「クロアチアの青い海と古都の魅力-アドリア海沿岸5日間の旅」
1.クロアチア行きを決めた瞬間
雨の日曜日、私たち夫婦は久しぶりに映画を見ていた。スクリーンに映し出されたのは、青く澄んだアドリア海と、オレンジ色の屋根が連なる古い街並み。「ゲーム・オブ・スローンズ」の舞台として使われたドブロヴニクの風景だった。
「ねえ、あそこ行ってみない?」私は思わず夫に声をかけた。夫も興味を示し、その場でスマートフォンを取り出してクロアチアについて調べ始めた。
かつて学生時代、私たちは頻繁に海外旅行に出かけていた。しかし、結婚してからは仕事に追われ、旅行の機会が減っていた。そんな日々の中で、クロアチアの美しい景色は、私たちの心に眠っていた旅心を呼び覚ました。
調べれば調べるほど、クロアチアの魅力に引き込まれていった。アドリア海の青い海、世界遺産に登録された古い街並み、そして豊かな自然。観光地として有名でありながら、まだ日本人観光客にとってはそれほどメジャーではない。これは私たちが求めていた旅先だった。
「よし、行こう」夫が決断を下した。その瞬間、私たちの心は既にクロアチアへ飛んでいた。
入国方法を調べると、日本人観光客は90日以内の滞在であればビザが不要だと分かった。パスポートの残存有効期間が入国日から3ヶ月以上あれば大丈夫だ。これなら急いで準備しても間に合う。
5日間の旅程を組み立てる中で、私たちは首都ザグレブから始まり、プリトヵィツェ湖群国立公園、スプリト、そしてドブロヴニクへと南下するルートを選んだ。各地での滞在時間は短いが、クロアチアの多様な魅力を凝縮して体験できるはずだ。
航空券を予約し、宿を決め、レンタカーを手配する。準備を進めるうちに、私たちの心は徐々に高揚していった。久しぶりの海外旅行。しかも、まだあまり知られていない国への冒険。
出発の日、成田空港に向かう車の中で、私は夫に言った。「なんだか学生時代に戻ったみたいね」夫も笑顔で頷いた。私たちの新しい冒険が、今始まろうとしていた。
2.1日目:ザグレブ - 中欧の雰囲気漂う首都
ザグレブ空港に降り立った時、私たちを出迎えたのは、予想外の涼しさだった。7月のクロアチアだというのに、日本の初夏のような爽やかな空気が肌を撫でる。
空港からザグレブ市内へは、空港バスを利用した。約30分で中央駅に到着。バスから降りた瞬間、私たちは思わず息を呑んだ。目の前に広がるのは、まるでウィーンやプラハを思わせるような、中欧の雰囲気漂う街並みだった。
重厚な石造りの建物が立ち並び、その間を路面電車が走る。人々は急ぐことなく、ゆったりとした足取りで歩いている。ここが、バルカン半島にあるクロアチアの首都なのだろうか。私たちは、まるで時間が止まったかのような錯覚に陥った。
【宿泊先】
Esplanade Zagreb Hotel
https://www.esplanade.hr/
1925年に建てられたこの由緒正しいホテルは、かつてオリエント急行の乗客たちが利用していた。アールデコ調の豪華な内装が特徴で、ザグレブの中心部に位置する。
部屋に荷物を置いて一息ついた後、さっそく街の探索に出かけた。最初の目的地は、上町(ゴルニ・グラド)と呼ばれる旧市街だ。石畳の急な坂道を登っていくと、突如として中世の街並みが現れた。
聖マルコ教会の前に立つと、その屋根に施されたタイル張りの紋章に目を奪われた。クロアチアの紋章と、ザグレブ市の紋章が鮮やかな色彩で描かれている。教会の前には、制服姿の衛兵が立っていた。彼らの姿は、この街の長い歴史を物語っているようだった。
昼食は、地元の人に教えてもらったLa Štrukで取ることにした。クロアチアの伝統料理「シュトゥルクリ」を注文する。チーズとクリームを詰めた生地を、オーブンで焼いたこの料理は、素朴でありながら深い味わいがあった。
【グルメ】 La Štruk
