「エジプト-古代と現代が交差する国」
1.エジプトへの旅を決めたきっかけ
夫が子供の頃から抱いていた夢。それは、実物のピラミッドを自分の目で見ることだった。考古学に携わる仕事をしているわけでもない普通のサラリーマンの夫だが、歴史チャンネルを見ながら「いつか必ず行くんだ」と呟くその姿に、私はずっと微笑ましさを感じていた。
治安の懸念もあったが近年は観光地としての整備も進み、以前ほどの不安要素は少なくなっている。それに、今行かなければ、いつ行くのだろう。お互いまだ体力もある今こそがチャンスだと考えた。
・準備編:ビザ・持ち物・注意点
エジプト旅行で最初に準備すべきは、ビザの取得だ。日本人観光客の場合、事前取得か到着時取得を選べる。私たちは手続きを簡単にするため、事前にeビザを申請することにした。
公式サイト(https://visa2egypt.gov.eg)での手続きは意外とスムーズで、パスポートの写真ページのスキャンデータと顔写真、そして必要事項を入力するだけ。手数料は25米ドルで、クレジットカード決済が可能だ。承認までは通常3営業日程度。
2.Day1:カイロ到着
エジプト航空は予定通り午後2時頃、カイロ国際空港に着陸した。機内から見たカイロの街並みは、砂色の建物が延々と続く独特な景観で、すでにエキゾチックな雰囲気が漂っていた。
事前に取得していたeビザのおかげで、Immigration(入国審査)の列もさほど長くはなく、15分程度で通過できた。
空港を出ると、事前に手配していた送迎ドライバーのモハメドが、にこやかな笑顔で私たちを出迎えてくれた。「アハラン・ワ・サハラン!(ようこそ!)」という彼の第一声に、緊張していた心がほぐれていくのを感じた。
【宿泊先】
Cairo Marriott Hotel & Omar Khayyam Casino
住所:54 Gezira St, Zamalek, Cairo
URL:https://www.marriott.com/hotels/travel/caieg-cairo-marriott-hotel-and-omar-khayyam-casino/
かつてのゲジラ宮殿を改装したホテルで、ナイル川を見下ろす絶好のロケーション。19世紀の宮殿建築と現代的な設備が見事に調和している。
ホテルにチェックインした後、夕暮れ時のイスラム地区を散策することにした。モハメドが「今夜はライトアップされたムハンマド・アリ・モスクがきれいですよ」と教えてくれたからだ。
・ムハンマド・アリ・モスクの見学
※女性は肩と膝が隠れる服装必須。スカーフの貸出あり。
その後ハーン・ハリーリ市場の夕暮れを散策
エジプト最大のスークで、スパイスや香水、民芸品などが並ぶ。
【夕食】
Naguib Mahfouz Café
住所:Khan el-Khalili, El-Gamaleya, Cairo
ノーベル文学賞作家の名を冠したレストラン。
おすすめメニュー:
・モロヘイヤスープ
・グリルド・ピジョン(伝統的なエジプト料理)
・オリエンタルメゼ盛り合わせ
夕食後、ホテルに戻る途中、モハメドが「明日は大きな日になりますよ」と笑顔で言った。そう、いよいよ明日は夫の夢であるピラミッド観光の日だ。期待に胸を膨らませながら、初日の夜を過ごした。
夜のカイロは昼間とは異なる魅力を放っていた。イスラム様式の建造物がライトアップされ、スパイスの香りが漂う路地には、地元の人々の活気あふれる声が響いていた。エジプトの首都で過ごす最初の夜は、これから始まる冒険の予感に満ちていた。
3.Day2:ピラミッド観光
朝食を早めに済ませ、午前7時にホテルを出発。観光客が押し寄せる前にピラミッドに到着するためだ。車窓から見えるカイロの街並みは、朝もやに包まれてまるで時が止まったかのよう。約1時間のドライブで、突如として姿を現したピラミッドの威容に、思わず息を呑んだ。
「想像以上に大きい…」夫の声が震えていた。確かに、写真や映像で見るのとは全く違う。高さ147メートルのクフ王のピラミッドは、人類の歴史上最も古い超大型建造物の一つだ。その存在感は圧倒的で、見上げるだけで息が詰まりそうになる。
【ギザ三大ピラミッドエリア】
営業時間:8:00-17:00(10-3月)、7:00-19:00(4-9月)
現地ガイドのアフメドは考古学を専攻していた経歴を持つ博識な男性で、ピラミッドの建設方法や歴史について詳しく解説してくれた。
「これらの石は、一つ一つが2.5トンもあるんですよ。それを約230万個も積み上げて作られています」
アフメドの説明に、夫は食い入るように耳を傾けていた。
【おすすめ撮影スポット】
・パノラマポイント:三大ピラミッドが一望できる
・ラクダ乗り場付近:ラクダとピラミッドが一緒に収まるベストアングル
