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[#仕事について話そう] 杉村くん 第15話 ~晩田くん~
今回出てくる友達二人にもモデルがいます。二人とも地元で親友と言える間柄です。
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今回はブラックな労働環境のお話です。晩田くんは小2からの友達で、もう一人の彼は毒島くんと言って保育園から一緒です。
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それぞれ漫画なので脚色してありますが、元から結構キャラ立ちしている友人達なのです。晩田くんは漫画の通り、飲食チェーンに20年以上勤めていて、よく「昨日まで15連勤だったわ~」と言っています。毒島くんもブラックな外国人派遣会社に勤めていて、深夜にLINEを送ると「まだ会社です!」とか返事が返ってきます。取引先が建築系が多いため、ヤクザみたいな社長によく詰められているようです。私は今までいろいろな友達がいましたが、男女関係なくだいたいみんな大変そうでした。妻の友人はもっとひどくて、パワハラが多く自殺した人がいたり、4人友達のうち3人が重い病気にもなり、そのうちの一人は抗ガン剤治療をしながら仕事に行っていました。
私も現在までろくな仕事をしていませんでした。基本ずっとバイトで、どれも今で言うブラックバイトでしたし、10年くらい前に自分の会社を立ち上げてからは働きすぎて体を壊しました。現在は妻と二人の自営業で比較的楽な仕事内容だと思いますが、不安定ではあります。
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ブラックな労働環境は避けたいですよね。世の中的にはそれを回避する手段の一つが学歴ということになっていると思います。私は元はアホウでしたが、実は受験の時にミニ覚醒して立教大学というまあまあの大学に通っていた時代がありました。
けれども、そこは育ちの良いとこ出身の学生が多かったんです。ヤンキーばかりの土地から来た私はそこではちょっとズレてる感じでした。一応立教で仲良くなった友達も、育ちが良くてもパンクのバンドをやっていたりネタを食ってたりオタク系だったりと、ややズレが多かったので楽しくやれてはいましたが、やっぱり上流階級の範囲でのズレなので、最終的にはちゃんとみんなネクタイをしてスーツを着る仕事に就いていました。私は就活すらしていませんでした。就活の仕組みも全然理解できませんでした。そもそもみんなのようになれる気もまるでしなかったのです。つまり、学歴を人生に活かすのは私には向いていなかったのです。
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もう一つのブラック回避手段はお金だと思います。大金を持っていればブラック企業で働く必要もなくなります。お金は万能にも思えますよね。でも以前の、私の妻の家庭をモデルにした漫画を覚えているでしょうか?彼らも裕福で社会的地位が高く、上級国民の一種だと思います。…が、本質的に毒の家系なのです。言い換えればブラック家庭です。
特に母&兄の二人は良いものを食べて育ったからか、「どこどこのなになにはまずかった!」ばかり言います。晩田くんの勤める飲食チェーンの食事なんて豚の餌くらいに思っているかもしれません。それプラス、上級の人って自分が優秀なランクに行けてもさらなる優秀が常にいる環境なのでコンプレックスが蓄積しやすいと思うんです(実際、二人ともそうです)。そしてそのメンタルのバランスをとるために自分より弱者を叩くパターンがあるのではないでしょうか。私の妻がその叩かれる役割でした。心と体を壊してしまったのはそれが原因です。今回の漫画のようなクレーマーもそれと同じく心に鬱屈を抱えていて、反抗できない店員を叩くパターンが多いですよね。私の育ったヤンキーワールドはそのへん全然ラクで、みんな出来が悪いためそういう面でのコンプレックスは感じづらかったんです。でもそういう中でも弱い者いじめをする人はいて、それはやはりコンプレックスからきていました。