住所:Skalinska ul. 5, 10000, Zagreb https://www.facebook.com/LaStrukZagreb/
クロアチアの伝統料理を提供する地元で人気のレストラン。
おすすめメニュー:
シュトゥルクリ(チーズとクリームを詰めた生地をオーブンで焼いた料理)
午後は、下町(ドニ・グラド)を散策。19世紀に造られたこのエリアは、整然とした街並みが特徴的だ。イエラチッチ広場では、多くの人々が集まっておしゃべりを楽しんでいた。カフェに座って、彼らの様子を眺めながらコーヒーを飲む。ここでは、時間がゆっくりと流れているように感じられた。
夕食は、ミシュランの星を獲得しているレストラン「Noel」で。現代的なクロアチア料理を味わうことができた。特に印象的だったのは、イストリア産の黒トリュフを使ったパスタだ。香り高いトリュフの風味が、舌の上で踊るようだった。
【グルメ】
Noel
住所:Ul. Popa Dukljanina 1, 10000, Zagreb
Noel Zagreb – Svako jelo, malo remek djelo
ミシュランの星を獲得した現代的なクロアチア料理のレストラン。
おすすめメニュー:
イストリア産黒トリュフのパスタ
ホテルに戻る頃には、街にはオレンジ色の街灯が灯り始めていた。窓から見える夜景は、まるで絵画のように美しい。
私は夫に言った。「まだ1日目なのに、もうこんなに素敵な体験ができたわね」夫も「うん、明日はどんな発見があるか楽しみだ」と答えた。
私たちは、クロアチアの旅の始まりに、すでに心を奪われていた。
3.2日目:プリトヴィツェ湖群国立公園 - 絶景の滝と湖
朝早く、私たちはザグレブを出発し、レンタカーでプリトヴィツェ湖群国立公園へと向かった。約2時間のドライブ。道中、窓の外には緑豊かな丘陵地帯が広がっていた。
「ここが本当にクロアチアなの?」と私は思わず呟いた。昨日まで中欧の雰囲気漂う街にいたのに、今は緑に囲まれた山岳地帯を走っている。クロアチアの多様な自然に、改めて驚かされた。
プリトヴィツェ湖群国立公園に到着すると、そこには想像を遥かに超える絶景が広がっていた。エメラルドグリーンの湖水と、白く輝く滝。その美しさに、私たちは言葉を失った。
入場料を払い、ガイドマップを手に取る。このパークには上湖群と下湖群があり、それぞれに特徴的な景観があるという。私たちは、両方を楽しむことにした。
まずは上湖群へ。遊歩道を歩いていくと、次々と美しい湖と滝が現れる。特に印象的だったのは、最大の滝「ヴェリキ・スラップ」だ。高さ78メートルから豪快に流れ落ちる水しぶきは、まるで自然の芸術作品のようだった。
「見て!虹!」夫が指さす方向を見ると、滝のしぶきに虹がかかっていた。その美しさに、思わずカメラのシャッターを切る。
遊歩道を歩きながら、私たちは何度も立ち止まっては景色に見入った。透明度の高い湖水は、底に沈む木々や岩をくっきりと映し出している。その色は、太陽の位置や雲の様子によって刻々と変化していく。
昼食は、パーク内のレストラン「Lička kuća」で取ることにした。地元の名物料理「ポレック」を注文する。羊肉を串に刺して炭火で焼いたこの料理は、シンプルながら肉の旨味が凝縮されていた。
「美味しいわね。でも、こんな絶景の中で食事をするなんて、贅沢すぎるわ」と私。夫も「うん、食事の味も格別だ」と笑顔で答えた。
【グルメ】
Lička kuća
住所:Plitvička Jezera, 53231, Plitvička Jezera
パーク内にある伝統的なクロアチア料理を提供するレストラン。
おすすめメニュー:ポレック(羊肉を串に刺して炭火で焼いた料理)
午後は下湖群へ。ここでは、湖と滝がより近くで見られる。遊歩道は湖面すれすれのところを通っており、時には滝のしぶきがかかるほどだ。