昼食は、ピラミッドが見える特別なレストランへ。
【昼食】9 Pyramids Lounge
住所:Giza Necropolis
URL:9 Pyramids Lounge(@9pyramidslounge) • Instagram写真と動画
ピラミッドを眺めながらの優雅なランチが楽しめる高級レストラン。
予約必須。
おすすめメニュー:
・メゼ盛り合わせ
・グリルド・ラム
・ウム・アリ(伝統的なデザート)
午後はスフィンクスの見学へ。人面ライオン身の巨大な像は、砂漠の風に耐えながら4500年以上もの間、ピラミッドを見守り続けている。
夕暮れ時、砂漠に沈む夕日を眺めながら、アフメドが興味深い話をしてくれた。
「ピラミッドには、まだ解明されていない謎がたくさんあります。例えば、なぜこれほどの精度で石を積み上げることができたのか。現代の技術をもってしても、完全には再現できないんです」
その言葉に、夫は深くうなずいていた。帰りの車中、夫は「子供の頃からの夢が叶った。本当に来て良かった」と呟いた。その表情は、まるで少年のように輝いていた。
今日一日、私たちは時空を超えた旅をしていた。現代のカイロから紀元前2500年頃にタイムスリップし、古代エジプト文明の偉大さを肌で感じることができた。
4.Day3:カイロ市内観光
朝日に照らされたナイル川の輝きで目を覚ました。今日はカイロ考古学博物館とイスラム地区の探索が予定されている。朝食後、昨日と同じドライバーのモハメドが、にこやかな笑顔で私たちを出迎えてくれた。
【カイロ考古学博物館】
住所:Tahrir Square, Cairo
営業時間:9:00-19:00
URL:https://egyptianmuseum.org/
12万点以上の収蔵品を誇る世界最大級のエジプト考古学博物館。その規模に圧倒される。事前予約したガイドのファティマは、博物館の見どころを効率よく案内してくれた。
「これがツタンカーメン王の黄金のマスクです」
ファティマの説明に、私たちは息を呑んだ。純金で作られた若きファラオの死亡マスクは、想像以上の輝きを放っていた。
【昼食】
Naguib Mahfouz Restaurant
住所:5 El Badiestan, Khan el-Khalili
おすすめメニュー:
・コシャリ(エジプトの国民食)
・ムルッヘーヤ(伝統的な野菜スープ)
・シシタウーク(鶏肉の串焼き)
午後はイスラム地区の中心、アズハル・モスクへ。世界最古のイスラム教大学として知られる場所だ。
【アズハル・モスク】
入場料:無料(ガイド料金別途)
服装:女性はスカーフと長袖必須
モスク見学後、再びハーン・ハリーリ市場へ。今度は昼間の賑わいを体験するためだ。
「お客さん、どうぞ見ていってください」
露店の店主たちの声が飛び交う。スパイスの香り、民芸品の色彩、人々の活気。全てが五感を刺激する。
【買い物情報】
・パピルス画:要注意。本物は高価(100米ドル程度から)
・香水:エジプト特製のエッセンシャルオイルがおすすめ
・スパイス:サフランやクミンが人気
夕方からは、予約していたナイル川クルーズへ。
【ディナークルーズ】
Nile Maxim Dinner Cruise
時間:20:00-22:30
URL:1 new message
船上からカイロの夜景を眺めながら、ベリーダンスショーやタノーラ(スーフィーの伝統舞踊)を楽しんだ。
おすすめメニュー:
・ミックスグリル
・シーフードの盛り合わせ
・バクラヴァ(デザート)
クルーズ船の揺れと生演奏の音色に身を任せながら、夫と語り合った。「歴史と現代が交差するカイロって、本当に不思議な街だね」
ホテルに戻る道すがら、モハメドが「明日はルクソールですね。古代エジプトの本当の宝物が待っていますよ」と教えてくれた。その言葉に、また新たな期待が膨らんでいった。
カイロでの最後の夜。部屋のバルコニーから眺めるナイル川の流れは、何千年もの歴史を見つめてきたかのように、静かに輝いていた。
5.4-5日目:ルクソール滞在
早朝、カイロ国際空港からエジプト航空の国内線でルクソールへ。飛行時間はわずか1時間。機内から見下ろす砂漠の風景は、endless な茶色の絨毯のようだった。
【宿泊先】
Hilton Luxor Resort & Spa
住所:New Karnak, Luxor
URL:https://www.hilton.com/en/hotels/luxhitw-hilton-luxor-resort-and-spa/
ナイル川を望む5つ星ホテル。部屋からは朝日に輝く川面と西岸の王家の谷が一望できる。
早朝5時半、まだ暗いうちにホテルを出発。ガイドのハッサンが「朝一番で行くことで、暑さと観光客を避けられます」と説明してくれた。
【王家の谷】
営業時間:6:00-17:00
