えて眠りましょう的なのも効果が無いんです。眠っていて目が覚めちゃうのって完全に無意識で、自分ではコントロールできないんですよね。つまり、本当は不眠症が治っていても、「この薬を飲まないとやばいんじゃないか」という無意識がある限りは、薬を止められないというわけです。これを心理的依存と言います。
一方、うつの薬に関しては、止めると強い離脱症状が出ます。具体的には頭痛、体のふるえ、吐き気、下痢、発熱、考えのまとまらなさ、不安感、なんかもうだめだという感覚、などきりがないです。禁煙をする時に出る感覚の強いバージョンです。これは↑↑のような無意識とか気分の問題ではなく実際に出てくるもなので、身体的依存といいます。
…というか、離脱症状はうつの症状にも似ています。なのでその体調不良が、薬の離脱症状なのか、薬を止めた事でうつが再発してるのかすらわからないのです。どちらにしても薬を飲むと治るので、ますます「この薬を飲まないとやばいんじゃないか」という依存が強くなってしまうのです。
睡眠薬もうつの薬もこの10年で、何度も止めようとトライしました。そして一時的に止められた事は何度かありました。けれども結局、ちょっとしたきっかけで不眠もうつも復活してしまい、「ふとんから起きられないようになるくらいならまた薬を飲み始めるか…」という感じを何度も繰り返しています。私は結構ど根性タイプなので、基本的にうつ状態や不眠は我慢します。がんばって薬を止めたんだから、もう飲みたくないですしね。でも我慢しても不眠やうつが治るわけではないので、睡眠時間3時間とかが何か月も続いて、でも薬は飲みたくない、でも体も精神もつらい、どうしようという葛藤があるんですよね。それに加えて、夜中に目が覚めて「うわまたこれか!」というテンションになり、そこから発展してパニック発作が出てしまう事も多かったんです。パニック発作自体の辛さに加えて、それが夜の3時とかに一人孤独というシチュエーションなので、それが心理的にも身体的にも本当にダメージが大きく、それが↑↑で書いた「またあの眠れない嫌~な日々」となるわけです。つまり、「薬をやめる→また具合が悪くなる→我慢する→我慢しきれなくなって薬復活」のサイクルが繰り返される事によって、「この薬を飲まないとやばいんじゃないか」という無意識の心理的依存が強化されてしまうという事なのです。完全にザ・悪循環ですよね。また、うつ病の症状自体も非常につらく、それは不眠によって再発してしまうので、ますます眠れなくなる事に敏感になってしまうのです。
生活していれば、ちょっと眠れない時があったり、嫌いな人との関りが出てくるのは避けられません。私のここまでこじらせてしまった感じは、戦争に行って嫌~な思いをしてうつ病になってしまった人が、戦争から帰ってきて10年間平和に暮らしてうつ病も治ったんだけど、何かのきっかけで戦争の写真か何かを見ちゃったらあの嫌~な戦争を思い出してうつが復活してしまったみたいな事だと思います。そのきっかけのダメージ自体は大した事ないんだけど、それによって「あの嫌~な日々」が復活してしまうんですよね。これをPTSDといいます(現代のネットスラング風に言うと「トラウマ」で、本来はこういう戦争の後遺症から来た言葉です)。
