[#私の作品紹介] オッサンの気づき 第23話 ~化石発掘に気づいた!~
[10/14追記]を更新しました。
こちらが漫画に登場した、つるみさん作のグッズたちです!嬉しいですね~!これは作中に登場するケルベロくんというキャラクターです。
特に私はこのつるみさんオリジナルの服装がすごく好きです。つば裏の水色も効いてますし、元デザインの首輪の上にパーカーをかぶせて首元にボリュームが出てる感じが、マウンテンパーカーぽくもあってすごく今風のシルエットに見えるのです!
こういうのって若いかたの感性ならではだと思うんです。生活の中で無意識に「今」が目に入って記憶に残り、デザインの際にその要素がスっと出てくるという。そして何よりファン活動を楽しんでくれている感がキャラのニコニコした表情にも表れていますよね。
この地獄ようちえんという作品は、KADOKAWA×ニコニコ動画の「テンキャラグランプリ」という番組から生まれた作品です。2010年~2011年の放送だったと思います。「10年愛されるキャラクターを作ろう!」がテーマでした。司会は津田大介さんと浅野真澄さん、ゲストは毎回変わって、唐木元さん(当時のコミックナタリー編集長)や新條まゆ先生、井上伸一郎さん(当時のKADOKAWAの社長)など、メディア展開の際に声を当ててくれた声優も有名どころ揃いで、AKB48のかたも一人いらっしゃいました。結構力の入っていた企画だったと思います。
当時私は自分の会社をやりながら、でも漫画的なものにも未練があって…という感じでした。そしてこの番組のことを知って、地獄ようちえんの企画を送ったのです。おおまかなコンセプトは、主人公のキイチくんがアルバイトをする幼稚園が、実はモンスターの子供たちだらけだった!というものです。「10年愛されるキャラクター」というよりは「10年愛される世界観」で考えました。まずキャラクターが大勢登場する枠組みを設定し、読者からキャラクターを募集して、それが作品に登場するというものです。キン肉マンやロックマンと一緒です。キン肉マンはプロレスという枠組みで、ロックマンは悪のロボットという枠組みで、それぞれファンからキャラクターを募集して、作品内に登場させていました。もちろん私も子供の頃送ったことがあります!
そして読者がデザインするときにテーマがあると楽しいと思うので、モンスター×幼稚園児にしました。モンスターなのは、私がドクロとか悪っぽいものが好きだからです。そして幼稚園児の理由は、「〇〇だけど△△」がキャラクターの魅力に直結すると思っているからです。例えばドラゴンボールのゴクウで言えば「バカだけど強い」となります。ナルトも「元気そうに見えるけど悲しい過去がある」ですよね。真逆の組み合わせ、ギャップと言い換えても良いと思います。つまり「幼稚園児だけど強くて極悪なモンスター」というわけです。ねんどろいどというミニフィギュアの人気が出始めた時代でもありましたし、ちびキャラの時代が来るんじゃないかとも思っていました。
最初にこういうふうにデザインが投稿されて…
これをデザイン担当の大塚リンタロウさん(彼女も投稿者の一人です)が形にして…
そしてメディア展開の際、漫画は軍島曹一郎さんが、アニメはTNSKさんが担当しました。
ちなみに私のオラつき自転車には、投稿者のかたが作ったシールも貼ってあります!実は私も毎日ミニサーカスをしていたのですね。
地獄ようちえんというタイトルは漫☆画太郎先生の地獄甲子園のリズムをモチーフにしました。俳句が5・7・5であるように、7のリズムは耳と口に心地いいんです。口に出しやすいタイトルは大事だと思います。
当時は2010年で、世の中はギャル男ブームが落ち着いてAKBや韓流アイドルが盛り上がってきて…と、一見元気な感じでしたが、何か病んでいる空気も目立つようになっていたのです。ギャル界隈は病みの裏返しにも見えました。そういうのもあって、登場する幼稚園児や人間のキャラクターの設定にも「親が教育ママ」とか、「野球が好きだけど自分は女の子だから野球部には入れない、なのに弟は高校球児でコンプレックスを感じている」など、ちょっと切ない要素も入れるようにしました。主人公のキイチくん(人間です)も元ひきこもりで、社会復帰を目指してこの幼稚園でアルバイトをするという設定にしました。ひきこもりになった理由の「生まれつき霊感があって無意識に幽霊を呼び寄せやすくて周りに迷惑をかけてしまう」という部分も、発達障害をモチーフにした設定です。
