見出し画像

「ウズベキスタン-シルクロードの宝石箱/6日間」



1.プロローグ:シルクロードへの誘い

夕暮れ時のリビングで夫と私は世界地図を広げ、次の旅行先を探す至福の時間を過ごしていた。「シルクロードってどう?」夫が地図上の中央アジアを指さした。「ウズベキスタンなんてどう?青いドームの建物や、砂漠のオアシス都市があるらしいよ。」

その言葉に、私の心は躍った。砂漠を横断するラクダのキャラバン、エキゾチックなバザール、そして星空の下で語り合う旅人たち。そんなロマンチックな光景が頭の中を駆け巡り、「行こう!」と私は即答した。

そうして、私たちのウズベキスタンへの旅の計画が始まった。インターネットで情報を集め、6日間の旅程を組み立てていく。タシケント、サマルカンド、ブハラ。それぞれの都市が持つ独特の魅力に、出発前から心が躍る。

準備を進めるうちに、ウズベキスタンへの興味は日に日に深まっていった。かつてのシルクロードの要衝として栄えた都市の歴史、イスラム建築の美しさ、そして現代に生きる人々の暮らし。すべてが新鮮で、魅力的だった。

そして、出発の日。成田空港に向かう車の中で、夫と私は静かな興奮を共有していた。未知の国ウズベキスタンへの冒険。シルクロードの風が、私たちを誘っていた。

2.1日目:タシケント到着 - 現代と伝統が融合する首都

ウズベキスタンの首都タシケントに到着したのは、現地時間の深夜だった。機内から降り立った瞬間、乾いた空気が肌を撫でる。

空港を出ると、ホテルからの送迎車が待っていた。夜のタシケントの街並みは、近代的な高層ビルと昔ながらの低層建築が混在していて、不思議な雰囲気だ。車窓から見える街灯の明かりに、疲れた目が癒される。

【宿泊先】
ハイアット リージェンシー タシケント (Hyatt Regency Tashkent)
https://www.hyatt.com/en-US/hotel/uzbekistan/hyatt-regency-tashkent/tasrt

モダンな設備と伝統的なウズベキスタンのデザインが融合したこの5つ星ホテルは、タシケントの中心部に位置する。部屋からは、夜のタシケントの街並みが一望できる。

ホテルに到着し、チェックインを済ませると、すぐにベッドに倒れ込んだ。長いフライトの疲れが一気に押し寄せてくる。でも、明日からの冒険を思うと、胸が高鳴って、なかなか寝付けない。

朝。カーテンを開けると、タシケントの街が眩しい朝日に包まれていた。昨夜は気づかなかったが、街はとても緑が多い。ソビエト時代に植林された並木道が、近代的な建物の間を縫うように伸びている。

朝食を済ませ、さっそく街の探索に出発した。最初の目的地は、ハズラティ・イモム・コンプレックス。タシケントで最も重要なイスラム建築群だ。

タクシーで15分ほど。運転手さんは英語が通じなかったが、身振り手振りでなんとかコミュニケーションが取れた。車窓からは、近代的なビルと古い市場が交互に現れる。まるで時代の異なる二つの都市が混在しているかのようだ。

ハズラティ・イモム・コンプレックスに到着すると、その規模の大きさに圧倒された。16世紀に建てられたバラク・ハン・マドラサ(イスラム神学校)を中心に、いくつものモスクやマドラサが建ち並ぶ。青いタイルのドームが空に映える様は、まさに絵画のよう。

「ここで勉強していた学生たちは、どんなことを考えていたのかな」と、夫が呟いた。歴史の重みを感じながら、私たちはゆっくりと境内を歩いた。

次に向かったのは、チョルスー・バザール。タシケント最大の市場だ。入り口に立つと、喧騒と香辛料の香りが一気に押し寄せてくる。色とりどりの野菜や果物、乾燥果実、香辛料の山。見たこともない食材の数々に、目を奪われる。

【レストラン】ナショナル・フード・レストラン (National Food Restaurant)住所:Lashkarbegi St, Tashkent, Uzbekistan

ウズベキスタンの伝統料理を楽しめる人気レストラン。内装は伝統的なウズベキスタンスタイルで、雰囲気も抜群。

おすすめメニュー:
• プロフ(ウズベキスタンの国民食。炊き込みご飯)
• シャシリク(串焼き肉)