そうなっちゃうと、戦争から帰って来た人であれば、生活から極力戦争の事を遠ざけるしかありません。戦争が出てきそうなTV番組は見ないとか、本屋でそういう本がありそうなコーナーには行かないとかそういう事です。私の場合も、不眠に繋がりそうな行動は全て避けています。コーヒーを飲まない事は基本で、お酒はほんの少しだけにしたり、あと友達と夜に会うこともできません。夜に脳のテンションが上がってしまうと眠れなくなってしまうのです。メールの返事もあまり夜にはしません。夜に脳を強めに使うと脳が過活動して眠れなくなってしまうからです。あと、寝る前にスマホはもちろん見ず、ベッドに入るまでの30分くらいは必ず漫画の下書きをして、脳をリラックスさせます。また、安眠のためには適度に体温を下げる事が必要なので、寝る前の歯磨きは必ず庭でします。でも冷やしすぎると不整脈が出るので、長く外にいすぎるのはNGです。そして睡眠のリズムが崩れないよう、休みの日も朝寝坊はしません。どんなに疲れてて眠くても、いつもと同じくらいの時間に起きます。私のうつは不眠症から発症してしまったので、不眠を再発させない事が大前提なんです。また、直接うつが復活するのを避けるために、以前住んでいたマンションの近くには極力近づかないようにしています。私の10年のうつ病期間は、ほぼそのマンションで暮らしていたからです。あと夜に小説を読むのも危険です。考えが深くなって、うつが復活してしまうのです。子供の多い場所にも行きません。悲しくなるからです。私の住んでいる街は人口密度が非常に高く、そのストレスがうつの原因でもあったので、人の多い場所や道は全部避けます。歩いて5分の所にスーパーがあるのですが、駅前で非常に人が多いので、そこには行かず、歩いて30分のスーパーに行きます。週2回の休日には必ずこの街を離れて、車で1,2時間かけた田舎まで小旅行に行って、脳をリフレッシュさせます。しかし帰りの高速道路が運悪く渋滞していて夜まで運転するはめになると、夜眠れなくなる確率が上がります。夜に脳を使ってしまっているからです。こう書くと我ながら、生活を制限しすぎて頭がおかしい人のように思えます。でもPTSDってそういう事ですよね。戦争から帰ってきてうつ病になってしまった人もこんな感じなんだと思います。ただ、それに加えて私は朝起きた瞬間から、「今夜はちゃんと眠れるだろうか」と考えてしまうんです。そういう、生活に制限をかけすぎな事がまた、不眠を誘発しているともいえます。それだけ睡眠を意識しすぎてしまっているという事ですもんね。かといって調子に乗って夜に友達とZOOMなんかしてしまうと、ほれみた事かという感じで眠れなくなってしまうのです。つまりこの山のような制限もまた、10年間の試行錯誤の結果、そうなるしかなかったんです。漫画では私たち夫婦には「今」しかないと描きましたが、結局その大切な「今」すら病気によって制限がかかり、憂鬱な気分がつきまとい、100%楽しむ事が出来ないのです。妻ちゃんと田舎に小旅行に行って、お昼に寄ったカフェでサービスのコーヒーが出ちゃったりするだけで、「これを飲んだら夜眠れなくなってしまうかも…」と、また不眠の事を思い出してしまうのですから。それもまた、私が日々絶望しながら暮らしている理由の一つだと思います。このブログは最初の頃と比べると暗い内容が増えた気がするのですが、それも、何年か前であれば不眠もうつも「いつか良くなる」という希望があったんです。でもさすがにもう「一生このままなんじゃないか」という気持ちの方が大きくなってしまったわけです。10年も戦っていたら心が折れてしまいました。
…と、いうのは去年までの話で、なんと今年、大きなメンタル改革が起きたのです!EMDRという治療法を聞いた事があるでしょうか?これはPTSD患者に行われる心理療法で、簡単に言うと嫌な記憶を思い浮かべながら目を左右に動かすとその嫌な記憶が消えるというものです。「ほんとか~?」って感じがしちゃいますよね?
