6.やっと手に入れた安全地帯
28歳になった今現在。
私は一人暮らしをしている。
祖父母と暮らした家と、伯母の家
両方があるのと同じ市内に。
4年前、祖父が亡くなり
祖母は一人暮らしとなった。
17歳のトイプードルくんも一緒に
1人と1匹で仲良く暮らしている。
私は、誰よりも祖母が大事なので
祖父が亡くなった後すぐに引っ越しを決めた。
ひとりになった祖母が心配だったのと
祖母とあと何回会えるか分からない事が
急に怖くなってしまったから。
その結果、職場までの通勤時間は
長くなってしまったが
家が近くなった分、祖母が手作りのおかずを
たまに届けてくれるようになった。
会える回数も、増えた。
よく一人暮らしです、と言うと
実家の場所を聞かれ、同じ市内だと答えると
大抵の人は訝しむ様な口調で
近いなら一緒に住めば良いのに、と言う。
血の繋がりが絶対だと思っている人が
一定数いることは分かっている。
それを否定するつもりも無ければ
ひとりひとりを説得する気もない。
私はただ、お金で安心を買っているのだ。
貯金もまともに出来ない薄給だけれど
一人暮らしをしている限り
夜中に起こされて理不尽に叱られる事も無い。
突然家を出て行けと言われることも無い。
私だけの、安心できる居場所。
ずっと居てもいいんだよ、
ここはあなただけのものだよ、と
私が自分に与えてあげられる場所なのだ。
たったこれだけの安全地帯が欲しいが為に
とても遠回りをしてしまった。
転勤有りの職種を選び、合法的に家を出た。
誰も文句が言えない様、正当な手段で。
一人で生活するのは寂しいし、
何よりもこのご時世不安が大きいけれど
私は、あの頃憧れた、
自分だけの安全地帯を守っていくのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?