バザールでの買い物を楽しんだ後、お昼時になったので、地元で人気のレストランに向かった。ウズベキスタン料理の定番、プロフを注文。香り高いスパイスと、じっくり煮込まれた羊肉の旨みが口いっぱいに広がる。「こんな美味しいものがあるなんて!」と夫と顔を見合わせた。

午後は、タシケント地下鉄に乗ることにした。ソビエト時代に建設されたこの地下鉄は、それ自体が一つの芸術作品だ。駅ごとに異なるデザインで、まるで美術館のよう。チラーンザール駅の宇宙をモチーフにした天井画には、思わず見とれてしまった。

夕方、アムール・ティムール広場に到着。ティムール帝国を築いた英雄ティムールの騎馬像が、威風堂々と立っている。夕日に照らされた像の周りには、多くの地元の人々が集まっていた。家族連れ、恋人同士、友人グループ。皆、楽しそうに語り合っている。

その光景を見ながら、私たちは静かに語り合った。「ウズベキスタンって、思っていたよりずっとモダンね」「でも、伝統もしっかり残っている」

夜は、ホテル近くのカフェで軽い夕食を取った。ウズベキスタンワインを試してみたが、予想以上に美味しく驚いた。「明日はサマルカンドね」と夫が言った。「青の都」と呼ばれる古都への期待に、胸が高鳴る。

ホテルに戻り、荷物をまとめながら、今日一日の出来事を振り返る。現代と伝統が見事に融合するタシケント。そこに暮らす人々の温かさ。まだ旅の始まりだというのに、もう心はすっかりウズベキスタンの虜になっていた。

明日への期待を胸に、私たちは深い眠りについた。

3.2日目:サマルカンドへ - 青の都の魔法

朝日が差し込む窓から、タシケントの街並みを最後にひと目見る。昨日歩いた道、出会った人々。たった一日でこんなにも愛着が湧くものなのかと、少し驚く。でも、今日からは新しい冒険が待っている。私たちは、期待に胸を膨らませながら、サマルカンドへの列車に乗り込んだ。

アフロシアブ号。ウズベキスタンの高速鉄道だ。予約は日本出発前にネットで済ませていた。タシケントからサマルカンドまで、わずか2時間ほど。窓の外には、広大な平原が広がる。時折、羊の群れや、遠くに見える山々。「ここが本当にシルクロードなのか」と、夫が感慨深げに呟いた。

列車の中で、隣に座ったウズベキスタンの老夫婦と会話を交わす。彼らは英語を少し話せた。「サマルカンドは素晴らしいよ。レギスタン広場を見たら、きっと息を呑むはずだ」と、目を輝かせながら教えてくれた。その言葉に、さらに期待が高まる。

サマルカンド駅に到着。駅を出ると、タシケントとは全く異なる雰囲気が広がっていた。古都の風格というのだろうか。街全体が歴史を物語っているような、不思議な空気感だ。

【宿泊先】
ホテル L'Argamak (Hotel L'Argamak)
https://www.booking.com/hotel/uz/l-39-argamak.ja.html

サマルカンドの中心部に位置する、伝統的なウズベキスタンスタイルのブティックホテル。中庭には美しい噴水があり、部屋からはティムールの墓廟グリ・アミールが見える。

ひとことメモ:朝食で出されるウズベキスタンのパン「ノン」が絶品。

筆者の気持ち

ホテルにチェックインし、荷物を置いたら、すぐにレギスタン広場へ向かった。サマルカンドの中心部に位置する、この広場は「中央アジアで最も美しい広場」と呼ばれている。

広場に足を踏み入れた瞬間、私たちは言葉を失った。三つのマドラサ(イスラム神学校)が広場を取り囲み、その壮麗な姿は圧巻だった。ウルグベク・マドラサ、シェルドル・マドラサ、ティラカリ・マドラサ。それぞれが、青と金色のタイルで装飾された巨大な門扉を持ち、空に向かって伸びる尖塔が印象的だ。

私たちは、それぞれのマドラサを丁寧に見学していった。ウルグベク・マドラサの精緻な幾何学模様のタイル、シェルドル・マドラサの獅子のモザイク、ティラカリ・マドラサの金箔で覆われたドーム。どれも息を呑むほどの美しさだ。

夕暮れ時、広場に腰を下ろし、変化していく空の色とともに建物の表情が変わっていく様子を眺めた。周りには、地元の人々や世界中からの観光客が集まっていた。みな同じように、この景色に魅了されているようだった。

【レストラン】カリム・ベク (Karim Bek)住所:Registan Square, Samarkand, Uzbekistan

レギスタン広場に面したレストラン。伝統的なウズベキスタン料理を楽しめる。

おすすめメニュー:
• マンティ(蒸し餃子)
• ラグマン(手打ち麺のスープ)

ひとことメモ:テラス席からレギスタン広場の夜景が楽しめる。ロマンチックな雰囲気抜群!