うちの近くのメンタルクリニックでこの治療法が行われていたので、最初は半信半疑で取り組んでみたのですが…なんと!夜中に目が覚めてもパニック発作が出ないようになったのです!つまり、夜中に目が覚めてしまう事に対する恐怖の記憶がだいぶ消えたという事です。そうなると心理的にもぐんぐん楽になりました。朝起きた瞬間から「今夜はちゃんと眠れるだろうか」と考えてしまう事も減りましたし、一日中「今夜は眠れるだろうか…」と考えちゃう事も減りました。今月からは、コーヒーも早い時間帯であれば飲めるようになりました。睡眠薬だけは、まだ飲むのをやめると眠れなくなってしまいます。でも、このまま不眠症に対する「克服したぞ!」的な自信がつけば、いつかはやめる事ができる気がします。また、うつ病に関しては今でも、嫌いな人に会ったり辛い事を思い出す場所に行ったりすると再発のリスクがあります。今のようなポジティブな気持ちを保てているのも、うつの薬が効いているからというだけな気がします。でも、いつか不眠症を克服できれば、その勢いでうつ病も克服できる事に期待しています。嫌いな人と言ったって、私の人生で嫌いな人は漫画に描いた2人だけなので、まあぜんぜん避けられるレベルですしね。
EMDRの病院を見つけてきてくれたのは妻ちゃんでした。おそらく妻ちゃんは私に対して申し訳なく思っているんだと思います。家族の毒に巻き込んでしまった事、人口密度の高いこの街に住ませてしまった事(ここは妻ちゃんの地元です)、そして子供がいない事などです。私は少しも妻ちゃんを責める気はないですし、むしろ妻ちゃんが一番の被害者だと思っています。そういう愛する存在が、自分のために苦しんでいるとしたら、私にとっては不眠症よりも辛い事です。そういう意味でも、私はこの病気を克服していきたいのです。私自身にはもうこれといった希望はありません。もちろん漫画の連載が早く始まらないかなといった、楽しみ的な希望はあります。…が、人生における本質的な希望は特に無く、あとは最後の時まで出来る限り楽しく、他者へ敬意と愛情を示しながら、この先周りの人が一人一人死んでいく事に対しての強さを保ち、そして最後にみじめな思いはできるだけ少なめに、一人で死んでいければそれで良いです。そのためには、身の回りの世界を正しく見れる事が必要です。良いものは良い/悪いものは悪いと正しく判断し、大切にすべき存在/避けるべき存在を分別する事です。心の病気になるとその判断や基準がおかしくなります。世界を正しく見れなくなっちゃうんですよね。自殺してしまったりODや自傷行為をしてしまったり、毒になる相手との関係を繰り返してしまう人は、世界の見方がいびつになっているという事なんだと思います。悲しい事ですよね。そして私もそういう人たちと紙一重の場所にいるわけです。自分が病気を克服できたら、そのプロセスをまた漫画にして、何か悲しい人たちへのヒント漫画が作れればいいなと思っています。それもまた、ちょっとした希望です。ここまで読んでくれてありがとうございました。
[おまけ]
このブログを書いていて思ったんですが、私はいわゆる「枯れたおじさん」の状態なんだと思います。ぼんやりした絶望感とか、死について考えたりとか、慢性的なうつ状態という事ですね。47歳だしまあそんなものか…中年クライシスとか言うしな~…いやでも10年前からだから普通にうつ病のせいか…と、考えたりもします。女性のマニアックな好みのタイプとして「枯れ専」とか「おじさん好き」とかを聞いたことがあるんですが、確かに妻ちゃんを見ていると本当にラクそうなんです。仕事のお昼休みに庭で、枯れ木みたいなおじさんが黙々とお花のお手入れをしている横で犬をなでながら日向ぼっこをしているわけです。これがエネルギッシュな男性だったらあまり無い光景ですよね。何かと行動してしまい、それに妻ちゃんもひっぱられてしまいます。むしろ妻ちゃんに色々要求をするパターンもあるでしょう。お互いエネルギッシュならまだいいかもしれませんが、弱ってしまった女の子にとってはこういう枯れ木おじさんのほうがラクで、つまりは「枯れ専」なんて言葉が出てきたのも、世の中が慢性的に疲れて弱っている証拠だったのかもしれません。逆の男性目線だと、女性の好みタイプとして「癒し系」という言葉もありましたしね。少なくとも「おじさん好き」という言葉にひっぱられて、女の子に積極的にモテようとしたり、ちょいワル親父になってみたりするのはトンチンカンなんだろうな~と思いました。…というふうに、連想ゲームみたいに考えが連鎖した内容を、いつも漫画にしています。次回も楽しみにしていてください。