最も印象的だったのは、カルストの侵食によってできた洞窟だ。洞窟の中を歩いていくと、突如として目の前に滝が現れる。その迫力に、思わず息を呑んだ。
パーク内を巡る木製のボートに乗ることもできた。静かな湖面をすべるように進むボートからの景色は、まるで絵葉書のようだった。
夕方になり、パークを後にする頃には、私たちの心は自然の美しさで満たされていた。
宿泊は、パーク近くの「Ethno Houses Plitvica Selo」というロッジ風の宿。木造の部屋は温かみがあり、窓からは森林が見える。夕食は宿のレストランで、地元の食材を使った料理を楽しんだ。
【宿泊先】
Ethno Houses Plitvica Selo
Plitvička jezera – ETHNO HOUSES
プリトヴィツェ湖群国立公園の近くに位置するロッジ風の宿。木造の部屋は温かみがあり、窓からは森林が見える。自然に囲まれた静かな環境で、ゆっくりと過ごすことができる。
ベッドに横たわりながら、私は夫に言った。「今日見た景色、一生忘れられないわ」夫も「うん、自然の力って本当にすごいな」と答えた。
星空を眺めながら、私たちは今日の感動を噛みしめた。明日はアドリア海沿岸へ。クロアチアの旅は、まだまだ続く。
4.3日目:スプリト - ディオクレティアヌス宮殿の町
朝早く、私たちはプリトヴィツェを出発し、アドリア海沿岸の街スプリトへと向かった。約3時間のドライブ。山岳地帯から海岸線へと景色が変わっていく様子は、まるで映画のワンシーンのようだった。
スプリトに到着すると、私たちを出迎えたのは眩しい太陽と青い海だった。「ここが本当にクロアチアなの?」と、またしても私は呟いた。昨日まで湖と森に囲まれていたのに、今は地中海を思わせる景色が広がっている。クロアチアの多様性に、改めて驚かされた。
スプリトの最大の魅力は、なんと言ってもディオクレティアヌス宮殿だ。古代ローマ皇帝ディオクレティアヌスが、引退後の住居として建設したこの宮殿は、今でも街の中心部として機能している。
【宿泊先】
Palace Judita Heritage Hotel
https://www.juditapalace.com/
ディオクレティアヌス宮殿内にある小さなブティックホテル。古代の遺跡の上に建つこのホテルは、歴史を肌で感じられる特別な宿。石造りの壁や古代のアーチなど、随所に歴史的要素が残されている。
チェックインした後、さっそく宮殿の探索に出かけた。宮殿の正門をくぐると、そこには2000年の時を超えて生き続ける街が広がっていた。石畳の狭い路地、古代の柱、中世の教会。そして、その間を縫うように現代の商店やカフェ。過去と現在が絶妙に混ざり合う光景に、私たちは魅了された。
「まるでタイムスリップしたみたいね」と私が言うと、夫も「うん、歴史の重みを感じるよ」と頷いた。
宮殿内を歩きながら、私たちは様々な発見をした。特に印象的だったのは、かつての地下室だ。湿った空気と薄暗い照明が、独特の雰囲気を醸し出している。ここでは、地元の職人たちが手作りの土産物を販売していた。
昼過ぎ、私たちは宮殿の中心にあるペリスティル広場に辿り着いた。古代ローマ時代の列柱に囲まれたこの広場は、今でもスプリトの中心的な集会場所となっている。カフェのテラス席に座り、周囲の景色を眺めながらエスプレッソを楽しむ。時折、アカペラグループの歌声が響き渡り、古代と現代が交差する不思議な空間を演出していた。
夕食は、地元で人気の「Konoba Fetivi」で。ここで私たちは、クロアチア料理の奥深さを改めて感じることになった。特に印象的だったのは、ブラックリゾットだ。イカ墨で真っ黒に染まったこのリゾットは、見た目は少し驚くが、口に入れた瞬間、イカの旨味が口いっぱいに広がる。
【グルメ】Konoba Fetivi
住所:Tomica Stine 4, 21000, Split