筆者の気持ち

夕食は、レギスタン広場に面したレストランで取ることにした。テラス席から見える夜のレギスタン広場は、昼間とはまた違った魅力があった。ライトアップされた建物が、まるで宝石箱のように輝いている。

ウズベキスタンの伝統料理、マンティを頬張りながら、今日一日の出来事を振り返る。「サマルカンドって、想像以上だね」と夫が言った。「うん、本当に魔法にかけられたみたい」と私も答えた。

食事の後、夜のレギスタン広場をゆっくりと歩いた。昼間とは違う静けさの中、建物の影が月明かりに照らされて揺れている。まるで時が止まったかのような不思議な感覚に包まれる。

ホテルに戻る途中、地元の若者たちがギターを弾きながら歌っているのに出会った。彼らは私たちに気づくと、笑顔で手を振ってくれた。言葉は通じなくても、音楽は心を通わせる。その瞬間、私たちは本当の旅の醍醐味を味わっているんだと実感した。

青の都サマルカンド。その魔法にすっかりかかった私たちは、明日への期待を胸に秘めて眠りについた。

4.3日目:サマルカンド探訪 - レギスタン広場の壮麗さに魅了される

朝日に照らされたサマルカンドの街並みが、窓越しに広がる。昨日の興奮が冷めやらぬまま、私たちは新たな一日を迎えた。朝食では、ウズベキスタンの伝統的なパン「ノン」の香ばしい香りに誘われ、つい食べ過ぎてしまう。

今日の最初の目的地は、ビビハニム・モスク。かつてティムール帝国の首都だったサマルカンドを象徴する建造物の一つだ。ホテルからタクシーで10分ほど。

ビビハニム・モスクに到着すると、その規模の大きさに圧倒された。青いドームと高くそびえる門。壁一面に施された幾何学模様のタイル。「ティムールが最愛の妻のために建てたんだって」と夫が言う。しかし、完成を見ることなく崩壊し始めたという悲劇の歴史も持つ。
モスクの中を歩きながら、私たちはその壮大さと同時に、人間の野望と現実のギャップについても考えさせられた。

次に向かったのは、シャーヒズィンダ廟群。「生ける王の墓」という意味を持つこの場所は、青のグラデーションが美しい霊廟群だ。細い路地を抜けると、突如として青い世界が広がる。まるで天国の入り口のよう。

一つ一つの霊廟を丁寧に見て回る。それぞれに異なる装飾が施され、その美しさに目を奪われる。「死後の世界への入り口として相応しい美しさだ。

昼食は、地元の人で賑わう市場近くの食堂で取ることにした。

【レストラン】Central Asian Plov Center住所:Registan St, Samarkand, Uzbekistan

地元の人々に人気の食堂。大きな釜で炊き上げるプロフ(ウズベキスタンの炊き込みご飯)が名物。

おすすめメニュー:
• プロフ
• シュルパ(羊肉のスープ)

ここでは、大きな釜で炊き上げたプロフを注文。香り高いスパイスと、じっくり煮込まれた羊肉の旨みが絶妙なハーモニーを奏でる。

午後は、再びレギスタン広場へ。昨日とは違う角度から、三つのマドラサを見学することにした。今回は、内部にも入ってみる。かつて学問の場だったこの場所で、どんな議論が交わされていたのだろうか。想像を膨らませながら、中庭や教室を歩き回った。

夕方近くになると、広場では民族音楽のパフォーマンスが始まった。伝統的な楽器の音色が、古代の記憶を呼び覚ますかのよう。私たちは、その音楽に身を任せ、時の流れを忘れてしまった。

日が沈むと、レギスタン広場では特別なイベントが始まった。三つのマドラサをスクリーンに見立てた、光と音のショーだ。サマルカンドの歴史が、壮大な音楽とともに建物に映し出される。昼間とは全く違う姿のレギスタン広場に、私たちは息を呑んだ。

ショーが終わった後、周りの人々と感動を分かち合う。言葉は通じなくても、みな同じように魅了されている様子だった。「こんな経験ができるなんて、来てよかったね」と夫が言った。