「壁画の色が、3000年以上経った今でもこんなに鮮やかなんです」
ハッサンの言葉通り、ツタンカーメン王の墓の壁画は驚くほど色鮮やかだった。地下深くに掘られた墓所内は、懐中電灯の明かりだけが頼り。神秘的な空間に、思わず背筋が伸びる。
【昼食】
Marsam Restaurant
住所:West Bank
伝統的なヌビア料理が楽しめる老舗レストラン。
おすすめメニュー:
・ムルッヘーヤとピジョン
・ラム肉のタジン
【カルナック神殿】
営業時間:6:00-17:30
巨大な列柱群が立ち並ぶ光景は圧巻。134本もの柱が天を突き刺すように並び、その高さは23メートルにも及ぶ。
「この神殿は、2000年以上かけて建設されたんです」
ハッサンの説明に、古代エジプト人の執念を感じた。
5日目は朝日に照らされるルクソール神殿へ。神々しい輝きを放っていた。
【ルクソール神殿】
営業時間:6:00-22:00
スフィンクスの参道を歩きながら、ハッサンが「かつてはカルナック神殿まで、このスフィンクスの列が3キロも続いていたんですよ」と教えてくれた。想像するだけでも壮大だ。
【昼食】
Al-Sahaby Lane Restaurant
住所:Al Sahaby Lane, Luxor
ナイル川を見下ろすテラス席が人気。
おすすめメニュー:
・メゼの盛り合わせ
・ナイルパーチのグリル
午後はフェルーカ(伝統的なヨット)クルーズに。
船長のマフムードは、ナイル川に関する興味深い話を聞かせてくれた。
「ナイルは私たちの命の源。古代から変わらない風景です」
夕暮れ時のナイル川。対岸に沈む夕日を眺めながら、夫が「僕たちも、歴史の一部になれた気がするね」とつぶやいた。
【夕食】
1886 Restaurant(ウィンター・パレス内)
正装推奨の格式高いレストラン。
おすすめメニュー:
・フォアグラのテリーヌ
・ラム肉のロースト
・オリエンタルデザート盛り合わせ
ルクソールでの2日間は、まるで時間旅行のようだった。朝は古代エジプトの遺跡を巡り、夜は現代の快適さを楽しむ。その対比が、この街の魅力を一層際立たせている。
6.6日目:帰国の日
早朝、バルコニーに腰かけ、朝もやに包まれたナイル川を眺めていると、アザーン(イスラム教の礼拝の呼びかけ)が静かな空気を震わせた。エジプトでの最後の朝を迎えた。
チェックアウト前の時間を利用して、最後のお土産探しへ。
【ルクソールのお土産情報】
ルクソール・バザール
おすすめ:
・アラバスター製品(要注意:本物は冷たい感触)
・カルトゥーシュ(自分の名前をヒエログリフで刻んだペンダント)
・パピルス画
7.まとめ:エジプト旅行の魅力
エジプトは、私たちの期待をはるかに超えるものだった。
よく聞かれる治安の問題については、観光地では警備が厳重で、思っていたほどの不安は感じなかった。ただし、一般的な注意(貴重品管理、夜間の単独行動を避けるなど)は必要だ。
印象的だったのは、エジプト人の温かさ。特にガイドのハッサンやドライバーのモハメドは、単なるサービス提供者という範囲を超えて、エジプトの文化や歴史を熱心に伝えてくれる「物語の語り手」だった。
古代文明の遺産は、写真や映像で見るのとは比べものにならない迫力があった。ピラミッドの前に立った時の圧倒的な存在感、王家の谷の神秘的な空気、カルナック神殿の荘厳さ。これらは、実際に体験してこそ味わえる感動だ。
また、現代のエジプトも魅力的だった。ハーン・ハリーリ市場の活気、ナイル川クルーズでの優雅なひととき。これらが旅の彩りをより豊かなものにしてくれた。
夫の夢だったピラミッド観光から始まったこの旅は、結果として私たちにとって忘れられない思い出となった。歴史との出会い、人々との触れ合い、異文化体験。全てが新鮮で、心を揺さぶるものだった。
また来たい。
エジプトには、まだまだ私たちの知らない魅力が眠っているはずだから。
≪旅行基本情報≫
■入国方法
・事前eビザ取得が便利(https://visa2egypt.gov.eg)
・手数料:25米ドル
・処理期間:約3営業日
■気候
・11月〜2月がベストシーズン
・日中20度前後、朝晩は10度程度
・日差しは強いので日焼け対策必須
■服装
・女性は肌の露出を控えめに
・モスク訪問時はスカーフ必須
・歩きやすい靴を推奨
■通貨
・エジプトポンド
・主要観光地では米ドルも使用可
・クレジットカードは主要ホテル、レストランで使用可
■チップ
・ホテル:1米ドル/日
・レストラン:10〜15%
・ガイド:20〜30米ドル/日
・ドライバー:10〜15米ドル/日
■注意点
・水道水は飲まない
・生野菜は避ける
・写真撮影は許可を確認
・貴重品の管理に注意
※この記事は筆者の主観に基づいて作成されています。旅行前に最新の情報を確認することをおすすめします。