地元で人気の伝統的なダルマチア料理を提供するレストラン。
おすすめメニュー:ブラックリゾット(イカ墨で作ったリゾット)
「見た目は怖いけど、この味はすごいわね」と私。夫も「うん、これはクセになりそうだ」と言いながら、何度もスプーンを口に運んでいた。
食事の後、私たちはリヴァ(海岸通り)を散歩することにした。夕暮れ時のアドリア海は、オレンジ色に輝いていた。多くの地元の人々が、家族や友人とこの美しい景色を楽しんでいる。私たちもベンチに腰掛け、穏やかな波の音を聴きながらしばしの時を過ごした。
ホテルに戻る途中、細い路地に迷い込んだ私たち。しかし、それが思わぬ発見につながった。路地の突き当たりにある小さな広場で、地元の人々が即興のダンスパーティーを開いていたのだ。クロアチアの伝統音楽に合わせて踊る人々の姿に、私たちも思わず体を揺らしてしまった。
「踊ってみる?」と夫が手を差し伸べてきた。少し恥ずかしかったが、勇気を出して輪の中に入る。地元の人々が温かく迎え入れてくれ、踊り方を教えてくれた。拙い動きながらも、皆と一緒に踊るうちに不思議と心が開放されていくのを感じた。
ホテルに戻ったのは深夜近く。「思わぬ体験ができたわね」と私。夫も「うん、こういう予定外の出来事が旅の醍醐味だよね」と満足そうに答えた。
部屋のバルコニーに出ると、月明かりに照らされた古代の街並みが広がっていた。2000年の歴史を持つこの街で、私たちは新しい思い出を作ることができた。明日はいよいよ最後の目的地、ドブロヴニクへ。期待に胸を膨らませながら、私たちは眠りについた。
5.4-5日目:ドブロヴニク - アドリア海の真珠
スプリトからドブロヴニクへは、朝早くフェリーで移動することにした。アドリア海を船上から眺めながらの3時間の旅は、それ自体が素晴らしい体験だった。青い海と点在する島々の景色に、私たちは見とれてしまった。
ドブロヴニクに到着すると、その美しさに圧倒された。城壁に囲まれた旧市街は、まるで中世の絵本から抜け出してきたかのよう。オレンジ色の屋根が連なる景色は、私たちが映画で見て憧れていた通りだった。
【宿泊先】
Hotel Excelsior Dubrovnik
https://www.adriaticluxuryhotels.com/en/hotel-excelsior-dubrovnik
旧市街を見下ろす絶好のロケーションにあるラグジュアリーホテル。アドリア海を一望できる部屋からの眺めは息をのむほど美しい。19世紀の建物と現代的な別館が融合した独特の雰囲気が魅力。
チェックインすると、部屋から見える景色に思わず息を呑んだ。城壁に囲まれた旧市街と青いアドリア海が一望できる。「これは素晴らしいわ」と私が言うと、夫も「うん、この景色だけでも来た価値があったね」と答えた。
荷物を置いてすぐに、私たちは旧市街の探索に出かけた。旧市街の探索は、プラツァ通りから始めた。大理石で舗装された美しい通りには、観光客だけでなく地元の人々も多く行き交っていた。聖ブレイズ教会、スポンザ宮殿、時計塔など、歴史的建造物が立ち並ぶ様子は圧巻だった。
昼食は、地元の人に教えてもらった小さなレストランで取ることにした。ここで私たちは、ドブロヴニクの名物料理「ブジョラ」を味わった。タコやイカ、ムール貝などの魚介類をオリーブオイルで煮込んだこの料理は、海の香りが口いっぱいに広がる絶品だった。
「こんな美味しい料理があるなんて」と私が感動していると、隣のテーブルの地元の夫婦が話しかけてきた。彼らは私たちに、ドブロヴニクの歴史や文化について熱心に説明してくれた。「ここでは、こういった偶然の出会いが旅をより豊かにしてくれるのね」と私は夫に囁いた。
午後は、城壁巡りに挑戦した。約2キロの城壁を歩くのは少し大変だったが、その価値は十分にあった。城壁からは旧市街の赤い屋根や狭い路地、そして青いアドリア海を一望できる。「ゲーム・オブ・スローンズ」のロケ地になった場所も見つけることができた。