…が、あまり編集者には理解してもらえませんでした。まだその「一見元気な感じ」のほうが世の中的には主流だったからだと思います。漫画は多数派に向けた商売という面が強いですし、KADOKAWAという大手だとなおさらです。
番組は毎回楽しく、共演者や投稿者とも仲良くなれました。何か見た目でキャラ立ちしたほうがいいんじゃないかと思って、バンドTシャツを着ていくことが多かったです。以前のブログに書いた、私が英語で漫画を描くようになったきっかけの友人と知り合ったのもこの番組からです。彼も似たようなことを考えていたのか、よくアフリカの民族衣装を着て出演していました(アフリカで仕事をしていた人です)。他にも今でも交流のある人が多く、コロナ前までは年に1回くらいは集まっていました。また当時はニコニコ動画全盛ということもあって、視聴者は毎回数万人まで増え、最後の表彰式の幕張メッセも大きな会場で、レアな体験ができたのも良かったです。そしてやっと報われたのか?!…と喜んでた落差もあって、その後名前が消えてしまったことはずっと小さなトゲが心に刺さったようだったんです。そして今回の漫画に描いたように、つるみさんと知り合ったことでひと段落できたということです。結局、作品を作るというのは自分にとって、自分が何か他者に働きかけたいということなんだと思います。この社会はお互いの働きかけで成り立っています。自分もその一員になりたいという、群れで生きる動物の自然な欲求ですね。自分がいて、仕事があって、またその先に人がいるという、それの集まったものが社会というわけです。
最後に、私が今回の漫画を載せた後、つるみさんは「学校が辛かった時もケルベロくんがいたから乗り越えられた」とツイートしていました。自分の周りにはそういう悩みを抱えていた人が多くて、それもあって主人公は似た属性の「元ひきこもり」にしたのです。表面的にはテンキャラグランプリの概要に沿った「10年愛されるキャラクター」として企画を出しましたが、自分的には彼らが持っているような表に出てこない苦しみを親しみやすい作風で伝えることを裏テーマにしていました。メディア展開の際はそこまで表現は出来ませんでしたが、結果的につるみさんの背中を押すことができていたのはすごく嬉しかったです。10年前には今のこの気持ちが想像できなかったように、今から10年後にも想像できない嬉しいことが待っているかもしれません。私もまた背中を押されているのです。それは漫画を読んでくれたりコメントをくれる人たちからも同じように感じています。いつもありがとうございます。
[10/14追記]
なんと!つるみさんがケルベロくん痛バッグを作ってくれました!どうですこの愛!嬉しすぎます!
痛バッグとは、簡単に言うとバッグを好きなキャラでDIYデコレーションしたものです。こんなふうに痛バッグ用のクリアバッグを買って…
こういう感じにデコるのです!
私の若い頃に流行ったデコ電を思い出します。
痛車というものもありますよね。
私がこの、「好きなものでデコレーションする」文化を初めて知ったのは、ビジュアル系ファンのかたのトランクでした。中学生の時初めて原宿に行った時、駅のあたりでXやルナシーのファンの人たちがたくさんいてビックリした覚えがあります。
その後パンクロックが盛り上がってきて、私も好きなバンドの缶バッジをジャケットにつけたりするようになりました。ライブでも買えますし、高円寺にもそういうお店が多かったです。
バンドTシャツやパーカーも、だいたい1年中着ています。今日はHOTSQUALLという、うちの近所出身のメロコアのバンドです。
なので、実はつるみさんの痛バッグDIYはすごく自分も共感できるファン活動なのです!「好きなものは身に付けたいな~」プラス「なんか周りにアピールしたいな~」なのです。缶バッジを作るにはイラストを描いて、業者に発注して、さらに一つアクセント用にかわいく飾りつけまでして…と、その作業はすごく手間がかかるし楽しいんですよね。
パンクおじさんの私もジーパンを買って自分で穴開けたり、革ジャンは固いので缶バッジのピンがなかなか通らなくてエイッ!グイッ!とやって自分の指に穴が開いたりしてたのでよくわかります。それを私の作品でやってくれているというのは物を作る人間として大きな喜びです。しかもよーく見るとケルベロくんの首輪まで付いています。凝っていますよね!
漫画に描いたようにちょっと残念なこともありましたが、こういう楽しい出会いにつながりました。点が連続して線になるのが人生ですね。点で見たらネガティブでも、線で見たらポジティブに落ち着いてたということです。こういう変化があるほうが日々楽しくなりますよね。これからもよろしくお願いします。