ホテルに戻る道すがら、サマルカンドの夜の空気を深く吸い込む。星空の下、静かに佇む古代の建物たち。現代に生きる私たちが、何百年も前の人々の想いや夢に触れている。そんな不思議な感覚に包まれながら、今日一日を振り返った。

窓の外に広がるサマルカンドの夜景を最後にもう一度眺めて、私たちは静かに眠りについた。青の都の魔法は、きっと夢の中でも続いているはずだ。

5.4日目:ブハラへ - 砂漠のオアシス都市

朝日が差し込む窓から、サマルカンドの街並みを最後にひと目見る。わずか2日間だったが、この街との別れを惜しむ気持ちでいっぱいだった。しかし、新たな冒険が待っている。今日の目的地は、もう一つの古都、ブハラだ。

サマルカンド駅に向かう途中、タクシーの運転手さんが「ブハラは小さいけど、魅力的な街だよ」と教えてくれた。その言葉に、期待が高まる。

列車に乗り込むと、車窓から広がる風景に目を奪われた。サマルカンドを出発してしばらくすると、緑豊かな風景は次第に乾燥した大地に変わっていく。時折見える小さな集落や、遠くに広がる山々。まさに、シルクロードそのものの風景だ。

「ねえ、昔の隊商たちも、こんな景色を見ながら旅をしていたのかしら」と私が言うと、夫は「きっとそうだろうね。でも、彼らは何週間もかけて旅をしていたんだ」と答えた。現代の交通手段の便利さを実感すると同時に、昔の旅人たちの苦労を想像せずにはいられなかった。

約4時間の旅を経て、ブハラに到着。駅を出ると、サマルカンドとはまた違った雰囲気が広がっていた。こじんまりとした街並み、砂漠の中のオアシスというイメージにぴったりだ。

【宿泊先】
ホテル ラビハウズ (Hotel Lyabi-House)
https://www.booking.com/hotel/uz/lyabi-house.ja.html

ブハラの中心部、ラビハウズ広場に面した伝統的な建物を改装したホテル。中庭には噴水があり、朝食をここで取ることができる。

ホテルにチェックインし、荷物を置いたら、すぐに旧市街の探索に出発した。最初の目的地は、ポイ・カロン建築群。アルク城の城壁を背に、カラーン・モスク、カラーン・ミナレット、ミリ・アラブ・マドラサが並ぶ壮大な景観だ。

カラーン・ミナレットに到着すると、その高さに圧倒された。46メートルもの高さを誇るこの塔は、900年以上の歴史を持つ。「昔は、この塔の上から都市を見張っていたんだって」と夫が言う。想像するだけで、当時の人々の暮らしが目に浮かぶようだった。

カラーン・モスクの中庭に入ると、静寂が訪れた。青いドームと白い壁のコントラスト、精緻な装飾。その美しさに見とれながら、イスラム文化の深さを感じずにはいられなかった。

昼食は、地元の人々で賑わう小さなチャイハナで取ることにした。

【レストラン】チャイハナ・Sasha & Son住所:58 Nuruddin Kuchasi, Bukhara 200118, Uzbekistan

地元の人々に人気の茶館兼レストラン。伝統的なウズベキスタン料理を楽しめる。

おすすめメニュー:
• シシカバブ(串焼き肉)
• サモサ(揚げ餃子)

ここで、シシカバブとサモサを注文。香ばしい肉の香りと、サクサクとした生地の食感が絶妙だ。

午後は、ブハラの象徴的な建造物、チャル・ミナールを訪れた。4つの小さなミナレットを持つこの建物は、まるでおとぎ話に出てくるようだ。

その後、かつての商人たちの集まる場所だったトキ・ザルガロン・バザールを訪れた。今でも活気にあふれ、カラフルな商品が並ぶ。絨毯、陶器、香辛料...。まるでタイムスリップしたかのような雰囲気の中、私たちはゆっくりと散策を楽しんだ。

広場の周りにあるレストランのテラス席で、夕食を取ることにした。ウズベキスタンワインを片手に、今日一日の冒険を振り返る。

ホテルに戻る途中、静かな路地を歩きながら、私たちは言葉を交わさなかった。ただ、この瞬間、この場所にいることの幸せを噛みしめていた。

6.5日目:ブハラ散策 - タイムスリップした古都の魅力

朝日が差し込む窓から、ブハラの街並みが広がる。昨日とは違う角度から見る街の風景に、新たな発見がある。朝食は、ホテルの中庭で取ることにした。噴水のせせらぎを聞きながら、朝の静けさの中で、今日一日の計画を立てる。