「ここからの眺めは最高ね」と私が言うと、夫も「うん、まるで中世にタイムスリップしたみたいだ」と答えた。
夕方には、ケーブルカーでスルジ山に登った。山頂からのドブロヴニクの眺めは、まさに絶景。夕日に染まる旧市街と青いアドリア海のコントラストに、思わずため息が漏れた。
夕食は、地元で評判の「Restaurant 360°」で。ここからの眺めも素晴らしく、城壁と海を見下ろしながらの食事は格別だった。アドリア海で獲れた新鮮な魚のグリルは、シンプルな調理法ながら魚本来の味わいが際立っていた。
【グルメ】
Restaurant 360°
住所:Sv. Dominika bb, 20000 Dubrovnik
https://360dubrovnik.com/
城壁の上にある高級レストラン。絶景とともに最高級の料理を楽しめる。
おすすめメニュー:
アドリア海の魚のグリル
「こんな贅沢な時間を過ごせるなんて」と私が感動していると、夫も「うん、この景色と料理、一生忘れられないだろうね」と満足そうに答えた。
翌日は、近くのロクルム島へ短い船旅に出かけた。島内は自然保護区になっており、美しい植物園や、かつての修道院跡を見学することができた。島の最高地点からのドブロヴニクの眺めも素晴らしかった。
午後は、旧市街をゆっくりと散策。狭い路地を歩きながら、所々に残る戦争の傷跡を目にした。クロアチア紛争の痕跡だ。「この美しい街も、つい最近まで戦争の悲劇を経験していたのね」と私。夫も「うん、平和の大切さを改めて感じるよ」と静かに答えた。
最後の夜は、旧市街の路地にある「Azur Dubrovnik」で夕食を楽しんだ。ここでは、クロアチア料理とアジア料理を融合させた創作料理を味わうことができた。特に印象的だったのは、アジアンフュージョンタパス。クロアチアの食材にアジアのスパイスを効かせた料理は、私たちの舌を楽しませてくれた。
【グルメ】
Azur Dubrovnik
住所:Pobijana ul. 10, 20000, Dubrovnik
Azur Dubrovnik - Mediterranean Cuisine with an Asian Twist
クロアチア料理とアジア料理を融合させた創作料理を提供するユニークなレストラン。
おすすめメニュー:
アジアンフュージョンタパス
ひとことメモ:クロアチア料理にアジアのエッセンスを加えた創作料理。意外な組み合わせが新鮮で、味も絶品。旧市街の路地裏で楽しむ、新しいクロアチア料理の魅力を感じられる。
「こんな斬新な料理もあるのね」と私が言うと、夫も「うん、クロアチア料理の可能性を感じるよ」と答えた。
食事の後、私たちは静かな夜の旧市街を散歩することにした。昼間の喧騒が嘘のように、石畳の路地は静けさに包まれていた。月明かりに照らされた古い建物や教会は、昼間とは違う幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「ねえ、この5日間を振り返ってみて、どう思う?」と私が夫に尋ねた。夫は少し考えてから答えた。「本当に多様な経験ができたと思う。首都の洗練された雰囲気、プリトヴィツェの自然の驚異、スプリトの歴史の重み、そしてこのドブロヴニクの美しさ。どれも忘れられない思い出になったよ」
私も同感だった。「そうね。クロアチアって、こんなに多彩な魅力を持った国だとは思わなかったわ。それに、どこに行っても人々が温かくて、本当に居心地が良かった」
夫が付け加えた。「そして、この旅で僕たちの関係も少し変わった気がするよ。日常から離れて、新しい経験を共有することで、お互いの新しい一面を発見できたような気がする」
その言葉に、私は思わず夫の手を握った。「そうね。この旅は私たちにとって、単なる観光以上の意味があったわ」