妻の家庭の内側に入って以降、結局お金があっても上級ワールドにいてもブラック環境が出来上がることがあるんだなと思いました。つまりお金や学歴は万能ではないということです。もちろん、自分の周りが世界の全てではありません。お金や学歴を駆使して幸せに暮らしている人も大勢いるはずです。でもどういうわけか自分含め近しい人にはほとんどいませんでした。なので結局は適性なんじゃないかと思うんです。お金とか学歴は合う人には合うというだけで。
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その証拠に、私と晩田くんは大変さを結構楽しんでもいるんです。楽しむというのは快楽という意味ではなく、何か意味あるものに変えているということです。私はこのように漫画やブログにすることで「人生ってなんだろな~」みたく考えることが増えましたし、晩田くんもネクタイを締める本社勤務はせず現場にこだわるのは、仕事仲間とのコミュニケーションが楽しいからのようです。そこは子供の頃のキャラと全然変わりません。一方毒島くんは↑↑の漫画のように家庭があまり落ち着いていなかったのでコンプレックスをためやすく、学歴があれば~!お金があれば~!ばかり言ってます。そして猟奇的なエンタメが大好きで、ちょっと闇を感じます。コンプレックスから闇につながるのは妻の家族ともリンクしますよね。つまり、階層は違ってもみんな本質は一緒だと思うんです。
今回漫画に描いた3人、あと私の妻も、社会の下支えをする人たちです。そういう仕事はきついものになりやすいですよね。そして綺麗ごと抜きに言えば、人手不足になって外国の人に安い給料で働いてもらうのはまさにこの層だと思いますし、毒島くんはまさにその派遣業ですし、そしてそういう仕事はしたくないと思っている人がほとんどではないでしょうか。小綺麗な髪型とスーツで、都心のキラキラしたオフィスで、昼はオシャレなランチで…みたいのが理想なのではないでしょうか。私が過去いろいろバイトをやっている中には、ネクタイを締めてスーツで勤務するものや、六本木周辺のオシャレな会社もありました。でもそういうものが良いとはまるで思えなかったんです。オシャレなランチよりも意識の低い友達と豚の餌を食ったり、妻ちゃんと町田町蔵や蛙化現象の話をしながら犬の肛門腺をしぼってるほうが楽しいのです。ひょっとしたらそれは以前描いた↓↓の漫画のように、自分のしていることに具体性が欲しいのかもしれません。犬のトリミング、飲食店の厨房、漫画家…どれも具体的ですよね。実際に手を汚して具体的なことをすることは、自分がこの世界にダイレクトに存在しているのを実感することだと思うんです。そこは妻ちゃんも同じで、同じペット業界でも綺麗なオフィスでペットフードの企画開発よりも、実際にペットを触るトリマーのほうが好きなようです。
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子供の考える将来なりたいものが、〇〇屋さんとか〇〇の選手みたいに具体的なのも同じ理由かもしれません。子供はまだ生まれて10年とかなので、まだ世界とのつながりを感じたがっている段階というか。そして我々はそういう子供っぽい所を残したまま大人になったんだと思います。そういう人たちは自分にはとても愛おしい存在です。上級の彼らが「〇〇はまずかった!」と言う時、それを作っているのはそちらの愛おしい側の人間で、そして階層の違う彼らも本質は一緒なのにな…とよく考えます。住んでいる家だって建ててくれたのは毒島くんの派遣した外国人なのかもしれません。私の地元友達はそんなふうに上級をななめに見ている人が多かったです。負け惜しみだった部分もあるかもしれません。でも適性も大きいと思います。少なくとも自分には上級も育ちの良い世界も合わなかったのですから。
長々と書いてしまいましたが、つまりは今回の漫画の最後に描いた「この社会はどこに向かっているのか」「我々は消耗品」というのは、「ボクたちはこんなにかわいそう!」というアピールじゃなくて「そういうのはやめましょうね」ということを言いたかったのです。金持ちも貧乏人もそれぞれの幸せと不幸があるということです。私は死んだあと天国で神様だか閻魔様に「次回の輪廻転生何がいい?」と聞かれたら、また自分に生まれたいです。そしてもうちょっと漫画でこういうのを上手く表現できるよう、再チャレンジしたいな~と思います。