今日最初の目的地は、ブハラのシンボル的存在、アルク城だ。9世紀に建てられたこの要塞は、20世紀初頭まで実際に使用されていた。城門をくぐると、まるで中世にタイムスリップしたかのような感覚に襲われる。
城壁の上から眺めるブハラの街並みは圧巻だった。

次に向かったのは、イスマイル・サーマーニー廟。10世紀に建てられたこの建物は、ブハラ最古の イスラム建築だ。シンプルながら精巧なレンガ細工に目を奪われる。「こんな昔に、こんなに繊細な技術があったなんて」と私。技術の進歩と、時代を超えて受け継がれる美しさに感動した。

昼食は、地元の人々で賑わう市場近くの食堂で取ることにした。

【レストラン】
Old Bukhara Restaurant
住所:Bakhouddin Naqshband St, Bukhara, Uzbekistan

おすすめメニュー:
• ナリン(馬肉の細切りと自家製麺のサラダ)
• ショルヴァ(羊肉のスープ)

ここでは、ナリンとショルヴァを注文。初めて口にする馬肉の味わいに驚きながら、羊肉のスープの優しい味に心が温まる。隣のテーブルの地元のおじいさんが、「美味しいか?」と笑顔で話しかけてくれた。

午後は、チョル・バッカル・マドラサを訪れた。16世紀に建てられたこの神学校は、現在は工芸品の市場として使われている。中庭を囲むように並ぶ小さな店舗には、絨毯、陶器、刺繍製品など、ブハラの伝統工芸品が所狭しと並んでいる。

その後、シットル・イ・モヒ・ホサ宮殿を訪れた。19世紀末に建てられたこの宮殿は、ヨーロッパとアジアの建築様式が融合した独特の雰囲気を持つ。豪華な内装や庭園を見学しながら、当時の支配者の生活に思いを馳せた。

夕方になり、再びラビハウズ広場に戻ってきた。昼間とは違う雰囲気の広場に、多くの人々が集まっていた。地元の家族連れ、観光客、そして街の若者たち。みな、この歴史ある場所で、それぞれの時間を楽しんでいる。

夕食は、ホテルの近くの小さなレストランで取ることにした。ウズベキスタン料理の定番、プロフを注文。スパイスの香りと、じっくり炊き込まれたお米の旨みが口いっぱいに広がる。「やっぱりプロフは美味しいね」と夫。「うん、毎日食べても飽きないわ」と私。

食事の後、夜のブハラの街を散歩することにした。ライトアップされた建物、静かな路地、そして頭上に広がる星空。昼間とは全く違う雰囲気の中、私たちは言葉少なに歩いた。

ホテルに戻る途中、夫が「ブハラって、本当に不思議な魅力がある街だね」と言った。「うん、まるで時間が止まったような、でも確かに生きている街」と私も答えた。

ブハラでの2日間は、きっと一生の思い出になるだろう。

7.6日目:タシケントに戻り帰国の途へ

朝日が差し込む窓から、ブハラの街並みを最後にひと目見る。わずか2日間だったが、この古都との別れを惜しむ気持ちでいっぱいだった。朝食を取りながら、夫と昨日までの思い出を語り合う。

チェックアウトの時、ホテルのスタッフが「また来てくださいね」と笑顔で声をかけてくれた。その言葉に、必ずまた訪れたいという気持ちが強くなる。

タシケント行きの列車に乗り込む。車窓から見えるブハラの街並みが、徐々に遠ざかっていく。
タシケントに到着。以前とは違う目で街を見ている自分に気づく。最初は近代的な印象しかなかった街も、今では歴史と現代が融合した魅力的な場所に見えた。
夕方、最後の夕食のために街に出た。

【レストラン】ウズベギム (Uzbegim)住所:39 Shakhrisabz Street, Tashkent 100060, Uzbekistan

タシケントで人気の高級ウズベキスタン料理レストラン。伝統的な料理を現代的にアレンジした料理を楽しめる。

おすすめメニュー:
• ウズベキスタン風ラグマン(手打ち麺の煮込み料理)
• カザン・ケバブ(鍋で煮込んだ肉料理)