私たちは城壁の外に出て、月明かりに照らされたアドリア海を眺めた。波の音が静かに響き、遠くに灯台の光が見える。この瞬間、私たちは言葉を交わさずとも、同じ気持ちを共有していることを感じていた。
6.クロアチアの旅を振り返って
5日間のクロアチア旅行は、私たち夫婦にとって忘れられない経験となった。
首都ザグレブの中欧的な雰囲気、プリトヴィツェ湖群国立公園の息をのむような自然美、古代ローマの遺産が息づくスプリト、そして「アドリア海の真珠」と呼ばれるドブロヴニク。それぞれの場所が異なる魅力を持ち、まるで複数の国を旅したかのような多様性に富んでいた。
特に印象に残ったのは、どの地域でも感じられた人々の温かさだ。片言の英語で話しかけても、笑顔で対応してくれる。そして、彼らの郷土への誇りと愛情が、料理や街並みの保存状態などからひしひしと伝わってきた。
もちろん、美味しい料理の数々も忘れられない。新鮮な魚介類、香り高いトリュフ、そして地元のワイン。どれも素朴でありながら、深い味わいがあった。
この旅を通じて、私たちは新たな発見をした。それは、旅することの意義だ。日常から離れ、新しい文化や景色に触れることで、自分たちの価値観や関係性を見つめ直す機会を得られた。
例えば、プリトヴィツェ湖群国立公園での体験は、自然の壮大さを前に人間の小ささを感じさせられ、環境保護の重要性を再認識させてくれた。スプリトでの予期せぬダンスパーティーへの参加は、spontaneityの大切さと、人々との交流がいかに心を豊かにするかを教えてくれた。
そして、ドブロヴニクの城壁に残る戦争の痕跡は、平和の尊さを改めて考えさせられる機会となった。美しい景色の裏に隠された歴史の重みを知ることで、私たちは旅の深さを感じることができた。
また、この旅は私たち夫婦の関係にも良い影響を与えた。日常のルーティンから離れ、新しい環境で共に過ごすことで、お互いの新たな一面を発見することができた。困難や喜びを共有することで、絆が深まったように感じる。
旅の終わりに、私たちは「また来たい」と強く思った。5日間では、クロアチアの魅力のほんの一部しか味わえなかったからだ。次は、イストリア半島やザダル、そして美しい島々を訪れてみたい。
この旅は、私たち夫婦に新たな刺激と、忘れかけていた冒険心を呼び覚ましてくれた。日常から離れ、新しい文化や景色に触れることの大切さを改めて感じた。
クロアチアでの5日間は、私たちの人生の宝物となった。そして、これからも世界中の未知の場所へ旅する勇気をくれたのだ。
≪クロアチア旅行基本情報≫
■入国方法
観光目的で90日以内の滞在の場合、ビザは不要。
パスポートの残存有効期間は、入国日から起算して3ヶ月以上必要。
■現地での移動手段
都市間:バス、フェリー、国内線飛行機が便利。レンタカーも人気。
都市内:公共交通機関(バス、トラム)やタクシーが利用可能。
■通貨
ユーロ(EUR)
■チップ
レストランやホテルでは、通常請求額の10%程度。
タクシーの場合は、料金を切り上げる程度で可。
■その他
・夏季は観光のハイシーズンで混雑するため、事前予約をおすすめ。
・海水浴をする場合、ビーチサンダルを持参するとよい(石の多いビーチが多いため)。
・歴史的建造物が多いため、歩きやすい靴を準備すること。
・ドブロヴニクなどの人気観光地では、早朝や夕方の観光がおすすめ(日中は混雑するため)。
クロアチアへの旅は、私たちに多くの気づきと感動を与えてくれた。この美しい国の多様な魅力は、きっと多くの旅行者の心を捉えるだろう。歴史と自然が織りなす風景、温かい人々、そして豊かな食文化。クロアチアは、まさに「アドリア海の宝石」と呼ぶにふさわしい国だった。
※この記事は筆者の主観に基づいて作成されています。旅行前に最新の情報を確認することをおすすめします。