ひとことメモ:ライブ演奏があり、ウズベキスタンの文化を五感で楽しめる。最後の夜にふさわしい雰囲気。

筆者の気持ち

ここで、ウズベキスタン料理の集大成とも言える食事を楽しんだ。「この5日間で食べた料理の中で、どれが一番美味しかった?」と夫が尋ねた。「どれも素晴らしかったけど、やっぱりサマルカンドのプロフかな」と答えると、夫も「僕もそう思う」と笑った。

食事の後、ホテルに戻る途中、夜のタシケントの街を散歩することにした。ライトアップされた建物、人々で賑わう広場、そして頭上に広がる星空。「最初の日とは全然違う風に見えるね」と夫がつぶやいた。確かに、5日間の経験を経て、私たちの目に映る景色は変わっていた。

翌朝、空港へ向かい搭乗手続きを済ませ、出国審査を通過。ゲートで待つ間、最後にウズベキスタンの土地を眺める。「きっとまた来る」と心に誓った。

飛行機に乗り込み、離陸の瞬間。窓から見えるタシケントの街並みが、徐々に小さくなっていく。6日間の冒険が、今終わろうとしている。

8.エピローグ:シルクロードの記憶と共に

機内のモニターに、到着まであと1時間という表示が出ている。窓の外は雲一つない青空。その青さは、サマルカンドのドームを思い出させる。

この6日間の旅を振り返ると、まるで夢のようだった。タシケントの活気あふれる市場、サマルカンドの壮麗なモスク、ブハラの魔法のような雰囲気。そして何より、出会った人々の温かさ。すべてが鮮明に記憶に刻まれている。

思い返せば、この旅を決めたときは少し不安もあった、あまり馴染みのない国。でも今は、行って本当に良かったと心から思う。

シルクロードを旅して感じたのは、人類の歴史の壮大さだ。何千年もの間、人々は砂漠を越え、山を越え、文化を運び、交流を続けてきた。その足跡の上を、私たちも歩いたのだ。

そして、イスラム文化の美しさにも心を奪われた。幾何学模様のタイルや、繊細な彫刻。それらは単なる装飾ではなく、深い精神性を感じさせるものだった。

機内アナウンスが流れ、もうすぐ着陸だという。窓の外に、日本の風景が見え始めた。
飛行機が滑走路に触れる。6日間の冒険が、ここで終わる。でも、私たちの新しい冒険は、ここから始まるのかもしれない。

シルクロードの風が、私たちの背中を優しく押している気がした。

≪ウズベキスタン旅行情報≫

■入国方法
2018年2月10日以降、日本国籍の方は30日以内の観光目的の滞在であればビザが免除されている。パスポートの残存有効期間は、入国日から起算して3ヶ月以上必要。
■現地での移動手段
都市間:鉄道(高速鉄道アフロシアブ号が便利)、国内線飛行機、長距離バス
都市内:タクシー、路線バス、地下鉄(タシケントのみ)
■通貨
ウズベキスタン・スム(UZS)
※日本円からの両替は難しいので、米ドルを持参し現地で両替するのが便利■チップ
基本的にチップの習慣はないが、高級ホテルやレストランでは5-10%程度のチップを渡すこともある。
■気候
大陸性気候で、夏は暑く冬は寒い。春(4-5月)と秋(9-10月)が観光に最適。
■服装
イスラム教国なので、過度な露出は控えめにする。特に宗教施設を訪れる際は、肌の露出を避け、女性はスカーフを持参するとよい。
■電圧
220V、50Hz。プラグはCタイプ(ヨーロッパタイプ)が主流。
■時差
日本より4時間遅れ(サマータイムなし)
■言語
公用語はウズベク語。ロシア語も広く通用する。英語は観光地では通じることが多いが、それ以外では通じないことも。
■治安
比較的安全な国だが、スリや置き引きには注意が必要。夜間の一人歩きは避けたほうが良い。
■食事
イスラム教国のため豚肉料理はほとんどない。羊肉や牛肉を使った料理が中心。ベジタリアン向けの料理も比較的豊富。
■水
水道水は飲めないので、ミネラルウォーターを購入して飲むこと。
■その他
・イスラム教の国なので、ラマダン期間中は飲食店が昼間閉まっていることがある。
・古い紙幣は受け取ってもらえないことがあるので注意。
・タシケントの地下鉄では、セキュリティチェックがあり、撮影は禁止。

※この記事は筆者の主観に基づいて作成されています。旅行前に最新の情報を確認することをおすすめします。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?